「塔」
その塔はどこまでも高く高くそびえ立っていた。
「一体どれぐらいの高さがあるんだろう」
僕は首をほとんど直角まで曲げて、空にある塔の先の方を見上げながら言った。
「さあね」
友人は答えた。
「聞くところによると、まだこの塔は完成してないらしいよ。建設が始まって数十年経つけれど、まだ塔の先端は伸び続けているらしい」
「まるでサグラダ・ファミリアみたいだな」
「世界各国から腕利きの職人が集められて建設に関わっているって聞いたよ」
「バベルの塔だね」
そのうち神の怒りが降りかかるかも知れない。
その塔を作り始めたのは相当な資産家で、自分の地位と名声を不動のものとするために建設を始め、その途中で亡くなったらしい。その遺産は財団によって管理され、資産家の遺志によって死後も建設にあてられている。
その塔の建設は確かに資産家の名を世界に知らしめはしたが、決して神格化したりはしなかった。むしろ死後も増殖し続ける不気味な細胞のように、今日もまたその触手を天へと伸ばし続けるのであった。