社会的インフラ整備に終わりなし | 進撃の庶民 ~反新自由主義・反グローバリズム
日曜日は、隔週でのコラム、うずらさんのコラムです。
本日は、「社会的インフラ整備に終わりなし」というコラムを頂いております!


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先日、北関東地方を襲った記録的な集中豪雨の影響により、鬼怒川をはじめ多くの河川が氾濫し、栃木県や茨城県等で多数の死者・行方不明者を出したほか、数えきれないほどの家屋・公共構造物等が損壊するなど、4年前の東日本大震災を彷彿とさせるような甚大な被害を蒙りました。

不幸にも被災された方々には、この場をお借りして、心からお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。

さて、こうした大規模な自然災害が発生すると、当初は、被害状況の把握や被災者の救助にフォーカスした報道が先行します。
今回も、自衛隊や警察、消防等による懸命且つ感動的な人命救助の様子が多数報じられていました。

しかし、日にちが経過し、災害の全貌が明らかになるにつれて、やがて、マスコミの興味は“犯人捜し”に移って行きます。
そういった場合に、ほぼ例外なく犯人に祭り上げられるのが「行政」です。

災害の傷が癒える間もなく、早速、マスコミによる犯人探しや魔女裁判が始まりまっています。

『避難指示遅れ、市長謝罪=「決壊すると思わず」―茨城県常総市(時事通信 9月13日(日)11時57分配信)
記録的な豪雨で鬼怒川の堤防が決壊した茨城県常総市の高杉徹市長は13日、甚大な被害が出た同市三坂町・上三坂地区の住民に堤防の決壊前に避難指示を出さなかったことについてミスだったと認め、「そこが決壊するとは思っていなかった。大変申し訳なかった」と謝罪した。
高杉市長は記者会見を開き、三坂町のうち住民から「水位が上昇している」と情報提供があった一部には避難指示を出したと説明。上三坂地区などは、具体的な情報がなかったという(後略)』

被災地の復興をほったらかしにして犯人探しに熱中する様は、呆れるよりほかありませんが、他人の粗捜しと批判だけをしておればよい職業の人間ほど、下劣で卑怯な者はいません。

先日、たまたま見ていたTVに出演した災害対策の専門家は、今回の大災害の原因について、これまでに想定しえない規模の大雨が一度に降ったことによるもので、人災の類ではない(到底防ぎ切れなかった)と断言していました。

また、別の報道では、常総市(前述の記事の地区とは別の地区)では、いち早く避難指示を出していたが、多くの市民は屋内にいたため呼びかけのアナウンスを聞き取れなかったり、聞き取ってはいたが、大した被害はないだろうと判断して避難が遅れたりした者が多数いたと聞いています。

なにせ、防災拠点となるはずの常総市役所が堤防決壊地点から10㎞も離れていたにも拘らず、市庁舎には洪水が押し寄せ、庁舎内をボートで移動せざるを得ないほどでしたし、庁舎の近隣住民も、一様に、“まさか、ここまで水が押し寄せてくるとは、夢にも思わなかった”と答えていました。
こういった事実は、今回の大水害が、誰もが想定しえなかった「異次元の災害」であったことを物語っています。

世間知らずのマスコミの連中は、事が起こると全て行政に責任を押し付けようとしますが、そもそも、行政機関は災害対策のプロではありません。

各自治体に災害対策の担当部署こそ設置されていますが、持ち回りの人事異動でたまたまその職務に就いているものが殆どで、担当者とて災害対策の専門知識を持ち得ている訳ではありません。
私の知り合いにも実在しますが、昨日まで産業振興担当部署にいた者が、今日から危機対策担当部署に異動するなんて人事が、役所では日常茶飯事なのです。

また、長らく地方交付税が削られ続けてきた負の影響もあり、人員的にも予算的にも不足感は否めず、身勝手なマスコミやクレーマーと化した市民が求めるような完璧な防災対策を取ることなど土台無理でしょう。
行政機関の主目的は災害対策ではありませんから、災害時に陣頭指揮を取らせること自体が間違っていることくらい解かりそうなものですが…

日ごろから、「行政のムダを削れ」とか「土木事業は時代遅れ」などと防災対策の強化と逆行する主張をし、せっかく行政が作った防災マップを無視しておきながら、いざ、災害が起こると、「役所は何をやっていたんだ!!」、「公務員は危機管理が足りない」なんてクレームをつける常識のない人間が多数出没し、災害対応や復興の足を引っ張ろうとします。(この手のゴミをまとめて中韓に送り付ける方策はないものでしょうか?)

また、東日本大震災に関連するものですが、次のような記事もありました。

『震災10分後、大槌町役場の記録 28枚の写真見つかる(朝日新聞デジタル 9月13日(日)7時56分配信)
東日本大震災で職員40人が犠牲になった岩手県大槌町の役場庁舎が津波に襲われた時の写真が残されていたことが、震災から4年半近くたってわかった。町は2014年3月、震災検証の報告書をまとめたが、地震直後の町の対応がわかる記録が見つかったことで、住民らから「再検証すべきだ」との声があがっている。(中略) 撮影した町職員は「記録するよう指示されて対策本部の様子などを撮っていたが、まさか津波が来るとは思わなかった」と話す。津波が見えたので2階に逃げたものの流され、とっさに窓から屋上に上って助かった。(中略)
町は震災検証の最終報告書で、高台の公民館に避難しなかったことなど、役場の初動対応が不適切だったことを認めた。しかし、住民らから「事実関係が不確かで、調査不十分」との声があがっている(後略)』

国民の誰もが想定しえなかった大震災の渦中に、初動対応がどうのこうのと揚げ足取り紛いのクレームをつける神経を疑います。
この手のクレーマーは、本当に日本人なのでしょうか?

公務員とて一人の人間なのです。
忙しく日常業務をこなしている最中に、突然、経験したこともないような大災害に見舞われれば、誰もが慌てふためき、自分の身体や生命の保護を優先せざるをえないのは当然のことでしょう。

ひとたび災害が起きると、電話やメール等の通信手段の遮断や道路等の交通手段の寸断など、災害対応の機動性が大きく損なわれます。
そういった手足を縛られた状態で、自分勝手に動き回る市民全員を安全地帯に完璧に誘導することなんて不可能です。

TVで偉そうに意見を吐く“自称災害対策のプロ”だって、混乱する現場に突然放り投げられれば、バタバタして逆ギレするに違いありません。
安全地帯から、後講釈で、ああすべきだった、あそこに避難誘導すべきだったと高圧的な態度で文句をタレるのは、人品の劣る卑怯な態度であり、到底承服できません。

荒廃した被災地の復興に、誰もが手に手を取り合わねばならない状況下であるにも拘らず、決してすべきでない犯人捜しに狂奔し、被災者同士の対立を煽ろうとする醜い行為は厳に慎むべきです。

自然災害の前に犯人など存在しません。被災した誰もが被害者なのです。

それにしても、こうした大規模な自然災害を目の当たりにするたびに、公共工事の重要さをつくづく痛感させられます。

今回の大雨により水没した被災地の様子を見ても、家屋や道路、田畑の元の位置すら判らないほど破壊されつくしています。
一日も早い被災地の復旧には、被災地と他の地域を結ぶ生活インフラ(電気、ガス、水道、道路、下水等)の復旧が欠かせませんし、こういった悲劇を1件でも減らすために、洪水を未然に食い止める土木工事の強化が急がれます。

ですが、現状では、政官業民の全てが、公共工事を始めとする公共事業に対して、極めて消極的且つ否定的です。
今回の災害を受けても、堤防工事のための公共事業を求める声はどこからも上がってきません。(被災者への募金と行政機関を標的にした犯人捜しをするくらいが関の山でしょう)

そればかりか、経済のリフレーションを目指していた(はずの)一派から、「デフレ脱却や景気回復を目的として公共事業をやると言うが、景気が回復すれば公共事業を止めるのか」なんて寝言が飛び出す有り様です。

国内にある公共構造物のうちこの先20年で建設後50年を経過するものは、橋脚で53%、河川施設で60%、港湾施設で53%、下水道施設で19%に達するというデータがあります。また、国道のトンネルの平均経過年数は32年、市町村道のトンネルは46年、公営住宅の6割が建設後30年を経過しているなど、数え上げるときりがないほど膨大な量のインフラ更新需要が控えています。

言うまでもないレベルの話ですが、「新規にしろ、既存施設の更新にしろ、公共事業は人類が生きている限り永遠に続けるべきもの」であり、景気が回復したからといって止めるような単純なものではありません。
そんなバカげたことを言う者は、単に公共事業を嫌い、その足を引っ張りたいがためにアレコレと愚にも付かぬ屁理屈を並べているだけなのです。
現実を顧みない幼稚な言葉遊びに付きあう必要なんてありません。

私たちの生活基盤を支えるインフラの維持更新や技術の革新と伝承は無論のこと、公共事業(≠公共工事)は、社会構造を形成する中下位層の産業や労働者に富や所得を万遍なく供給するのに非常に適しており、ボトムアップ型の内需拡大政策を実現するために欠かせない政策なのです。
こんな当たり前のことは、てっきり、小学生でも理解しているものと思っていましたが、そうでもないようです。

最後に、「公共事業をデフレ脱却の方便として使うなら、デフレ脱却後に公共事業を止めるべき」なんて幼稚なレトリックに酔っている者には、「会社の経営が黒字になったからといって、仕事を怠けるのか」、「テストでいい点を取ったからといって、勉強するのを止めるのか」、「腹が膨れたからといって、明日から食べるのを止めるのか」、「テクニックが向上したからといって、練習を怠けるのか」と言っておきます。




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