『構想10年 新堂版「ひまわり」実現に向けて』
地中海地方の美しい浜辺でジョバンナ(ソフィア・ローレン)と
アントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)は出会い恋に落ちた。
しかし、戦争の影は二人の背後に忍び寄っていた。
照明弾による攻撃によって無残に崩れ落ちる橋。アントニオは徴兵され、
明後日にはアフリカ戦線へと赴くことになっている。
一時も離れていたくないふたりは急きょ結婚式を挙げ、
12日間の結婚休暇をとる。
甘い新婚生活はあっと言う間に過ぎ休暇も残りわずかとなった時、
アントニオは徴兵をまぬがれようと狂人を装うが、
この企ては見破られ、激戦のロシア戦線へと送られてしまう。
駅での別れ。
「すぐ帰る、毛皮を土産に」という言葉を残し列車に乗り込んだアントニオ。
この時から、ジョバンナの待つ日々が始まった。
そして迎えた終戦。ミラノ駅はロシア戦線からの復員兵と、
それを待つ家族であふれかえっている。
その中にアントニオの写真を掲げたジョバンナの姿もあった。
彼女に声をかけてきたひとりの復員兵。
「ドン河で彼を見たが、その後は知らない」と言う。
彼の話す戦地の様子は地獄だった。四方から攻めてくるロシア兵。
さらには過酷な気候がイタリア兵を襲う。
雪と氷、顔をさく風、渇きと飢え・・・3分も立ち止まったならば凍死してしまう。
そこは眠ることさえ許されない世界だった。
雪中行軍の中、アントニオは倒れ消息不明となった。
ジョバンナはアントニオが生きていると信じた。
生死の確認がとれないのであれば、生きていると思いたかったのだろう。
戦争が終わってアントニオをロシアまで探しに行くジョバンナ。
異国の地を駆け巡り、「最愛の男性」の写真を手に道行く人々に
訊ねて回る。
愛する女の執念・・・そこで彼女が知った事実は、
あまりにもむごいものであった。
雪山で遭難して死にかけていたアントニオを、ロシア人の女性・・・
傷心のジョバンナをアントニオは駅まで追いかけてくる。
駅での悲しい再会。
せつない瞳で見つめ合うふたり。
アントニオを振り切り列車に飛び乗ったジョバンナが泣き崩れる。
それから数年が過ぎた。
どうしてもジョバンナのことが忘れられないアントニオが
彼女のもとを訪ねる。
かつてミラノでの別れ際に約束した「毛皮」を土産に・・・・。
ジョバンナと人生をやり直す決心をしての帰郷だった。
しかし彼女の口からは
「私は旅をしてあなたを探した。でも、昔とは違う。
今はあなたには別の女、私には別の男がいる。それだけよ。」
それは本心ではなかった。ジョバンナはいまでもアントニオを
愛していた。
自暴自棄になって遊んでいたときに出来た子供の
父親はもういない。
本当に愛していた男性は、「昔も今もこれからも」アントニオだけだからだ。
だから、赤ちゃんの名前をアントニオとつけていた。
それでもジョバンナは別れを選んだ。
どんなに愛し合っていても、「あの頃のふたり」には戻れないのだ。
失意の想いでロシアに戻るアントニオを見送るジョバンナ。
名画だ。
ソフィアローレンの二十代の若い娘時代から中年期までの
演技の幅も素晴らしい。
新堂版『ひまわり』の舞台は日本で、現代の予定だ。
ジョバンナは看護士インターンの東京在住の女性、
マーシャは離島の漁師の娘。
そして罪作りなアントニオは旅行会社勤務のツアーコンダクター