興味深い記事を読みました。
震災7年でも徴収される「復興増税」のおかしさに気づいてますか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54954
記事では、“復興予算の財源確保が増税ありきで進んでしまったことだ。というのも、大災害における復興財源は、増税ではなく国債によってまかなうというのが経済学のセオリーである”
と書かれています。
「課税平準化」というものですね。
ところが、多くの日本の「経済学者」の方々は異なるご意見をお持ちのようです。復興増税を伊藤隆敏、伊藤元重、吉川洋、土居丈朗、齊藤 誠、深尾 光洋、各氏らが主張(*1)され、100名を超える経済学者の方々が賛同(*2)なさっています。
“15兆円~20兆円規模の追加的財政支出を覚悟しなければならない。こうした支出を国債発行で賄い、時間をかけて返済していくという選択肢は、人口が増加し、経済成長率が高く、政府債務・国内総生産(GDP)比が低い経済では正解だ。だが、日本経済は3条件すべてを満たしていない”(*1)
そ、そうなんですか?
“復興国債のアイデアはツケの先送りにほかならず、世代間の公平性を欠く[中略]「復興連帯税」として逆進的、中立的、累進的あらゆる税を組み合わせるべきだろう。我々の多くは、消費税率の引き上げ、固定資産税に国税としての上乗せ、法人税減税の先送り、所得税の課税最低限の引き下げ、所得税の特定税率増税を提案している。”(*1)
増税で復興財源を確保ということを主張なさっています。
課税により阻害される経済活動の大きさは、限界税率の2乗に比例する、と聞いたことがありますが大丈夫なのでしょうか。
復興財源の確保をどうするかは、多数決ですと、1 vs 100 で、国債ではなく増税ということに…
復興財源を増税ということであれば、単年度の負担を軽くするため、10年で復興財源全額返済よりも25年という期間で返済としてくれた方が単年度の負担は少なくなりますね。
家のローンでも35年などありますし、まして、復興では港や道路など何十年も便益を受けるインフラへの投資もあるはずで、建設国債の政府見合い資産の償還期間にならえば60年ローン(償還)くらいで良いのではないでしょうか。
だが、ちょっと待って欲しい。
増税することを決めてしまい、償還期間の長短に議論を絞ることは、危険です。
問題設定自体を疑うことをしないと、不要な税負担をしてしまい、その税負担により阻害された経済活動により、現役・将来世代の便益を小さくしてしまうという「ツケ」を残すことになってしまいます。
良い案はないものでしょうか。
国会議員211名が賛同された以下の提言が参考になります。
“政府と日銀の間で政策協定(アコード)を締結し、必要な財源調達として政府が発行する震災国債を日銀が原則全額買い切りオペする”(*3)
これなら、増税による痛みを伴わずに済みそうですね。
日銀による国債買入は日銀乗換と言われており、毎年のように実施されています。平成29年度は3兆円ですが、多い時は23兆円も日銀が国債を買入していました。
「日銀による国債引受は禁じ手だ!」
という声が聞こえてきそうですが、落ち着いて下さい。
日本は法治国家ですので財政法に則り、国会議決を経て実施されています。
財政法第5条「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」
「国債を20兆円も日銀が引き受けたらハイパーインフレになる!」
という声が聞こえてきそうですが、落ち着いて下さい。
日銀は、長期国債の保有残高の増加目標80兆円を目途としており、2018年3月20日営業毎旬報告の長期国債保有は、前年比で約44.4兆円増加しています。
物価上昇率はコアCPIで1.0%、コアコアCPIで0.5%(2018年2月)とハイパーインフレは起きそうな気配すらありません。
ここでもう一度多数決
増税しない(復興国債を日銀引受など) 212 vs 復興増税 100
増税しない方が良さそうです。
復興法人増税は前倒しでやめたのですから、所得税・住民税の復興増税もすぐにやめるべきだと思います。
実際にご近所の方にアンケート取ったことがあります。
「震災で困っておられる方がまだまだ沢山います。復興にはお金が必要です。復興増税に賛成ですか?」
賛成 17 vs 反対 5
アンケートにお答え下さった方々へ、復興増税によらない財源確保(復興国債の全額日銀引受)ができることをお伝えしました。
そして再度アンケート
「震災で困っておられる方がまだまだ沢山います。復興にはお金が必要です。復興増税に賛成ですか?」
賛成 0 vs 反対 22
問題設定そのものを疑うことや、正しい情報を得ることで、正しい判断ができる可能性が増します。
公文書書き換えをしてしまう財務省の情報や財務省のなかまたちが発信する情報を鵜呑みにすると危険ですね。
(*1)日本経済新聞経済教室 「震災復興政策―経済学者が共同提言」
http://www3.grips.ac.jp/~t-ito/KeizaiKyoshitsu20110523.pdf
(*2)伊藤隆敏研究室【復興賛同者リスト】
http://www3.grips.ac.jp/~t-ito/j_fukkou2011_list.htm
(*3)増税によらない復興財源を求める声明文(No.83) - 日本経済復活の会
http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/676043/566837/68697153