それにしてもコンデンサマイクのSM57・58なのか、これは・・・
類例のないパフォーマンスを見せるマイクです。
前編では若いロットで発生していた一定周波数の「鳴き現象」の対策をおこないました。
このマイクにはもう一つの症状があり、後編ではその対策と説明をおこないます。
発生を確認した不都合現象(新・旧両タイプ共にハム確認)
①マイクの「AP」エンブレムにふれた時「ブーン」。
②ウィンドスクリーンのみを手に持ったとき「ブーン」。
③マイクをひざに置いたり、対地電位の異なる場所に置くと「ブーン」。
発生は
いずれも発生プロセスにより、その有無・発生程度は個体ごとバラバラとなるでしょう。
発生しない場合、対策も必要ないでしょう。
問題はここにある
原因は他愛ないが起こるとやっかい、それを見越した筐体設計ならば何の問題もない。
音響技術とは別ジャンルのノウハウだがこれができないとマイクロホンも電子機器も満足な完成度で仕上がらない、という鉄則があります。
それはEMC(電磁環境両立性)技術という領域にありますが、「ウチはオーディオ専門、そんなの知らないナー」ではまともな製品は作れないのです。
後編の改善内容は一口に言って筐体の「ファラデーシールド」を完璧にする、ということだけです。
1.エンブレム取付構造の問題と対策
APエンブレムに触れるとハムる「ブ~ン」
マイクフロントを手で持つと「ブ~ン」
グリルボールだけを握るとハムる「ブ~ン」
ノイズヘル「Noise Hell HIGH SHIELD」SP-D-03」と塗布用の竹串。
(塗った直後は導電性はないが、乾燥させたあとはきわめて良好な導通状態となる)
※筆者は意図をもってこのゼロオーム系の導電塗料としてこの塗料を限定して用いています。他の導電塗料を使用する場合は注射器入りなど含めて「ゼロオーム」系が必須条件です。
※カーボン系の導電塗料はコンデンサマイクには絶対に使わないでください。
抵抗値も高い上、ボロボロと粉になって落ちるため、コンデンサマイクに使うと事故を起こします。
原因はエンブレム取付とグラウンディング構造。
指(人体・対地電位の異なる導体)と絶縁された筐体金属はケース金属、基板との間にあらたな電気力線と電界を形成して結合する。
指に誘起しているのはその地域(関東50HZ・関西60HZ)の交流電位、つまり「ハムる」わけです。
それを消すために以下の対策をおこないました。
「Noise Hel」をこのように塗布した
ここで使用した「freedom ノイズヘル SP-D03ハイシールド塗料」はカーボン系の導電塗料とは異なり、この程度の距離では導通抵抗としては数Ωとなり、塗装で絶縁された2つのネジはケース金属と直流的に事実上一体化し、エンブレムのハムは完全に消えました。
2.マイクフロントの不安定な誘導ハムを消す
①マイクフロントを手で持った時のハムを消す。
導電塗料(Noise Hel)をこのように塗布し、乾燥させる。
②グリルボールを持った時のハムを消す
まずウィンドスクリーン内のスポンジを取り出しておきます。
(ヤスリカスでよごれない為)
内側のネジ部分をサンドペーパー(100均の品で十分)で擦ります。
おおむね、ネジ内側の円周で「地金」が見えてきたらOKです。
しっかりと地金が見えるようになればなお結構です。
ほぼ3分も擦れば十分でしょう。
まあ、58のグリルボールと交換すれば何の手間もいりませんが。
おっと これはいかん!
ここはGND系の要(カナメ)ネジ。
こんな黒塗装(絶縁物)ネジなんか使っちゃダメですヨ。
上に用意した普通のネジ(M2.6-8)に交換します、最後になっていますが本来最初にやるべき重要部分です。
以上でこの手当は終わりです。
マイクテストをおこなってみてください。
エンブレムに触れたりウィンドスクリーン部だけを手に持ったりしてハムのアリ・ナシはいかがでしょうか?
問題ナシだと思います。
ご案内
★対策は「何でそうするの?」を1つ1つご自分で理解しておこなってください。
そこを理解されず、「このサイトにあるから」、と何も考えずにマネすることはどんなにやっても決してうまくいきません。
★カンパニーで本数を扱う場合はぜひこの前編・後編両方の対策をお薦めします。
最後に
これらの問題を改善した状態ならば「希少な名機」と呼ばれるでしょう。
以上
★ 本記事の無断ネット盗用は犯罪です。
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fetⅡ、fetⅡi、fet3、LZⅡb など、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください (いまや貴重品、秋月のパナソニック WM-61Aとオリジナル・パーツで製作します)
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