かわぞうの小説集「官能小説・ひとりごと・etc」 -146ページ目

官能小説「放課後の夜」五十六

「 え、なに…?どういうこと? 」

「 だから、俺は… 」

(ひるむな!言え、言っちまえ!)

「 俺は…先生とホテルに行きたいんです。 」

とうとう良雄は本音を口にした。

今にも体が震えだしそうだったが、よくぞ言ったと変に誇らしい気持ちもある。

奈津子の顔をじっと見る。

自分の望みを受け入れてくれるのか。それとも嫌悪の情をもって拒否されるのか。

期待と不安に揺れて炯々とする良雄の目が夜の闇に光る。

「 波川くん… 」

奈津子がくぐもった声で口を開く。

「 私は、あなたに抱かれるわけにはいかない…。 」

良雄の心に深く鋭いヒビが入る。

そのヒビを優しくいたわるように、奈津子は良雄の頬にそっと暖かい手を添える。

「 ゴメンね…あなたをそんなにしてしまったのは私だものね…。 」

その言葉を聞いて良雄は泣きそうになる。

(嫌だ…謝ってほしくなんかない!)

良雄は落ち込む己の心に鞭打って言葉を口から搾り出す。

「 なんでですか?好きな人を抱きたいと思うのは、いけないことですか?先生、先生の本当の気持ちを聞かせてよ。 」

良雄の切実な思いに触れ、奈津子は悲しそうに目を細める。

「 好きだよ…波川くん、あなたのことが。だから、あなたの望み通り、ホテルには行く。 」

(え…?)

奈津子の意外な言葉に、良雄は目を見張る。

奈津子が続けて言う。

「 ホテルには行くの。でも、最後まではしないからね? 」

(え…それはつまり、また口や手で…ってこと!?)

言葉を発せずに困惑する良雄に構わず、奈津子は車のエンジンをかける。

そんな奈津子の横顔を睨みつけながら、良雄は秘かに決意を固める。

(そうはいかない…今日こそ俺は、先生を自分のものにする。)

車は雨に濡れるアスファルトへと走り出した。