「クラスメイト」
最初それはただの思い過ごしかと思った。だが見れば見るほど、テレビのモニターに映し出されているその顔は、僕の高校の同級生にそっくりだった。そしてテロップで彼の名前が出たとき、僕は確信した。彼だ。
僕がまだ高校生の頃、学校は商店街を抜けてすぐのところにあった。だから学生たちはしょっちゅうその商店街で買い食いをしたり、ゲームショップを覗いたりしていたわけだが(さすがにパチンコ屋に出入りする生徒はいなかった)、ある日僕がゲームショップを覗いていると、彼がいた。彼はクラスメイトではあったが、ほとんど喋ったことは無かった。何の気なしに僕が彼の方を見ていると、彼は棚に掛けてあった中古のゲームソフトをカバンの中に仕舞い込んだ。それは一瞬のことで、僕は呆気にとられてそれを見ていた。彼がそそくさと店を出ようとしたとき、店主が怒鳴り声を上げた。
「おい!お前ら、今そこのゲームを盗らんかったか?」
いつのまにかそのとき横にいた僕まで巻き込まれていた。
「盗ってません」
僕はとっさにそう言った。するとそのときクラスメイトの彼が、
「コイツが盗りました」
と僕の方を指差して、そう言ったのだった。僕は自分の耳を疑った。まさかそんなことを彼が言い出すとは思わなかったし、第一、現物が彼のカバンの中にあるのに、どうやって罪をなすりつけられるというのだ?僕が店主に奥の部屋へと引きずられていく間に彼はさっさと店を出て行ってしまった。そして僕が部屋で店主にカバンを開けるよう指示されたとき、今度は僕は自分の目を疑った。何とそこには彼が盗ったハズのゲームソフトが入っているではないか!
「やっぱりお前じゃないか、親と学校に連絡する!」
怒り心頭の店主に、これは何かの間違いである、僕は全く物を盗る気など無かったし、偶然カバンに滑り込んでしまっただけだ。最初店主は全く僕の言葉を信じようとしなかったが、僕が泣きじゃくりながら必死に無実を訴えるうちに、やがて呆れたような顔になり、今回は見逃してやるが、次同じ事があったら絶対に許さん、そう釘を刺されて釈放となった。
次の日から1週間ほどそのクラスメイトは学校を休んだ。最初僕は彼を問い詰めようかとも思っていたのだが、そのうち馬鹿らしくなってやめた。まぁ、それが彼の思惑通りだったのだろうが、僕は彼のためにエネルギーを使う事が無駄な事に思えたのだ。
今、画面に映し出されている彼は、新進気鋭の社会学者として、爽やかな笑顔を交えてコメンテーターの役割を果たしていた。学生時代から勉強は出来たように思うが、そこには当時の陰気な印象はほとんど見受けられなかった。
僕は彼の顔を見たとき、当時の記憶がよみがえり、怒りで肩が震えたが、やがて何もかも馬鹿らしくなり、テレビのチャンネルを変えてしまった。