拡張型心筋症をふくめ心不全を発症すると、誰もがかならず一度は目にするあのグラフ、
「心不全は がんと同じくらい予後が悪い」という定番のフレーズとともに、
見るだけで非常にイヤな気持ちになります(苦笑)。
がんの経過グラフと比較すると、死亡にいたる流れの違いがわかります。
がんには「余命宣告」があるのに、
なぜ心不全では余命宣告が一般的ではないのだろうと不思議に思っていましたが、
まず、心不全には突然死のリスクがあるので予想がたてづらい事があると思います。
また、がんとは違い心不全は急性増悪(急激に悪化すること)しても持ち直す、を繰り返します。
「まだ大丈夫」「まだ動ける」と がんばっているうちに
どんどん心臓が弱って急性増悪のサイクルが短くなり、
やがて歯止めがきかなくなり、急性増悪から立ち直れなくなって末期に、
という流れが上のグラフにも表れています。
患者も人の子、最初の急性増悪の後、さいわいにも治療や投薬が効いて「ほぼ もとどおり」にまで回復すると、やはり安心します。
自分だけはこのまま悪化せずいけるんじゃないかと、思いたくなります。
でも違うのですよね。薬のおかげで状態は良くなっても、いったん壊れた心筋は元には戻りません。
個人的な話になりますが、最初の急性増悪から立ち直って退院するとき、
「適量ならお酒もOK」、「もちろん仕事復帰もできますよ」という言葉とともに、
(けっきょく仕事にはいまだ復帰せず、かなりの量を飲んでいたお酒もやめてしまったのですが)
最初の主治医の先生がかけてくださった言葉を、一生忘れまいと思っています。
「ちょっと良くなったからといって、安心しないで下さいね。必ずまた入院することになるんですから。
あなたみたいなタイプが『もう大丈夫〜♪』とハシャイで温泉旅行かなんかに出かけて、 ●✕さぁん!と友達を大声で呼びながら荷物を引きずって小走りで電車に飛び乗ったりして、
心臓こわしてまた病院に担ぎ込まれるんですよ。そういうのだけは やめてくださいね!!(ほぼ原文ママ)」
いったい私をどういうタイプだと思ってるんだ?という思いとともに(爆笑でした)、
これからは心臓をいたわらなければならないことが良くわかりました。
当時の主治医に心から感謝しています。この言葉のインパクトもあり、
幸運にも急性増悪から持ち直せたら、その状態をどれだけ長くキープできるかがキモだ と強く意識するようになりました。
上のグラフに話を戻しますと 心不全の場合、
急性増悪の合間をなるべく長くすることで、健康寿命(とはすでに言えませんが、もっとも健康に近い状態)を伸ばす努力はできると思います。
上のグラフをお借りした日本心臓財団のホームページにも、再入院をふせぐためのコツがあります。一部抜粋すると、
「毎日生活のなかで、『塩分を控える』『水分を摂り過ぎない』『疲れをためない』『確実に薬を飲む』といったちょっとしたことに注意すれば、再入院を防ぐことができます」
とのことです(出典:公益財団法人 日本心臓財団)。
突然死の危険性もあり 先の予測が立てづらいのは非常に怖いことですが、
良い意味で予想がつきづらい流れにのれるよう、
毎日をおだやかに暮らしていきたいと感じています。