面白い記事を見つけました。

債務超過の日本政府 | COMEMO

https://comemo.io/entries/2712


日本政府が債務超過である点に着目され、統合政府で見た際に日本政府債務である国債と日銀保有資産である国債を相殺するのは「乱暴な議論」となさっています。


「乱暴な議論」と認識される論理的な理由が分かりません。


国債の問題を考えるうえで、総額と純額を区別し、統合政府で考えることは学部生レベルの基本的なことです。

企業の連結決算において、例えば親子会社間の債権債務を相殺せずにバランスシートを作成したら「粉飾」になってしまうのではないでしょうか。


ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ氏やシムズ氏は、統合政府のバランスシートを見て、日本財政が言われているほど悪くないこと、消費増税をすべきでないこと主張されているそうです。


スティグリッツ氏が経済財政諮問会議に出した資料です。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/0314/shiryo_01-1.pdf


同資料の日本語訳もあります。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/0314/shiryo_01-2.pdf


この資料の中でスティグリッツ氏は、

 "Cancelling government debt owned by government (BOJ)" 

と統合政府内の債権債務の国債を「相殺」する旨を述べています。


ところが、内閣府の日本語訳では

“政府(日本銀行)が保有する政府債務を無効にする。”


どちらが正しいのでしょうか?

私は後者が意図的に誤訳したと考えます。

スティグリッツ氏が経済財政諮問会議で発言をしたのち、国会で黒田東彦日銀総裁は

「国債の無効化は政府の信認を毀損する」

旨の答弁をしています。

相殺ではなく無効とするよう訳して、無効化を「前提」に質疑をする…誤った前提からは良い議論は難しい、良く見かけることですね。


しかも、最近の議論では財政審(財務大臣の諮問機関)の委員を勤める慶応大学の関係者、土居丈朗氏は、スティグリッツ氏の議論(統合政府で日本財政がそれほど悪くなく統合政府内の債権債務は相殺できる)は誤りだとコメント(2017.09.26 BSフジのプライムニュース)されていたそうです。しかも、高橋洋一氏に、英文レターでスティグリッツ氏に間違いを正すように勧められ、(既に)やっている旨のコメントをされていました。

その証拠を是非出していただきたいものです。


ただし、土居丈朗氏は、2014年4月の消費増税の影響について

消費税の増税によって消費を落ち込ませているから足を引っ張っているじゃなくて、供給不足が足を引っ張っている。ということは、消費税の影響じゃない、というふうに見るべきだと思いますね。」

と、消費増税は景気の足を引っ張っておらず、野菜不足や人手不足など供給側の問題だと力説されたことで知られています。

後に、土居丈朗氏は消費増税による実質可処分所得の減少による影響を認めています(浜田・本田内閣官房参与と番組で共演した際)。


土居氏のご発言は、慶応大学関係者の肩書きがあるにしても、にわかには信じがたいものです。



整理すると

・学部生レベルの基本

・ノーベル経済学賞受賞者の複数が言及

・信頼に値しない方が誤りと指摘

などと、マーケットの国債金利などから、日本の財政状況はさほど悪くなく、「乱暴な議論」とするのは乱暴ではないか、と思われます。



以下の記事では高橋洋一氏と田中秀明氏議論を比較検討され、高橋洋一氏に軍配が上がっています。


日銀保有国債は政府負債と相殺? #BLOGOS

http://blogos.com/outline/196634/



日銀当座預金に債務性はあるはずがない。田中秀明教授に再反論 | 高橋洋一の俗論を撃つ! | ダイヤモンド・オンライン

http://diamond.jp/articles/-/109754


また、高橋洋一氏は、オフバランスされた徴税権を試算した統合政府のバランスシートを記事に書いておられます。


『日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている』

http://diamond.jp/articles/-/119006?page=3



そもそも、最強官庁といわれる財務省自身が日本国債のデフォルトは考えられないと。


日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。”

『外国格付け会社宛意見書要旨 : 財務省』

http://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm



日本政府の財政を家計に例えたり、善意で増税多数派工作をするなど、私は財務省に否定的ですが、「自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」とする財務省のご意見に大賛成です。


すごいぞ、財務省!