かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」 -96ページ目

私的 桃太郎伝説 17

桃太郎は、その場に甲冑や幟などを置くと、それに向かって目を瞑って合掌してから振り返り、



「 さあ、行くぞ!鬼たちが俺を待っている。 」



と猿に言って意気揚々と歩き出しました。



林を抜け、すがすがしい朝日を浴びながら、どこまでも歩いてゆきます。



道案内は、猿がしてくれました。桃太郎も前の日におじいさんと相談してだいたいの道筋を頭に入れていたのですが、猿のほうが近道を知っているので、先導させることにしました。



道をわざと外れ、道なき道を歩き、橋のない川を渡り、鬱蒼と木々の茂る山をかきわけるようにして越え、また道なき道を歩き、そうしていくうちに、陽は傾いて夕暮れが迫ってきました。



桃太郎と猿は、だだっ広い草原に出たところでようやく一息つくことにしました。



生まれて初めての一人旅に出た桃太郎は、興奮しているために自分の体の疲労に気づかないで昼飯も食べずに歩き続けてしまっていたのでした。



「 よし、ここで飯にしよう。 」



桃太郎が言うと、



「 そうしましょう。あっしはもうヘトヘトです。 」



と猿は言ってその場にへたっと座り込みました。



桃太郎は火打ち石で火をおこし、山を越える際に集めておいた薪をくべて、川を渡る際に捕まえておいた二匹の魚を竹の枝の串に刺して焼きはじめました。



猿が涎を垂らして美味しそうに焼けていく魚を見ていると、



「 猿よ、考えてみたらこの魚だけでは腹が足りんのう。 」



と桃太郎が言いました。



「 へぇ、そうですか? 」



猿が間の抜けた顔をして聞きます。



「 うん、全然足りんな。猿よ、悪いがこれからあそこの山に入っていって、鳥を一匹でいいから捕まえてきてくれ。 」



猿は桃太郎に命令されて、がっくり落ちましたが逆らうわけにはいきません。



「 へぇ、わかりやした。 」



ふらふらと立ち上がり、とぼとぼ歩いていくと、



「 早く行け!さっさと鳥を捕まえてこないと、お前を丸焼きにして食うぞ! 」



後ろから桃太郎が怒鳴ってきました。



猿はそれを聞いて慌てて山に向かって走り出しました。