≪2020年 世界経済の勝者と敗者≫ (2016.01.26,ポール・クルーグマン,浜田宏一)
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ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンと、イェール大学名誉教授の浜田宏一内閣官房参与が著者に並ぶ。

<目次>
プロローグ 上昇する日米、下降する中国・欧州
第1章 アメリカの出口戦略
第2章 日本のアベノミクス
第3章 ヨーロッパの緊縮財政とユーロの呪縛
第4章 中国バブルの深度


気になった点を以下にまとめます。

クルーグマン氏
FRBの利上げ
"完全雇用になっていることが明白になるまで、間違いなくインフレになっているといえるまでは、利上げするのを待って欲しかった。"(34ページ)

TPP
"自称「どっちつかずの反対者」です。"
関税は既に非常に低いものであり、TPPによる貿易への影響は、貨幣価値の変動などの別の要因と比較すると「意味がなくなるくらいに低い水準」としています。
その割には、特許や著作権、知的所有権などにおいて、アメリカにとって望ましいかどうかは自明でない、としています。

浜田氏
トービンの教え
イエレン「トービンは教え子たちに、高度な知的水準を満たすだけでなく、人類の幸福を高めるような仕事をするように、と励ましていました」

日本のアベノミクス
浜田氏
白川方明氏が行った、デフレ・円高を招いた金融政策、インフレ目途(めど)など、日本経済を苦しめた姿勢を批判しています。

クルーグマン氏
"金融緩和によってデフレから脱却しようとはしたのですが、ここでもやはり、少しばかり経済が回復したところで、緩和の手を緩めてしまったのです。それは、紙幣をばらまきすぎては、急激なインフレになってしまうという不安からでした。
また財政刺激策には金融面のサポートがなく、金融緩和には財政面でのサポートがない状況もあった"(85ページ)
日銀総裁に外国人、または、学者を選ぶことを提案しています。クルーグマン日銀総裁の日も来るのでしょうか?

消費増税については一貫して反対しているクルーグマン。
"デフレの背骨を折って沈静化させるまで、増税は絶対にやってはいけなかった"(95ページ)
"消費税を上げることは、日本経済にとって自己破壊的な政策といわざるをえません。増税以降、日本経済は勢いを失い始めたように見えます"(96ページ)

日本国債の格付
浜田氏は、国債の格付けは、政治的な思惑に影響されるので、それほど気にする必要はないと、述べています。
クルーグマン氏は、日本が自国通貨建ての債務であるのでデフォルトしないことを挙げ、"日本国債を格付けするなら、AAAです"(113ページ)と。


そのほかにも、浜田氏が、エコノミストや学者、財務省に鋭い批判をしています。
クルーグマン氏は、インフレ目標4%を提案。円安の効果には時間がかかることなども述べています。

ヨーロッパでは、ユーロという通貨の問題、中国ではバブルの問題などが語られています。


米日欧中の経済に関するトピックをまとめて読める、読みやすい本です。浜田氏のコラムも、黒い日銀、白い日銀など、テレビや新聞では目にすることができない内容があります。

ページ数が、222ページとなっているのは、偶然でしょうか。
2年でマネタリーベースを2倍、物価上昇率を2%とした日銀の金融政策を思わせます。


経済に興味のある一般の方から、政治家の方など、多くの方にお読みいただきたい本です。