うみうた 3曲目 「沈没船の少女」 | アトリエの本棚

みなさんお久しぶりです

またお会いしましたね


今日のお話はミッツェルとヘーツェルの冒険のお話をしましょうか



海には沢山のものが眠っています

その一つが沈没船です


実はいつも優雅なヘーツェルは沈没船の探検が大好きなんです


逆にいつも元気なミッツェルはお化けが苦手で

おばけが出そうな沈没船はあまり好きではありません


しかしいつもヘーツェルに沈没船へと連れて行かれます

今日も嫌がるミッツェルの手を引いて

新しく見つけた沈没船へとやってきました




「お姉ちゃん、やっぱり帰ろうよぉ」



「大丈夫よ!私がついてるんだから

ほら、ミッツェル行くわよ」



「あぅぅ・・・」




あらあら

ミッツェルはもう泣きそうですよ

大丈夫かしら?


そんなミッツェルを尻目に、ヘーツェルは船底の大きな割れ目から

沈没船の中へと入って行きます




「お姉ちゃん待ってぇ」




取り残されるのが怖いのか

ミッツェルもヘーツェルの後を追い、中へと入って行きます


中は薄暗くて不気味な雰囲気・・・

おばけが出てもおかしくないですね・・・




「ワクワクするわね。なにか良いものがありそうだわ」




ヘーツェルはとっても楽しそうね

さて、ミッツェルはどうでしょう?




「真っ暗だよ・・・お姉ちゃん離れちゃ嫌だよ!」




ヘーツェルの腕にがっちりしがみついてびくびくしています

よっぽど怖いのでしょう・・・あぁ、可愛そうなミッツェル




「大丈夫よ、何も出たりはしないんだから」




ヘーツェルは怖がることなく、どんどん奥へと進んで行きます

ミッツェルはヘーツェルから離れないようにと必死にしがみ付きます

まるでコバンザメさんみたいですね



少し置くに進んでいくと



ポロロン



ポロロン



何か音が聞こえてきました

ひょっとしておばけかしら・・・




「お、お姉ちゃん!今何か聞こえたよね!?」



「何かしらね?行って見ましょう!」



「えぇ!?やめようよぉ!」




怖がるミッツェルを強引に連れて

物音がする方へと進みます



ポロロン



ポロロン



だんだん音が大きくなります

ミッツェルはヘーツェルの腕にしがみついて離れません



「この部屋の奥から聞こえてくるわよ」



流石のヘーツェルもドキドキしてるみたいですね



「お姉ちゃん、やっぱり帰ろうよぉ」



ミッツェルは目を潤ませながら訴えます



「ここまで来て引き下がれますか!ミッツェル行くよ!」



そう言うとヘーツェルは勢い良く扉をあけました

扉を開けると部屋の真ん中には大きなピアノがあります

そのピアノ前には人影が・・・



「だ、誰!?」



ヘーツェルが人影の方へと声をかけます

ミッツェルはヘーツェルの後ろに隠れビクビクしてますね


ヘーツェルが声をかけたの同時にさっきの音はなくなりました



『あなた達は誰?』



ピアノの前の人影がしゃべります

女の子の声です



「こ、こっちが聞いてるのよ!あなたは人間なの?」



『おかしな事を聞くのね?人間に決まってるじゃない』



「人間って・・・ここは海の底なのよ?

人間は海の中ではしゃべれないわ」



『海の底?でもあなたはしゃべっているわ』



「私達は人魚だもの・・・海の中でもしゃべれるわ

でもあなたは違う、あなたは人間なんでしょ?

だったらしゃべれるのはおかしいわよ

もしかして・・・あなたはおばけなの?」



人影は驚いたようにピアノの椅子から立ち上がりました

その姿がはっきりと見えます

12歳くらいの女の子です

そして体が少し透けています・・・



『そうだ・・・私死んじゃったんだ

パパもママもみんな死んじゃった

お船が大きな怪獣に襲われて沈んじゃったの

もっと大好きなピアノが弾きたかったのに・・・』



おばけの女の子は泣き出してしまいました

ヘーツェルは何も言えずに女の子を見つめます

すると先ほどまで隠れていたミッツェルが

女の子へと近づいていきました



「ミッツェル」



ヘーツェルが呼び止めてもミッツェルはとまりません

女の子の前までたどり着いたときには

ミッツェルもポロポロと涙を流していました



「かわいそうに・・・一人で寂しかったでしょ」



ミッツェルが女の子を抱きしめようとしたら

するりと体をすり抜けてしまいました



「あぁ・・・」



暗くて冷たい海の底で、女の子はずっと一人ぼっち

なんとかしてあげられないのかしら



タータラ ラララ


タータラ ラララ



おや?

どこからか音楽が聞こえてきました

女の子とミッツェルは、音の方へ目を向けます



「お姉ちゃん?」



音楽の主はヘーツェルの弾くヴァイオリンでした

ここは音楽室だったみたいです

回りを良く見ると沢山の楽器がありました



「私はヘーツェル♪


その子はミッツェル♪


あなたのお名前は♪


なんとおっしゃるの♪」



メロディーに合わせてヘーツェルが女の子に訊ねます



『なんだか楽しくなるメロディーね!


私の名前は♪


ルーシーと申します♪』



女の子、ルーシーもメロディーに合わせて自己紹介です



『ヘーツェルお姉ちゃんって楽器はお上手だけど

お歌は下手っぴなのね』



あらあら

ヘーツェル言われてしまいましたね

でもルーシーはとっても楽しそうです



「ほ、ほっときなさいな!あなたも人のこと言えませんわよ!

それよりもルーシーは早くピアノを弾きなさい!それとミッツェル!」



「え?」



先ほどまで2人のやり取りを見ていたミッツェル

突然名前を呼ばれて驚いております



「あなたはお歌をうたいなさい、みんなで合奏しましょう」



「うん、わかった!」



『わぁ!とっても楽しそうね』



ルーシーがピアノを弾きます

それに合わせてヘーツェルがヴァイオリンを弾きます

軽やかなメロディーがあたりを包みました



ラーラーラララ♪


ラーラーラララ♪



とっても綺麗な歌声でミッツェルが歌います



『ミッツェルお姉ちゃんはとってもお歌が上手なのね』



みんなとっても楽しそう

一緒に歌いたくなっちゃいますね



そしてしばらくの間3人は合奏を楽しみました



『ヘーツェルお姉ちゃん、ミッツェルお姉ちゃん

ありがとう、とっても楽しかったわ

もう少しピアノを弾いていたいけど、パパとママがお迎えに来ちゃった』



いつのまにかルーシーの後ろにはパパとママが立っていました

2人は人魚の姉妹にお辞儀をするとルーシーの手を握りました



『お姉ちゃん達、本当にありがとう!

バイバイ、また遊んでね』



「いつでも遊びにきなさいな

あなたのピアノをまた聴かせて」



「ルーシーちゃんバイバイ!また遊ぼうね」



別れを告げるとルーシーは消えていきました

パパとママのところに帰れてよかったね、ルーシー



「ルーシーちゃん可愛かったね

それじゃあお姉ちゃん帰ろうか」



「何を言っているの?

まだ探検はこれからよ!」



「えー!」



まぁまぁ

ヘーツェルの探検はまだこれから見たいですね

ミッツェルもう少しがんばって!



おや?

大変、もうこんな時間

私はそろそろ行きますね


それではまたお会いしましょう










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おまけ


by「カナリアの喫茶店」  *Anemone*




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