中村 富士美「おかえり」と言える、その日まで 山岳遭難捜索の現場から
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2023年4月15日発行 新潮社 155p
○中村富士美「「おかえり」と言えるその日まで 山岳遭難捜索の現場から」読みましたか
著者は、山で行方不明になった人を捜したり家族をサポートしたりする民間の山岳遭難捜索チームLiSSの代表です。看護師でもあります。
著者らが探索するのは、警察などの最初の捜索が終わった後です。だから、捜索者はすでに死亡している可能性が高いです。
当たり前ですが、家族は行方不明になった人がどんな形であれ戻ってくるのを待ち望みます。普段、何気なく山にハイキングに出かけたりしますが、一人で出かけるときは例えどんな低山でも、遭難する可能性があるのだなと、この本を読んで思いました。
この本は上から目線で遭難の危険性をいうのではなく、実際の捜索現場からのレポートです。捜索の大変さも分かると同時に、家族の焦る気持ちもリアルです。一人で山に行くのは特に危ない、保険も時と場合にはかけていく必要がある、と感じました。
とはいえ、レポートの筋立てが捜索ですので、どこで遭難したかという、謎解き的な要素もあり、その点も読み物として面白かったです。以下覚え書きです。61023
第1章 偶然の発見
著者が遭難捜索をするきっかけとなった2012年のエピソード。現場は棒ノ折山(東京都、埼玉県)。著者は捜索したわけではないのですが2件の行方不明者を発見します。。。
第2章 母が帰らない
2017年7月。現場は奥秩父、埼玉県と山梨県の境の大常木山(1962m)、飛龍山(2069m)、竜喰山(2011m)辺り。晴の写真と景色が違う、地面に置かれた看板が見えない。。。
第3章 1枚の看板
2018年3月、現場は秩父槍ヶ岳(1341m 埼玉県)。遭難者は普段からストックを使っています。。。
第4章 捜索の空白地帯
2018年10月、丹沢山地蛭ヶ岳周辺(神奈川県)。遭難者は3枚の計画書をいつも書きます。一枚は自宅、一枚は入山用、最期の一枚が手がかりに。。。
第5章 目的の人だけが見つからない
2019年6月、皇海山(2144m)、鋸山(1998m)周辺(群馬県、栃木県)。遭難者の持っているはずのヘリコプター捜索用の電波が見つかりません。また、細かな尾根を捜していきます、捜索した場所を示すGPSの地図は真っ赤になっていきます。。。
第6章 長いお別れ
2017年8月、巻機山(1967m。群馬県、新潟県)。遭難者はどうやら雪渓を登ったようです。なかなか見つかりません。一年も立つ頃、家族から危機失踪認定を出したいという申し出がありました。。。
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