岩田 規久男 元日銀副総裁の『日銀日記――五年間のデフレとの闘い』 

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「消費税増税、経済音痴の政治家、誤解だらけのマスコミ…リフレの敵とはなんだったのか?元日銀副総裁が語る本音」とある通り、日記形式で本音や経済理論・分析が書かれている好著です。


既得権者の影響力が強い現在の日本では、メディアや政治家、官僚、学者、エコノミストなど(それをうけ売りする一般人含む)から一番叩かれた(もしくは取り上げずに隠された)人が、最も国益に貢献している、というのが僕の考えです。

政治家では安倍晋三(古くは石橋湛山)、リフレ派では岩田規久男、が最も叩かれている人物(最も国益に貢献している人物)ではないでしょうか。

日本のとある有名経済紙では「岩田規久男、渡辺喜美を(紙面に)出すな!」と言われていたそうです。石橋湛山がパージされたことと重なります。


日銀執行部在任中もリフレ派の方々と議論された模様や、甘利明議員を(経済政策への理解から?)「ポスト安倍」に挙げたり、ハイパーインフレでお馴染みの藤巻議員(維新)を「人格者」として紹介されています。



▪️目次

第1章 異次元の「量的・質的金融緩和政策」の船出

第2章 想定通りに展開した「量的・質的金融緩和」最初の一年

第3章 消費税増税で壊れた「リフレ・レジーム」

第4章 「経済音痴」の民主党国会議員の対応に追われる日々

第5章 逆風に抗して、金融政策の転換

第6章 デフレ完全脱却のための「リフレ・レジーム」の再構築




第1章から、岡田靖さんのお話や木下康司氏が消費増税反対論封じ込めの動き、石破茂の金融政策への理解が残念な件など興味深いです。


それ以降の章では、量的質的金融緩和後の流れを追えます。金融政策は効果をあげたが、消費増税で台無しに…


黒田東彦日銀総裁が、消費増税を後押しする「どえらいリスク発言」を批判的に取り上げています。(セントラルバンカーの矩を越えた、との評価)

その他にも、日銀出身を含む国会議員による残念な国会質疑などが実名で書かれています。国会中継動画などで知っていた内容もありますが、その酷さに改めて憤りを感じました。



消費増税により「リフレレジーム」が毀損され、予想インフレ率を引上げる力が、現日銀の金融政策には余り無いと指摘されます。


そのうえで「リフレレジーム」の再構築の必要性を訴えておられます。詳細は以下の論説を参照するように書かれていました。


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その論説の中で、岩田規久男元日銀副総裁は次のように述べています。


「重い税・社会保障負担のために、実質可処分所得が増えない現役世代は、保育、教育、住宅ローンなどのための重い負担に加えて、退職後の生活費のために節約に励まざるをえない。そのため、「アマゾン効果」などによって増えた実質所得は消費に向かわず、貯蓄に回される」(p.58)


「現役世代の税・社会保障負担を増やすことなく、彼らの実質可処分所得を増やさなければならない」(p.59)


「消費増税で壊れた「リフレ・レジーム」を再構築すべきである。このリフレ・レジームの再構築なくして、日銀が現在の金融政策を続けても、二%の物価安定目標の達成はきわめて困難である。」(p.61)



岩田規久男元日銀副総裁は、日銀審議委員は9名であり、その中で多数をしめないと政策提案が通らない点にも新著で触れていました。あと2名リフレ派を増やさないと厳しそうです。。。


〈リフレ派〉

片岡剛士委員、原田泰委員、若田部昌澄副総裁


〈リフレ政策に理解あったはずが日銀寄りに…〉

櫻井委員


〈円安推しだと思っていたんですが…〉

政井委員

布野委員


〈財務省ご出身〉

黒田総裁


〈金融機関ご出身〉

鈴木委員


〈日銀プロパー、デフレ時代の企画局〉

雨宮副総裁




物価目標2%には未だに距離がありますが、岩田規久男先生、五年間お疲れ様でした(^-^)


若田部昌澄日銀副総裁が、日記を書くことを勧めたそうなので、追加緩和ではないですが、日銀日記Ⅱ」にも期待ですね。