橋本龍太郎氏の言葉を紹介したい。

"私は、このたび自由民主党総裁選挙への立候補を決意致しました。立候補のご挨拶に先立ち、まず、心からのお詫びを申し上げます

 現在、我が国は再び厳しい経済状況の下にあります。これは、が内閣総理大臣の地位にありました時に日本経済の実態を十分に把握しないまま国の財政の健全化を急ぐあまり財政再建のタイミングを早まったことが原点にあることを、率直に認めます。現在の不況の中で倒産やリストラで職を失い、あるいは重い住宅ローンにあえいでおられる多くの国民の皆様がいることを承知しています。

誠に申し訳ないと思っています。[後略]"


(*1)《自由民主党総裁選挙立候補のごあいさつ》

(橋本龍太郎,2001.04.17)

http://www.ryu-hasimoto.net/aisatu.html



安倍晋三氏は、消費増税について、橋本龍太郎氏ほどには素直ではないような印象を受けます。


「新・三本の矢」の進捗を見ても、名目GDP成長率の伸びは鈍化しており、GDP600兆円の達成時期は後ズレし、デフレ脱却もままならない状況がしばらく続きそうです。


リフレ派の論客はどのように見ているのでしょうか。

財政金融のアクセルを更に踏み込むべき、というご主張をされる方々が多い(田中秀臣さん、若田部昌澄さん、金子洋一さん、高橋洋一さん、片岡剛士さん等)中で、このまま行けば、2018年頃に完全雇用になる、という見通しの方もおられます。

野口旭さんです。(財政金融のアクセルを踏み込むということをご主張されるであろうことは、ケインズ主義2.0のご著書から伺い知れますが)


野口旭さんは、"雇用改善モメンタムを根本から覆すようなネガティブなショックは起きない"(*2)、"完全雇用失業率を高く見積もり過ぎるなどによって、日銀が先走った金融引き締めをしない"(*2)などの前提条件を満たせば、"日本経済はその完全雇用に2018年頃には到達できると考えている"(*2)

そうです。


その根拠は、"きわめて単純であり、2013年からの雇用改善ペースをそのまま延長すれば、2年後の2018年には「本来のフィリップスカーブ」が示す完全雇用失業率である「2%半ば」にたどり着くからである"(*2)

とのことです。


「そもそも雇用改善ペースがそのまま2年間継続する根拠は一体何なのだろう?」

という疑問が残ります。


トランプ氏の経済政策への期待から進んだドル円レート、総雇用者所得の増加などがプラスに働くことは考えられますが、停滞する消費やマイナスとなっているコアCPI、11四半期ぶりにマイナス入りしたGDPデフレーター、QQEの頃のような勢いはない予想インフレ率(財務省は物価連動国債の発行を見送るとの報道がありました)…これらが雇用改善ペースを阻害しないというのは楽観的に思えます。



(*2)《日本経済はいつ完全雇用を達成するのか》

(野口旭,ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト,2016.12.05)

http://www.newsweekjapan.jp/noguchi/2016/12/post-4.php



内閣府の消費動向調査(*3)によると、内閣府は基調判断を

(前月まで)「持ち直しの動きがみられる」

(11月)「持ち直しのテンポが緩やかになっている」

として、9カ月ぶりに下方修正したそうです。


"(1)消費者態度指数


平成28年(2016年)11月の消費者態度指数は、前月差1.4ポイント低下し40.9であった(第1表参照)。


(2)消費者意識指標


消費者態度指数を構成する各消費者意識指標について、平成28年(2016年)11月の動向を前月差でみると、

「雇用環境」が2.3ポイント低下し42.5

「耐久消費財の買い時判断」が1.4ポイント低下し40.5

「暮らし向き」が1.3ポイント低下し40.1

「収入の増え方」が0.6ポイント低下し40.4

となった。

また、

「資産価値」に関する意識指標は、前月差2.6ポイント低下し40.1となった"


{1E650574-64E3-47F0-BF0E-35E66C7A04A5}

{DC44C302-572E-49F9-9A2C-69A13659BBE5}

{298889F8-D164-4C56-86F5-3319B700AAF6}

図表出典(*3)


(*3)《平成28年11月実施調査結果:消費動向調査》

(内閣府,2016.12.05)

http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/2016/201611shouhi.html



平成28年度の2次補正予算のお題目(*4)を見ると、熊本地震対応の予算などは計上されていますが、停滞する消費へ本腰を入れた予算の割当は見当たりません。


{564723E0-40DF-445A-849B-6AD3F9AC3E03}

図表出典(*4)


(*4)《平成28年度 第2次補正予算案の概要 (PR資料)》

(経済産業省,2016.08)

http://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2016/pdf/h28_2hosyuyosan_pr.pdf



報道(*5)によりますと、平成28年度の第三次補正予算も検討されているようですが、(観測気球の部分があるかもしれませんが)景気対策や停滞する消費への対応目的ではないようです。


(*5)《政府、月内に3次補正 7年ぶり税収減で赤字国債発行へ 》

(産経新聞,2016.12.03)

http://www.sankei.com/economy/news/161203/ecn1612030007-n1.html



安倍政権は、橋本龍太郎氏のように反省したり、停滞する消費へテコ入れする必要性を認知していない(認知ラグ)のでしょうか?

それとも、認知していて対応しないのでしょうか?


謎は深まるばかり…アベノミクスは再起動したかというと、そうではなく、停止していない、という程度ではないでしょうか。