かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」 -149ページ目

官能小説「放課後の夜」五十四

良雄の発言に、奈津子は照れ笑いとも苦笑いともとれるような、微妙な顔をする。

そして、黙ったまま水の入ったグラスを手に取って口をつけた。

(何を考えているんだ?俺の言ったことについて、どう思ったんだろう…?)

良雄の心は奈津子の一顰一笑に揺れる。そうして奈津子が何を考えているのかわからずに混乱すると、さらに一歩踏み込んだ言葉を投げかけて結論を早く欲しがってしまう。

「 前にも言ったけど、俺、先生のことが本気で好きなんですよ…。 」

「 うん…その気持ちは嬉しいよ。 」

奈津子はそう答えて今度は嫣然と笑みを浮かべる。

いい笑顔だ。その笑顔は良雄の心をほぐすと同時に、ひた隠しにしていた邪(よこしま)な欲望を増長させ、蠱惑する。

「 好きなんです…本当に。だから…なんつーか… 」

早く体を重ね合わせ、一体になりたい。紅く色づいて敏感になった性の触覚を、濡れて粘り着く舌でお互いに舐め合いたい。良雄の本心はそれであったが、そのまま全部口にするのは憚られる。

「 わかってるよお。波川くんの気持ち、私も本当に嬉しく思ってるから、ね? 」

そう言って奈津子は、テーブルの上で硬く握られた良雄の拳を自らの手で暖かく包み込む。

さりげないスキンシップが、良雄をさらに燃え上がらせた。が、それから奈津子は席を立ち、

「 さあ、じゃ帰ろっか。もう外は暗いし。 」

と言った。

(帰る…?)

良雄は焦る。

(嫌だ、帰るなんて!)

しかしそんな良雄を置いて、奈津子はカツカツとレジへ向かって歩き出した。