1429 :「ビッグバンド」大規模野外PA(SR)を終えて | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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仕込み2割オペ8割 の世界 (AT運転者がマニュアル車を乗りこなす以上にコア

自らが表現者です。 わからないなら、いさぎ良く依頼をお断りし決して手をつけるべきではありません。

 

ちなみに筆者Shinは1991~2年からビッグバンドPAを始め、JAZZの生音が身体中に染みつくまで或るバントと寝食を共にするような関係のなかで議論もおこない、お互いに勉強しながらビッグバンドJAZZ音響の理想形を追求してきました。

そして行き着いた結果、今回の大規模野外ステージを無事成功させ、これを最後の現場としてPAの世界を卒業することにしました。

 

「なんとかなるさ」 でビッグバンドPAは絶対にやらないでください。

あなたの出すその音、誰にも求められていません。

 

ビッグバンドPA(SR)をやるなら勉強してからにしてください、不勉強は罪です。

「良い機材ならいいPAができる」というハードウェア信仰は何の役にも立ちません。

 

ビッグバンドJAZZ演奏に触れ、学ぶ以外に近道はない、他ジャンル同様の考えでは完全に 惑PA(SR)になり「ビッグバンドPA不要論」に拍車をかけるだけです。

 

 

昨年に続き「野外ビッグ・バンドイベント」の大規模PA(SR)を行いました。ひさしぶりの晴天にめぐまれ昨年の2倍以上、累計2万人を超える(主催者集計)観客を迎えて成功裏に終了させました。(2014年9月14日埼玉県吉川市内の駅脇広場)

 

※今回の写真はすべてi Phone のカメラで撮った点をご容赦ください。



沿線各駅もこんな様子

 

駅員さんまでが・・・

 


     昼間のステージ)


(ステージ下手のPAテントから見た観客) 正直ここまで多いとは予想していなかった。

向こうに見えるのは駅ですが、そこからここまで全部人で埋まって・・・

 



         (最終ステージ)

今年はオペレート(ミキシング)に集中することにして6時間以上に及ぶ長丁場のPA(SR)を安全かつ出音の魅力を引き出すことにウェイトをおいた。

 



(エンディング) これでいいのだ

(当日の入れ替わり累計:2万人を超えました)

 

 

 

1回目の昨年は BOSE-802Ⅱ(何とも古い)の2スタックをフロントにして3台のパワーAMPでまかない、このブログ読者のかたの手を借りながら全演奏をまかなった。

しかしセッティング時間は半端でなく、炎天下グッタリ疲れ果てたころちょうどリハの開始という殺人的スケジュール、それに野外で中・大規模カバーできるPAシステムではないし。

何事も起きなかったのが奇跡としか言いようがない。

    (昨年の同イベントの写真)

 

2014年ことしもまた主催者からの依頼がありましたが機材的にこの規模の対応はできない旨を説明、お断りして一見落着かに見えた。

 

ところが数週間後、ふたたび話が戻ってきた、完全な「野外ビッグバンドイベント」なので、難しい・・・・・と困りはてた主催者。

普通のPAならOKだけど複数の出演者間(全部がビッグバンド)特有の問題の調整やビッグバンドを得手とする業者が皆無だとのこと。

 

そこで、主催者からの依頼を受ける事にした。

今年はさらに規模が大きくなることを見越した機材とその仕込み、ステージの転換対応のみ一般PA業者に委ね、ステージ構成・進行全般とオペレーション(PAミキシング)は私、Shinが行うよう調整してイベントの実現が再度見えてきた。

 

【複数ビッグバンド出演の課題】

バンドごと個性が強く、PA側として「やれること・やれないこと」、代替アイデアの提示。

コンマスは居るがバンマス(マネージャー)はおらず非正式に決まっている場合が多い。

お互いにコミュニケーションの成り立つ人の見極めがキメ手、調整はこことの関係で行う。

 

事前打ち合わせは本番ではまず守られない、PA側の言い分もバンド側、主催者側の言い分もある。

良い演奏を実現するためには三者歩み寄りが必要。

 

複数バンドでは「転換」に時間はかけられない、それを前提にバンドに不満を持たせないブッツケ本番交渉はどうしても必要、それがイベントの成否を分ける。

 

 

【PA(SR)手法は音楽ジャンルによって激変する】

◎ビッグバンドの心は「アンサンブルの美しさ」にこそある。

 もちろんビッグバンドの音響に触れるチャンスはどこでも極めて少ないとおもわれます。

考え方はどちらかといえば「クラシック音楽」に近いが、暴れるときも、いわゆる「POPS系」のマト外れな音出しはバンドにも観客にも迷惑となり、それが引き金となって「ビッグバンドPA不要論」が沸き起こる。

 

しかし上から3番目の写真を見てほしい、写っている部分の2倍位の人で広場がうめ尽くされた状況で「生音」などせいぜい前にいる3~300人程度にしか届きません。 

 

しかし出音が「電気音」っぽくなる事は極端に嫌われる矛盾した世界。

それは「電気音響ナシ」で100%仕上がっている音楽だから当然です。

したがって演奏+楽器配置とマイキングの妙味が強く求められるわけです。

だから最良質なPA(SR)が不可欠なのです。

 

 

ビッグバンドPAは他ジャンル音楽のそれとはあきらかに異なります。

オンマイクにすればするほどPA音のまとまりが得にくく、ミキシングの難しさの反面、良い結果も出しにくくなります。

 

17の楽器から放つ演奏音にマイクをあて、演奏者も観客も満足できるSR(サウンド・レ・インフォースメント)を行うには余程の覚悟が必要ですから場数がモノを言います。


      (今回の基本配置図)

 

 



        (転換配置図)

 

転換配置図は「基本配置図」に対し、ステージの転換に際し変更する部分を明確に、タイムスケジュール、演奏バンド名、機材の移動・切り替え情報、それに対応するch-Noを入れ、スムースな転換を支援する。

 

 

 

【ビッグバンドPA(SR)の要点】

1.「俯瞰」 で聴いて良ければイイPA(SR)だ。

 

2.この音楽表現には、一般にはあたりまえの「サブロー」SPは有害かつ絶対に不要な機材です。

 

好ましくない「重低音」にはベースの目が光っている。

どうしても使うというなら、100HZ以下をカットし(「それじゃ意味ないよ」?、だから不要なんです、変な重低音を出したらベースからいきなりクレームが付く)その上の出音はコンマスの意見を尊重してください。

 

3.休憩時のホーンセクションには絶対立ち入り禁止。

そこは演奏者の聖域、うっかり身体が触れたら楽器スタンドでお休み中の楽器たちをなぎ倒してしまいます。NGマイクの交換もShinは演奏者にお願いしています。

どうしても・・・というときはコンマスとよく相談を。

 

4.本番が始まったらステージとの真剣勝負、しかし気持ちは極度にリラックスしているのがわかる。

 フェーダーを動かさないオペレーションは有り得ません、これを演奏者と一体になり、コンマスとはアイコンタクトでその魅力を引き出すことに徹する。

「自らが表現者になる」、ここが一般PAのセオリーとは大きく違います。

その事こそが実は「ビッグバンドPA(SR」のキモです。

 

 

詳細は下記お読みください。

 

 

 

 

 

(ホーンセクション) 

人間関係・セクションの人の和・信頼関係がそのまま音になる。

また配置にはセオリーがある。

 

!! TP(トランペット)の指向性を考えよう

おいしい音は60度まで広がっている、あえてマイクを減らしてややオフ気味にすることによってTP2・1及び3・4が電気音っぽくさせずに総合的に納得の音にした。

 

(TPは所属の日本音響家協会で今年実施した公開実験データあり)



TPのPA用、録音用の最良点を徹底的に探った(意外な結果が出ている)


 

!! TB(トロンボーン)はとかく薄くなりがちなのでレベルに注意してTP同様に楽器4本に2本のマイクで良く意識してカバーした。


 

!! SAX(5本が基本)ではベル至近距離(オン)で集音し、とくにSAXパート

のソリ=ソロの複数形(合奏)、そして金管との掛け合いやアンサンブルの美しさを表現するのはPAミキサーの腕・耳に負う部分が大きい。

 

クラリネット持ち替えの場合、ベル(筒先)をマイクにあてようとする奏者は案外多いですね。

「長さ方向の真ん中あたりがイイ音しますよ」と促すことを忘れない。

 

 

クラリネットは「閉管楽器」ですので開管楽器であるSAXとの持ち替えではマイクあてが異なります。

(昨年、TP同様に日本音響家協会の公開実験、ベストポイント探査データあり)・・・下写真)

cl のPA用、録音用の最良点を徹底的に探った。(これも意外な結果が出ている)

 

歴然たるこの違いはすぐ演奏者本人が分かる、ソロでもこの美味しさに演奏者は確実にハマっていたようだ。

スタンドはブームよりグースネックが適する。
 

!! ホーンセクションのソロ

合奏側でソロ優先の演奏を心がける。

ソロの演奏位置はSAXの前、ホーンセクションから離れた「センター」では「掛け合い」もやりにくく演奏は成り立ちにくい。

 

(リズムセクション)


!! ピアノ(電子ピアノを例にします)

ラインどりとマイク集音がありますが、「カブリ」を防ぐ意味ではラインです。

問題は「どんな音量バランスでFOHから出すか」。

・合奏の中では「聴こえるか聴こえないかの音量、たまにはっきり聴こえるフレーズがある程度が適切です。

フィーチャーやソロでは確実に浮き立たせ、主役に持ち上げる、それがミキサー(オペレーター)の役目です。

 

!! ギター

得てしてラインよりAMPにマイクをあてた音の方がイイ演奏になる場合が多い。

ラインのみだとフレット間を移動する指の「キュッ」キュッ」が気になる事がある

のでマイクとラインをミックスすると良い結果を得られやすい。

 

この楽器もピアノ同様に合奏の中に沈めることでは同じ運命にあるが、フィーチャーやソロはカッコ良く決めてあげることを忘れてはなりません。

 

!! ベース(ウッド・ベース、エレキ・ベース、アップライト・ベース)

いずれもベースAMPを用い演奏するがベースAMPが小さい場合はマイクどりは適さない、これもギター同様に集音する。

 

気をつけなくてはいけないのは:過度にPAで出す必要はなく、「重低音」などを狙うと演奏者やコンマスからクレームが付く。

 

80HZ以下はストンと落とす。卓で100HZで切っても良い、ここはビッグバンドJAZZのベースでは一歩も譲れない重要ポイントであります。

 

!! ドラムス

バンド全体の基準音量はここで決めていることに注意をはかる。

TOP2本のマイク(野外では57などダイナミック型)でほぼまかなえる。

C451は野外では避けたい。(悪天候では湿度によるノイズトラブルが確実に起こる)

 

バスドラム(Kick)は演奏の中で軽く「トントン」と聴こえる程度、それ以上は「やり過ぎ」、ベースの場合と同じです。

 

セッティングは「穴に突っ込む」などは論外、マイクをあてるならビーター・ポイントからやや外した鳴りをややオフ集音、卓側はPAD-ONで

 

配置はバスドラムの打点位置がTB隊と横一列並びになるところに合わせる。

 

!! パーカッション

通常、さほどマイクを意識する必要はないがソロなどがあれば2台のコンガの間に57など1本をややオフめにあて、PADを入れる、それ以上は必要ない。

大きい床置きが「コンガ」、股に挟んで演奏する小さい方が「ボンゴ」、語感とは逆になるので、良く間違えられます。

 

特に「ギロ」「クラベス」「マラカス」などには絶対にマイクはあてない。

ドラムTOPのマイクでカバーできるようドラムのまわりで演奏すれば、これで不思議にPAのバランスはとれる、脇役の楽器を主役同然に扱うことこそ音楽の破壊、本末転倒。

 

(ボーカル)

!! JAZZボーカルは他のジャンルと決定的に扱いが異なります。

・「リバーブ」を入れることはご法度、入れたら「シロウト!」と言われるだけ。

 

ボーカルが入る曲ではバンドの演奏音を普通下げるが、そうなっていない場合、ミキサーがフォローしてあげる。

①ユニティレベルの範囲でマスターレベルを3dB位下げる

②ユニティレベルの範囲でVo音量を3dB位上げる

③曲の進行を追い、Voのない部分では確実にバンド側を戻す。

 

※ ボーカルを意識した演奏慣れしたバンドではこの操作は不要。

 

(風対策)

野外ライブでは昼間、リハでは問題なく、夜の本番で「吹かれまくり」というのはザラにあります、そうならないように「吹かれ防止」は最初から手を打っておきます。

 

風  譜面が飛ばされる・・・・」はバンドさんにお任せして、「取ってくださ~い」に各セクションの外から応援の手渡しまでが限度。

マイクのウィンドスクリーンを忘れずに。

 

 

57には全部スポンジのウィンドスクリーンが安全弁になります。

他のマイクも同様です。

 

よほど強い風でない限り58は経験上問題なし。

 

                     以上


 

 

 

(おしらせ)

fet V、fetⅡ、fetⅡi、fet3など、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください (オリジナル・パーツで製作) 

 

 

ものづくりニッポンもっと元気出せ

 

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