「♪坊やよい子だねんねしな いまも昔もかわりなく 母のめぐみの子守唄…」
覚えていらっしゃいますか?そうです。これは1975年に始まった「まんが日本昔ばなし」のオープニングテーマ曲です。
このアニメの中で「むかーし、むかしのことじゃったぁ…」っと、味わいのある語り口が印象深かった俳優の常田富士男さんが代表を務めていたのが、下高井郡木島平村往郷にある「ふう太の杜の郷の家」。
「郷の家」は、同村出身の常田さんと村民の皆さんの想いにより、2004年に誕生し、昔の農民の暮らしぶりを今に伝えていく活動の拠点として利用されています。
今回、「古民家を活用した食事処」というイメージを持って立ち寄りましたが、そこには何とも言えない素晴らしい空間が広がっていました。
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7月19日、「カヤの平高原」での自然を満喫し、麓まで降りてまず向かったのが上木島地区にある道の駅「FARMUS木島平」。
翌月曜日が定休日であり、何か珍しい物があれば購入しようと覗いてみたのです。
外観は道の駅とは思えない斬新な建物で、期待して入りましたが、日曜日の午後だというのに人も少なく、道の駅特有の活気はあまり感じられませんでした。
道の駅を後にし、今度は同じく月曜日がお休みになる「郷の家」へ。
今日の宿泊先が食事提供がないところだったので、可能ならば夕食のお弁当を購入し、併せて見学させてもらおうと思って立ち寄りました。
15時前という時間帯のせいもあってか、お客さんがおらず、係りの方がひとりで作業をされている最中でした。
弁当販売の予定がなく、哀れに思ってくれたのか、作業の手を止めて中へ通して下さり、コーヒーを頂く事が出来ました。
そこでいろいろなお話をさせてもらったのですが…
しーんと静まり返った山里にひっそりと建つ古民家を時おり吹き抜ける柔らかく爽やかな風…
それはまるで、子供の頃の夏休みに昼寝をするそばで、母があおいでくれた団扇から生み出される優しく心地よい風のようでした。
と同時に、板の間越しに伝わってくるひんやりとした感覚。
うまく表現出来ませんが、この空間を流れるそういった涼感もさることながら、それとはまた違う、まるで故郷に帰ってきたかのように心が休まり落ち着ける「空気感」も漂っており、思わず深呼吸しました。
いいなぁ。落ち着くなぁ。癒されるなぁ。そんな素晴らしさが凝縮された空間が「郷の家」にはありました。
係りの方の話では、「郷の家」は村に伝わる伝説や昔話の語りを聴くことが出来たり、村民の舞台発表の場としても活用されているようです。
また、同所で年1回2日間のみ開店する幻の食堂「昭和レトロ食彩紀行」は、村民のチームワーク結集と村外へのメッセージ発信の格好の機会となっています。
まさに「村民の心の拠り所」となっている古民家、それが「郷の家」なのです。
残念ながら、常田富士男さんは2年前にお亡くなりになりましたが、「郷の家」に流れているこの空気感とともに、常田さんのご遺志も後世まで受け継がれていくものと思われます。
さて気が付けば、もう16時半。居心地が良く、すっかり長居をしてしまいました。
「郷の家」に別れを告げ、同地区にある村が経営(?)する自炊の出来る簡易宿泊施設「梨の木荘」にチェックイン。
自炊設備は全て揃ってます!
1泊2日の予定だったので、自炊はせずコンビニへ弁当の買い出し後、宿から歩いて数分のところにある「馬曲温泉望郷の湯」へ。
チェックイン時に預かった「通行手形」があれば、滞在中は何度でも入浴可能です。
18時すぎの入浴だった為、地元の方が多いのか内湯も野天も混雑していました。今日のところは内湯で汗を流し、野天は翌日へ持ち越しとしました。
こうして、宿へ戻って夕食後、うだうだとしておりましたが、疲れもあって木島平村初日は早めの就寝となりました。
明けて翌日、月曜日朝7時すぎに向かったのが、「稲泉寺(とうせんじ)」です。蓮が見頃を迎えておりました。
蓮は午後になると花が萎むという事で、地元の人に午前中しかも早い時間帯の見学を勧められていたのです。
何でも、早朝に花が開く時、「ポン!」という音をたてるそうです。本当かな?
蓮池に飛び込む蛙さんはたくさんいましたが、平日の早朝とあって、蓮の花を独り占め出来ました。
その後、平成の名水100選に選ばれた「龍興寺清水」が湧き出ている水場で、ゴックン。うーん、うまい!
宿に戻って、夕食の残りで朝食を済ませ、8時に再び歩いて「馬曲温泉」へ。今度は野天風呂を独り占め出来ました。
さすがに、日経新聞が「雪景色が素晴らしい温泉」で東日本1位に選定しただけあって、絶景が広がっています。
ついでに内湯にも再度入浴。こちらも独り占めでしたが、野天と内湯は少し離れている為、裸のままでの移動が出来ず一旦服を着る必要があり、これが唯一の難点でした。
温泉でくつろぎ、宿に戻って又ゆっくりした後、10時にチェックアウト。
自宅へ戻る途中、「内山和紙体験の家」に立ち寄るも閉まっており、漬物専門店「岡本商店」でお土産を購入し、帰路につきました。
今回の木島平村1泊2日の旅はまさに梅雨の晴れ間。
天候に恵まれ思い出に残る旅となりました。