ある日の午後 | shingo722のブログ

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 「ある日の午後」
 
 「あなたって割にチャーミングな笑い方をするのね」
「そうかな」
「ええ、昔からそう思っていたわ」
「ありがとう、君はとても綺麗な手をしている」
 僕はコーヒーカップを包み込むように持っている彼女の両手を見ながら言った。
「キチンとした手入れがモノをいうのよ」
 彼女は満足そうに微笑んで言った。
「あなた、子供は欲しかった?」
「いや、別に欲しくなんか無かったよ」
「そう」
 彼女はホッとしたようにも寂しそうにも見える顔で少しうつむいた。
「書類の方は大体これでいいからあとは私の方でやっておくわ」
 しばらくしてから、彼女は席を立ちながら言った。
「幸せになってね」
「それって皮肉かしら?」
 彼女は悪戯っぽく微笑みながら言った。
「まさか」
 僕も微笑んだ。
 差し込んだ春の午後の光が柔らかなひだまりをつくる喫茶店の窓際の席から、僕は彼女の後ろ姿をいつまでも見送っていた。