入管法改正法案が可決され、外国人労働者受入拡大が進みそうです。

日本人のお賃金はどうなるのでしょうか?とても気になります。


元参議院議員の金子洋一さんは次のように述べておられます。


“外国人材受け入れ企業は「従業員解雇なし」が条件⇨これあんまり意味ないですよ。直接日本人を解雇しなくても、外国人が来ることによって日本人を採用する会社が減るわけで、日本全体で見れば結局日本人に対する求人が減ってわれわれの時給が上がらなくなるだけです。”

https://twitter.com/y_kaneko/status/1073338912142123008?s=21


アベノミクスの第一の矢「大胆な金融緩和」によって、雇用環境は大きく改善されたとはいえ、「失われた20年」とも言われる「デフレ下における名目GDPゼロ成長」で、日本人全体は貧しくなったと聞きます。

失業率が2%台半ば、有効求人倍率が全国で1倍を超え、賃金が緩やかに上がり、労働者の待遇改善が進んでいると聞きます。


そんな中、外国人労働者受入拡大で、日本人を雇う企業が減ったり、時給が上がりにくくなれば、日本人にとってはマイナスと言えると思います。



ただ、この懸念を払拭するご発言をされている方もインターネット上でお見かけしました。(以下、引用符内は、その方のご発言)



“外国人ではなく、日本人を採用した場合でも、人手不足は解消され、時給は上がらなくなると思うんだが?w” 


日本人を採用した場合も同じように時給が上がらなくなる、とお考えのように見受けられます。


“積極的に日本人を雇用する、のと、外国人を雇用するのと、経済学上は結果は同じで、問題になるのは「量」でしかない”


経済学上と仰っておられるので、もしかすると、経済に関する書籍を数多くお見かけする池上彰さんのように経済に「詳しい」方なのかもしれません。


問題になるのは「量」でしかない、とのことですので、思考実験してみたいと思います。


労働需要側、企業は時給1000円で100人、2000で10人、3000円で1人を雇いたいとします。


労働供給側、日本人労働者は時給1000円で1人、2000円で10人、3000円で100人が働きたいとします。


うまくマッチすれば、時給1000円で1人、2000円で10人、3000円で1人、合計12人の雇用が生まれます。

ただ、労働需要側からすると、時給1000円という「安い人手」は不足したままです。(労働供給不変な状態で)より多くの労働力を確保するためには、時給3000円でなら働きたい残り99人を狙うか、少ない労働力で済むように機械化などで生産性を高め、労働需要の「量」を減らす、というのが取りうる選択肢ではないでしょうか。

現実の世界では、「時給1500円なら働きたい!」という人(やペ◯パー君など)が出てくるかもしれず、時給(や生産性)が上がる可能性もありますね。


ここへ外国人労働者(ポケトーク持参で言語の心配なく、日本人と同じ質の労働を提供できると仮定)が、時給1000円で100人、2000円で10人、3000円で1人、この労働市場に参加してきたら、どうなるでしょうか?


労働需要側は、新たに外国人労働者を時給1000円で99人雇うことが出来ます。時給を上げたり、生産性向上に励む動機が薄れていきます。


日本で不足している安価な労働供給を外国人労働者が労働需要側が必要とする「量」供給すると、お賃金を上げるインセンティブが薄れることが思考実験で分かりました。



僕のような経済学素人の思考実験では物足りないという方には、プロの論説(*1)(*2)をお読みになることをお勧めいたします。


「今までの国内の労働者たちと同じ質を持つ外国人労働者が増加することで、やはり労働供給曲線は右下方にシフトする。このとき図から自明なように、賃金は今までの水準よりもさらに低下する。さらに国内の労働者の雇用も減少してしまう。国内の労働者賃金は前よりも下がったW1になり、そのときの雇用量はL2になる。受け入れた外国人労働者もまた日本国内で過酷な待遇を甘受しなくてはいけない。どこにもいいことはないのである。」(*1)


「多くの産業では、今のところ、変化を示す線は横ばいで、大きな賃金低下にはなっていない。しかし、いくつかの業種(複合サービス、不動産・賃貸業、サービス業など)では、右下がりになっており、外国人労働者の浸透と賃金低下が見られる。総じて、右下がり気味なので、今後の動向が気がかりである。

今回の入管法改正は、人手不足を理由とする産業界からの要請で動いている。筆者は、人手不足はマクロ経済にはいいことであり、この際企業がため込んだ内部留保を吐き出して、給与や待遇を改善するのが先であると考えている。最近では、企業収益が好調であるにもかかわらず、労働分配率は低い。ここ5年間で労働分配率は5%程度低下しているので、今度は労働者が取り戻す番なのだ。」(*2)



マクロ経済政策で雇用環境を更に改善させると共に、賃上げを促す政策(財政拡大による消費拡大で将来的に更なる売上増や労働需給の逼迫を予想させる)などをお願いしたいものです。




(*1)外国人労働者受け入れにも応用できる「マルクスの経済学」 (田中秀臣) - オピニオンサイトiRONNA

https://ironna.jp/article/11267 


(*2)誰も指摘しないのが不可解すぎる、入管法改正の「シンプルな大問題」(高橋洋一)

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58527