【本】ヘリコプターマネー(井上智洋,2016.11.25)

ヘリマネ本を拝読。

読んでいたら、とある秘書さんに

「何の本を読んでるんですか?」

と声をかけられ、ヘリマネの解説をすることに。


私「ヘリコプターで空からお金を…」

秘「わー、すごーい」

私「(本当のことを話しづらい… 笑)まくように、国民にお金を渡して、使ってもらい景気を良くしようとすることなんですよ」

秘「へー、お金を沢山もらったら使うかもカナヘイうさぎ


お金を沢山まいてください 笑


目次を見てみましょう。

目次

第1章 お金のばらまきで景気は良くなるか?

第2章 政府紙幣と財政ファイナンス

第3章 長期デフレ不況にヘリコプターマネーは有効か?

第4章 日本経済が陥った罠とは何か?

第5章 ヘリコプターマネーとベーシックインカム


気になった箇所をいくつか取り上げてみます。


"「デフレが不況の原因か」「不況がデフレの原因か」という議論があって[中略]私が重視しているのは後者である。それは、日本経済がこれまで経験してきた長期不況である「失われた20年」の始まりが1991年なのに対し、デフレの始まりが98年であることからも明らかである。"(P.25)


デフレは「平成の鬼」と呼んでいる第26代三重野康日銀総裁によるバブル潰しに端を発しており、その後も緊縮的な金融政策がとられたために、デフレ入りしたと。

そして、デフレにまともに対処しなかったことで、不況が長引いた、と理解しています。片岡剛士さんの記事(*1)が参考になります。


(*1)《「失われた20年」を振り返る──長期停滞の発端と、政策課題の誤りとは》

(片岡剛士,2015.08.25)

https://newspicks.com/news/1130806



統合政府についても言及がありました。


"政府は日銀に借金を返さなければならないと思うかもしれないが、基本的にはその必要はない。統合政府の貸し借り自体には何の実質的な意味もないからである。

それどころか、貸したお金は返さなければならないという規範意識を政府と中央銀行の間に持ち込むことは、この上ない危険をもたらす可能性すらある。"(P.84)


国債問題を考える際には、総額と純額(負債から資産を引いた額)を区別し、統合政府(政府+中央銀行 政府の国債は負債、中央銀行保有の国債は資産でこれらを相殺)で考えることが重要でしたね。


"日本では、60年経ったら国債を完全に償還しなければならないという、「60年償還ルール」がある。この不要な独自ルールを撤廃するか、日銀保有の国債を永久債化してそのルールから除外すべきであろう(若田部昌澄教授の示唆に基づく)。"(P.88)


私も60年償還ルールは無くすべきだと考えます。

会田さんの記事(*2)が参考になります。


(*2)《「60年償還ルール」がなくても財政規律は維持可能―SG証券チーフエコノミスト・会田氏》

https://zuuonline.com/archives/76240



その他にも様々なチャートや理論モデルを示されたり、AIからBI、CI( Currency Innovation )と愛にあふれた「国民中心の貨幣制度」(P.170)を述べておられます。


私のような一般人向けで、ヘリコプターマネーについて分かり易く書かれた書籍が世に出てきたことに感謝です。


最後に「期待」について。


"期待に働きかける政策は不確実"(P.158) と述べておられますが、この点は、意見が異なります。

アベノミクスの消費増税前は期待で経済が大きく動き、消費増税により「期待」は雲散霧消ではなく、緊縮的な経済を「期待」させていたのではないでしょうか。


ヘリコプターマネーのご著書を拝読していて思い出した論文がありました。


日本で小幅で頑固なデフレが続いたことについて書かれた岡田靖さんの論文をウォッチャーさんが訳して下さったので、以下に紹介しておきます。


(*3)《VOXを訳す:岡田靖 「小幅で頑固な日本のデフレーションは問題か?」》

(2010.04.12)

http://voxwatcher.blogspot.com/2010/04/blog-post_12.html



「さっさとデフレを終わらせろ」、ですね。