安倍総理が2017年9月25日の会見で衆議院解散を表明した。(*1)(*1-a *1を文字起こししてくださった記事)

筆者がまとめると
『北朝鮮リスクへの備えと、消費税率10%への引上げに伴う財政支出先の変更(2020年のプライマリーバランス黒字化目標の先送り含む)など、国民との約束を大きく変更するので信を問う(今回は衆院解散)』

消費減税を主張してきた筆者が感じたのは次の通り。

1)消費税率の更なる引き上げを主張したのは、法律に書かれているとはいえ残念。

2)借金返済から教育や子育てに財源が向けられるのはプラス

3)プライマリーバランス黒字化目標をなし崩し的に骨抜きにするのはプラス(官僚的手法?)。

4)(厳しいかもしれないが)消費税率10%での予算編成ギリギリのタイミングで、「これまでのお約束とは異なる、新しい判断だ」(安倍総理記者会見2016.06.01)とでも言って、増税判断を変更(延期、凍結など)してくれたら良いな。

5)税と社会保障の一体改革では、増税だけが決まり、増税分の13.5兆円のうち、社会保障の充実が2.7兆円、残りの10.8兆円は借金返済に充てられていた。
100円でジュースを買ったら、20円分しかジュースが出てこなかった、という状態。残りの80円は借金返済に消えた。
これを安倍総理は、100円で20円分しか出ないのを60円分のジュースを出せるようにします、と。
不充分ながら、お金の使い途を借金返済から国民の社会保障へと向きを変えた。税と社会保障の一体改革を「骨抜き」にしようしているように感じられる。

6)安倍総理は政治家なので、事情が変われば、消費税率10%への引上げを更に延期または凍結する時間的な猶予は残されている。

今回の総理会見、消費増税の1回目の延期を決めた際の会見(18ヵ月先送り&衆院解散)、2回目の延期を決めた際の会見(30ヵ月先送り&参院選)を見てみよう。

消費税率引き上げを悲願(?)とする団体は、枕を高くして眠れるのだろうか。2度あることは3度ある!?


しかし、そのつけを未来の世代に回すようなことはあってはならない。人づくり革命を力強く進めていくためには、その安定財源として、再来年10月に予定される、消費税率10%引き上げによる財源を、活用しなければならないと、私は判断いたしました


2%の引き上げにより、5兆円程度の税収となります。現在の予定ではこの税収の5分の1だけを社会保障の充実に使い、残りの5分の4である4兆円余りは、借金の返済に使うこととなっています。この考え方は、消費税を5%から10%へと引き上げる際の前提であり、国民の皆様にお約束していたことであります。


この消費税の使いみちを私は、思い切って変えたい子育て世代への投資と、社会保障の安定化とにバランスよく充当し、あわせて財政再建も確実に実現する、そうした道を追求してまいります


増税分を借金の返済ばかりにではなく、少子化対策などの歳出により多く回すことで、3年前の8%に引き上げたときのような景気への悪影響も軽減できます


他方で、2020年度のプライマリーバランス、黒字化目標の達成は困難となります。しかし安倍政権は、財政再建の旗を降ろすことはありません。プライマリーバランスの黒字化を目指すという目標自体はしっかりと堅持します。引き続き、歳出・歳入両面からの改革を続け、今後達成に向けた具体的な政策を策定いたします。


少子高齢化という最大の課題を克服するため、我が国の社会システムの大改革に挑戦する。私は、そう決断しました。


そして子育て世代への投資を拡充するため、これまでお約束していた消費税の使いみちを見直すことを本日決断しました。


国民の皆様とのお約束を変更し、国民生活に関わる思い決断を行う以上、速やかに国民の信を問わなければならない、そう決心いたしました。


28日に衆議院を解散いたします

[後略]”(*1-a を基に筆者が一部修正、後日、官邸サイトの文言に差替え予定)



2014年の増税延期判断時の会見から抜粋。


昨日、7月、8月、9月のGDP速報が発表されました。残念ながら成長軌道には戻っていません。消費税を引き上げるべきかどうか、40名を超える有識者の皆さんから御意見を伺いました。そして、私の経済政策のブレーンの皆さんから御意見を伺い、何度も議論を重ねてまいりました。そうしたことを総合的に勘案し、デフレから脱却し、経済を成長させる、アベノミクスの成功を確かなものとするため、本日、私は、消費税10%への引き上げを法定どおり来年10月には行わず、18カ月延期すべきであるとの結論に至りました
[中略]
ですから、私は何よりも個人消費の動向を注視してまいりました。昨日発表された7月から9月のGDP速報によれば、個人消費は4月から6月に続き、1年前と比べ2%以上減少しました。現時点では、3%分の消費税率引き上げが個人消費を押し下げる大きな重石となっています。本年4月の消費税率3%引き上げに続き、来年10月から2%引き上げることは、個人消費を再び押し下げ、デフレ脱却も危うくなると判断いたしました。
[中略]
来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします
[中略]
このように、国民生活にとって、そして、国民経済にとって重い重い決断をする以上、速やかに国民に信を問うべきである。そう決心いたしました。今週21日に衆議院を解散いたします。消費税の引き上げを18カ月延期すべきであるということ、そして平成29年4月には確実に10%へ消費税を引き上げるということについて、そして、私たちが進めてきた経済政策、成長戦略をさらに前に進めていくべきかどうかについて、国民の皆様の判断を仰ぎたいと思います。
 なぜ今週の解散か説明いたします。国民の皆様の判断を仰いだ上で、来年度予算に遅滞をもたらさないぎりぎりのタイミングであると考えたからであります。

[後略]”(*2)


2016年の増税延期判断時の会見から抜粋
「再び延期することはない」と言った同じ男の口から…

「これまでのお約束とは異なる、新しい判断だ」

(2016年通常国会閉幕時、参院選前)


足元では新興国や途上国の経済が落ち込んでおり、世界経済が大きなリスクに直面している。こうした認識を先般、伊勢志摩サミットに集まった世界のリーダーたちと共有しました。

 先般の熊本地震では、熊本や大分の観光業や農業、製造業など、九州の広い範囲にわたって経済や暮らしが打撃を受けています。

 これらが、日本経済にとって新たな下振れリスクとなっている。最悪の場合、再び、デフレの長いトンネルへと逆戻りするリスクがあります。

 今こそアベノミクスのエンジンを最大にふかし、こうしたリスクを振り払う。一気呵成に抜け出すためには「脱出速度」を最大限まで上げなければなりません。

アベノミクスをもっと加速するのか、それとも後戻りするのか。これが来る参議院選挙の最大の争点であります。

[中略]

その上で、来年4月に予定される消費税率の10%への引上げについてお話しいたします。
 1年半前の総選挙で、私は来年4月からの消費税率引上げに向けて必要な経済状況を創り上げるとお約束しました。そして、アベノミクスを強力に推し進めてまいりました。

[中略]

今般のG7による合意、共通のリスク認識の下に、日本として構造改革の加速や財政出動など、あらゆる政策を総動員してまいります。そうした中で、内需を腰折れさせかねない消費税率の引上げは延期すべきである。そう判断いたしました。
 いつまで延期するかについてお話しいたします。
 中国などにおいては、過剰設備や不良債権の問題など、構造的課題への対応の遅れが指摘されており、新興国経済の回復には時間がかかる可能性があります。そうした中で、世界的な需要の低迷が長期化することも懸念されることから、できる限り長く延期すべきとも考えました。
 しかし、私は、財政再建の旗を降ろしません。我が国への国際的な信認を確保しなければならない。そして、社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たす。安倍内閣のこうした立場は、揺るぎないものであります。
 2020年度の財政健全化目標はしっかりと堅持します。そのため、ぎりぎりのタイミングである2019年10月には消費税率を10%へ引き上げることとし、30か月延期することとします。その際に、軽減税率を導入いたします

[後略]”(*3)



「急な選挙はアベノミクスを危険にする可能性がある」(*4)とされる識者もおられました。


衆院選の結果、選挙後の経済政策、2019年10月の税率引上げの最終判断がどうなるのか、注目です。



(*1)平成29年9月25日 安倍内閣総理大臣記者会見 | 平成29年 | 総理の演説・記者会見など | 記者会見 | 首相官邸ホームページ

http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/0925kaiken.html


(*1-a)【国難克服解散会見、全文文字起こし】安倍首相、衆院解散表明記者会見-平成29年9月25日 : おもしろいインターネット

http://blog.livedoor.jp/otomarizm/archives/72394120.html


(*2)平成26年11月18日 安倍内閣総理大臣記者会見 | 平成26年 | 総理の演説・記者会見など | 記者会見 | 首相官邸ホームページ

http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/1118kaiken.html


(*3)平成28年6月1日 安倍内閣総理大臣記者会見 | 平成28年 | 総理の演説・記者会見など | 記者会見 | 首相官邸ホームページ

http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2016/0601kaiken.html


(*4)A Snap Election In Japan May Endanger Abenomics via @forbes 

http://www.forbes.com/sites/mwakatabe/2017/09/21/snap-election-japan-endanger-abenomics-shinzo-abe/#592d1bf3e342



最後に妄想を追加