始発前 | shingo722のブログ

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 「始発前」
 
 喉を伝うコーヒーのカフェインが頭の奥をキックしていた。おい、寝るな。寝たら終わりだぞ、と。
 駅のベンチで始発を待つのは久しぶりだった。ホームに残された反吐も、同じようにベンチで酔い潰れて眠るサラリーマンも、昔のままだった。やれやれ。何だか学生時代に戻ったみたいだ。当時はよく無茶飲みをしては終電を逃していた。僕はぼんやりと、朝焼けに染まるホームで線路の向こうを眺めていた。
 彼女からの着信は無かった。昨日ひどい別れ方をしたから、もう連絡は無いかも知れない。同じことの繰り返しだ。彼女とは結構うまくやれると思ったのにな。割と気があったし、比較的長い間付き合ってもいた。でもまぁいいさ。どうせまた、誰かと出会って同じようなデートをして、同じようにすり減っていくのだ。それが僕という人間だし、そういった種類の人生しか送ることが出来ないのだ。
 朝の4時半過ぎに、彼女から着信が来た。
「今、どこにいるの?」
「駅のホーム」
「ふうん」
 そう言って5秒ばかり彼女は黙った。
「今から、迎えに行くわ」
「もう改札の中だよ」
「出て来なさいよ。それとも私と一緒にいるのはもう嫌になった?」
「そういうわけじゃない」
「じゃあそこで待っていなさい」
 そう言って彼女は有無を言わさず電話を切った。
 もうすぐ、日が昇る。そしていつもとは少しだけ違う1日が始まりそうだった。