荘厳!!「ヨーセ」「ヨーセ」の声が響く、遠山郷「霜月祭り」の夜 | 信濃路てんこ盛り

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遠山の霜月祭りは湯立神楽(*)の祭りで、現在では新暦の12月上旬から中旬にかけて、上村・南信濃の8つの神社で行われています。

 

(*)日本の伝統的な神楽の形式のひとつで、釜に湯を煮えたぎらせ、その湯を用いて神事を執り行う

 

祭りは各神社ごとに釜や面の数が異なり、開始から終了までの時間もまちまちで、当日午前中から翌日早朝まで長時間にわたって行われているところもあります。

 

祭りの見どころは何と言っても、「水の王」等の面が、煮えたぎる湯を素手ではね飛ばすところです。

 

大ヒットアニメ映画「千と千尋の神隠し」のモデルとなり、地元の人が異口同音に唱える「寒い」「眠い」「煙い」の三拍子揃ったこの祭りを観てきました。

 

 

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いよいよ本日、12月13日12時半から、南信濃和田の諏訪神社で霜月祭りが行われます。

 

と言っても、祭りのメインは面(おもて)が登場する夜です。

 

それに備え、午前中はひとりで和田にある「遠山郷土館和田城」を、午後は知人と上町にある「上村まつり伝承館天伯」を見学し、霜月祭りについて学びました。

 

遠山郷土館 和田城

 

郷土館に展示されている面のレプリカ

 

上村まつり伝承館 天伯の内部

 

見学後、和田まで戻って道の駅にある遠山温泉郷「かぐらの湯」に入湯し、じっくりと温まった後…

 

「かぐらの湯」の前にある霜月祭りのモニュメント

 

今宵の宿である八重河内地区の「いろりの宿島畑」へ一旦、チェックイン。

 

 

前日、宿泊した民宿で今日の夕方から「子供達の舞」があると聞いていたので、まずはそちらを見学する為に、諏訪神社へ出かけてきました。

 

まだ人は多くありません。

17時頃から始まり、小学1年から中学3年まで、男女別に各学年5名(4名の舞と1名の太鼓)で、10分ずつ行われます。男の子は鈴と刀、女の子は鈴と扇子を持っての舞が行われました。

 

 

さすが、地元の子。小さいうちから、霜月祭りに溶け込んでいるのですね。大きくなったら遠山郷から出ていく子も多いでしょうが、中心となって祭りを継承していく子もいるのでしょう。

 

18時すぎまで見学し、再び宿泊先へ戻り、夕食。

祭りの夜だけは、門限もなく、夜中に帰ってきてからの入浴も可能という事だったので、入浴せず少しくつろぎました。

 

その後、20時に祭り目的でやってくる知人の知人(飯田市在住)と道の駅で合流し、三人で諏訪神社へ。

 

 

かなり冷えこんできました。

祭りでは面が登場する少し前の20時半頃から人も増え始めると聞いていたのですが、既に、祭りが行われている社殿は見物客でごった返しており、外まで人があふれ出ています。

 

それでもひるまずに、少しずつ少しずつ中の方へ。

中は火が焚かれ、釜にはお湯が沸いており温かいのですが、確かに少し、煙い!

 

式次第によると、舞殿では「鎮めの湯」という湯立や面神を降ろす「やおとめ」という儀式が行われていました。

 

 

「やおとめ」が終わると、いよいよ面の登場です。

 

拝殿で面をつけた「水の王」がゆっくりと釜の周りを廻り始めました。

 

 

何処からともなく、響き渡る「ヨーセ」「ヨーセ」の声。

 

そして…

釜の煮えたぎるお湯を素手で…

 

 

はねかけました!

 

 

飛び散った熱湯が見物客にかかるたびに悲鳴があがりました。少し後ろにいた私の首にも、お湯がかかり、熱かった!

 

「水の王」の手は真っ赤になっています。祭りも一気に盛り上がりました。

 

ただ写真は、前にいる見物客により視界が遮られ、また被写体に動きがある為、ぶれてしまい鮮明なものが撮れなくて残念でした。

 

「水の王」に続いて「火の王」、それから遠山氏の御霊や村内の神々の面が釜の周りを廻ります。

 

 

世話役のような人がいて、「〇〇神、お湯加減はいかがですか」「ゆっくり入ってお帰り下さい」等、神々に語りかけているのが、何ともユーモラスです。

 

 

人手不足なのか飛び入り参加OKで、数名の見物客が面をかぶって神となり、上体をゆすりながら釜を廻っていました。

 

地元の人よりも、この人達の方がアクションが大きく、見事に神を演じきっていました。

 

 

何せ、面は41もあります。水の王・火の王・ばあさ・じいさ・猿の役面5面を除いても、36面。

 

これらすべての面が登場したかどうかは不明ですが、各々が釜の周りを3周します。しかも、面で前方が見えていないのか、危なっかしい足取りで、全体がゆっくりとしたペースで祭りは進んでいきます。

 

約1時間半後、ようやく「ばあさ」が登場し、笹を束ねた湯タブサを何度も釜に突っ込んでは振り回します。釜は蒸気が上がり、真っ白。

 

 

熱湯が飛び散り、会場のあちらこちらから「水の王」の時よりも、大きな悲鳴があがっていました。

「ばあさ」は小さい人だったのか、後ろからでは見えませんでしたが、もう無茶苦茶な様子です。

 

そこへ「じいさ」がでてきます。こちらも見えず残念でしたが、マイクを通して、役人との問答が聞こえてきました。

 

「じいさ」は少し歩いたところで、役人に呼び止められ、最終的には刀も上衣もとりあげられた様子。

この時の問答がアドリブも入っていて、実に楽しいものでした。

 

最後に「猿」が登場し、面の締めくくりとなります。

 

 

 

この時、既に23時半をまわっていました。

祭りの終了予定時刻が1時すぎになるとのアナウンスがあったので、我々もここで、諏訪神社を後にする事としました。

 

宿に戻って入浴後、床に就いたのは1時をまわってからでした。

 

夕方の子供達の舞も含めて、実に4時間以上、立ちっぱなしで見学した祭りでしたが、最高に楽しく、すっかり霜月祭りにハマってしまいました。

 

 

信州を旅して、約30年。(空白の10年は除く)

今回の遠山郷巡りは非常に印象に残る有意義な2泊3日となりました。

 

遠山郷の8神社で行われているすべての霜月祭りを見てみたい。

私の信州における「夢」がまたひとつ、加わりました。