0910: パッシブ型ダイレクトBOX( DI )の手作りと測定 | ShinさんのPA工作室

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※ないものねだりこそ開発の原点だ※ 
※すべてのマイクロホンは未だ発展途上のデバイスだ※

製作難易度 ★★


ダイレクトBOX( DI )は常に持ち歩く小物ですね、今回ご紹介するのはトランス式の「パッシブ型」です。これは1995年に4ケ作って以来ずっと使い続けて来ましたが、今回Doit'sご紹介アイテムに加えることにしました。

非常に単純なものです。


きわめて長期にわたる使用実績がありますので、自信を持ってご紹介出来ます。


電池のことを気にする必要もなく、使いたい時に使えるという点、そして想像以上にやわらかい音である事などパッシブ型の良さは捨てがたいものです。


アクティブ型では利得も期待できますがトランス式ではそれはなく、音質などほとんどの要素が使用トランスによって決まります。

トランス式DI は3~4,000円位から市販品がありますが優秀なものは3万円以上します、しかしそのトランスだけなら1万円程度です。

良いトランスをお持ちだったり作なさりたい方のための実装情報etc.としてこの記事がお役に立てば幸いです。


※記事中、周波数特性の実測データを添えておりますがST-75のトランスをお勧めするものではありません。

※また、音響機器の入力インピーダンス測定法もご紹介しておりますのでご活用ください



【各種ダイレクトBOXの実例】

http://www.otk.co.jp/index_category.php?bg=6364d3f0f495b6ab9dcf8d3b9925c6e0b&md=d1fe173d08e959397adf34b12449d77e88




ShinさんのいたずらPA工作室  外観写真


ケースはタカチ電気のプラスチックケース SW-100(W65×D100×H35)です



ShinさんのいたずらPA工作室  内部写真


1. 入力部:Phone×2 RCA×2がすべてパラになっています

2. トランスの固定は当時、液体ゴムを使用しましたが現在では電熱のホットボンドで固定すると良いでしょう。



【本器の特徴】


①シンプルに徹した内容とバッテリー・レスの気軽さ。

②使用トランスはDOK(電気音響)製 IPT-105です。(当時たまたま入手したものが高品質な為、複数製作した)

許容入力レベルは不明ですが、あらゆる楽器やライン受けに使用して問題を起こした事はありません。

④筐体は意図的にプラスチック製としています=この同一部品で金属筐体にした場合、意図しないGND回路の形成で「共通インピーダンス結合」によるノイズトラブルが容易に想像出来ます。

⑤GND系への配慮はきわめて大切、必要な範囲で1点アースをおこなっています。

⑥シールド線は全く使っていませんがピエゾPUの使用においても過去10数年ノイズトラブルは皆無です。

⑦徹底的に軽く、コンパクトかつ適正な大きさとしました。


⑧おまけ : 4個作製した中にVR付きもあり、それなりに便利である。(写真参照)





ShinさんのいたずらPA工作室 【左は本器の回路図です】


(a)「グラウンド・リフトスイッチ」はありませんが必要であればスイッチ1つ設けるのみです。

(b)PADやフィルター類は装備していませんが必要であれば回路の追加は簡単です。




【使用上の注意】

パッシブDIの入力インピーダンスは接続する卓の入力インピーダンスにより変動します。

(各メーカーの卓のXLR入力インピーダンス・・・メーカー発表スペックより)

Soundcraft        ・・・2KΩ

YAMAHA      ・・・3KΩor4KΩ

Mackey        ・・・2.5KΩ

ALLEN&HEATH       ・・・2KΩ

BEHRINGER       ・・・2.6KΩ

             (各メーカー・機種によって異なりますが、ほぼ値は似通っています)





楽器AMPなどの上に乗せたり、ACアダプタの隣や使用中のACケーブル近くで使うとDI内蔵のトランスで漏洩磁束を拾い、ハム・ノイズを出します。(これはトランス使用DIの宿命ですので、置き場所は選んでやります)



ShinさんのいたずらPA工作室  これがVR付きバージョン・・・色違いです (回路図参照)


※このタイプの製作は決しておすすめしませんが意外に便利です(自己責任でお願いいたします)



ShinさんのいたずらPA工作室  BOSS DI-1との大きさ比較 (体積比43%の小ささ)


使用目的によりアクティブ型とパッシブ型は使い分けても良いと思います




ShinさんのいたずらPA工作室 自作のお試しにSANSUIのST-75は入手しやすいです


現在500円で入手出来るこのトランスを使った場合の周波数特性はこの下の表にあります、トランスとしてのグレードは低く、やや低域の不足とトランス固有の鳴きが確認出来ますが一応使えます。


※むしろ音の色付け(カラーレーション)を積極的に利用してエフェクターとして使うのも一つの方向かもしれません、10数年程前のサンレコ誌にこのようなグッズが毎回紹介されていました。



※DI 用としては現在入手可能なジェンセン、LUNDAHL、タムラなど優秀なトランスの使用が第1条件ですので誤解なきよう。


http://buntrek.com/?mode=cate&cbid=49259&csid=3   JENSEN
http://www.tritech.tv/product/transformers.html      LUNDAHL

http://www.tamura-ss.co.jp/electronics/trance.html    タムラ   

それぞれ確認できます。



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【測定 1】



◎入力インピーダンスの測定

           測定法    : 抵抗置換法

           入力レベル : -10dB

           周波数    : 1000HZ

           SG      : トリオ AG-202

           レベルメータ : KIKUSUI MODEL 161D

           負荷      :抵抗負荷 (a)600Ω (b)1.2KΩ (c)2.5KΩ (d)5KΩ



【供試機】

DOK IPT-105トランス使用時のダイレクトBOX







【測定結果】



  XLR(平衡)側     :    Phone(不平衡)側

        

(a) 600Ω負荷時    :DIの入力インピーダンス値・・・・・・・10.5KΩ

(b) 1.2KΩ負荷時   :DIの入力インピーダンス値・・・・・・・29.0KΩ

(c) 2.5KΩ負荷時   :DIの入力インピーダンス値・・・・51.5KΩ

(d) 5KΩ負荷時     :DIの入力インピーダンス値・・・105.0KΩ



※前述の通り卓のXLR入力インピーダンスは2KΩ~数KΩですので(c)または(d)の条件が最も近くなります。



※測定法及び測定器の制約上、さらに精度を求める事は不可能ですが、かなり目安になると思います。





【結論】

一般的な卓のXLR入力に接続した場合

このDIの入力インピーダンスは数10KΩ~100KΩ位です。



【入力インピーダンスの測定方法】
ShinさんのいたずらPA工作室


・インピーダンス測定にはさまざまな手法がありますが、「抵抗置換法」は比較的簡単ですのでさまざまな低信号回路で応用出来ます。


・信号源インピーダンスが低い場合、上記A/B比を大きくとれない為、正確な測定値を得られません。

これを防ぐ為、任意の抵抗「R」をシリーズに入れ、見かけ上の信号源インピーダンスを高めております。


別の測定法=「2分の1電圧法(電圧降下法)でも測定値は全く同じでした。

   これは、上記測定回路でAの状態の時Rxをパラに入れ、レベルメータの指示電圧が半分(1/2)になるようにRxを可変し、その抵抗値を計る方法です。

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【測定 2】




◎周波数特性の測定

ShinさんのいたずらPA工作室  周波数特性 (600Ω抵抗負荷時の実測値)

①上段:DOK IPT-105使用時

②中段:SANSUI ST-75使用時

③アクティブ型DIであるBOSS DI-1


※いずれの場合も高域は可聴域をはるかに越えた周波数までほぼフラットである事がわかります。



【音質】

主観的ですがおおむね次の通りです。


BOSS DI-1        : スピード感と独特のくすみ感を併せ持つかつての定番


DOK IPT-105使用時  : 上品にまとめられたウェットな音(上手に聴こえ、味がある)


SANSUI ST-75使用時 : 低域がやや不足、固有の鳴きでトランスのグレードの低さがわかる



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【トランス式DIの裏ワザ】


 トランス式のDIは入出力の逆挿しによってトランスの巻数比に従った信号電圧を取り出すことが出来ますので、緊急的に『見かけ上の利得』を持つ「パッシブのプリアンプ」のような使用法のある事は案外忘れられています。


◎楽器ギター・ベースAMPで入力ジャックとマイクの間に接続して簡易PAが出来る。


※トランスに増幅作用はありませんのであくまでも「1次側と二次側の巻数比に従った信号電圧の上昇」を利用するという例です。


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【ボタン電話(ビジネスホン)の保留音送出装置誕生と、この関係】


1960年代、電電公社向け電話機メーカーに在職していたときの事です。会社で先輩と雑談中「オルゴール音を電気信号にしてAMPナシで『増幅』出来ないかなー」と変な事を言うではありませんか。 

「信号電圧は数Vほしい」 という贅沢なオマケまで付いた話ですが、その瞬間ひらめいたのはこの裏ワザです。


 その日の夕方、私の実験ベンチに先輩を案内して見てもらったのは電動オルゴールとカーボンマイクを一体にした箱、それに電源とステップUPトランスを接続した粗末なモノ、ちょっと触ったらバラバラになるような実験セットです。


レベルメーターの針は無負荷時ピークで数Vまで景気良くスイングしながらオルゴールを奏でていました。

先輩はそれを確認するなり私のひざを叩いて自分の席にすっ飛んで行きました。

カーボンマイクの成せるワザとは言え「パッシブのプリアンプ」?的単純思考の作品はすぐ製品へと。


※当時、家庭では黒電話にオルゴール入りの「受話器掛け」を取り付けたりしていましたが、事業所用ボタン電話(ビジネスホン)には「保留機能」がありましたが、あくまでも「無音」です。これでは相手側が電話を切ってしまうことが多く、問題になっていました。

 

これはまもなく電電公社向けの事業所用ボタン電話(ビジネスホン)の主装置(ME)内の保留音送出装置として、一般的に使われ始めました。


 (当初は「キンコン    キンコン    キンコン」という味気ないものでしたが、次機から「ウエストミンスターの鐘」バージョンになりました。


電磁ピックアップを有する「トランジスタ増幅式」を経て1チップLSIの「電子オルゴール」や「保留メロディ」へと進化して行きました。


当時、国の管理下にあった公衆回線「局線」や電話装置は「聖域」とされた時代に、オルゴールの保留音を電気信号として局線に送出した最初の1人として忘れられないエピソードです。


※当時、パテント関係がどうだったのかは全く興味もなく、今でも知りません。


ご注意! :現在の法律でも勝手な音源を局線に送出することは出来ない事、また送出レベルなど一定の技術条件を満たし、認定を受けた機器以外の接続は禁止されております(電気通信事業法)

                                                         以上                                                   





【おことわり】

★ここで公開している回路・写真・説明文などはアマチュアの方、音響業界の方でハンドメイドまたは試験評価なさる場合の参考として考えております。



★製作物・加工物の性能・機能・安全性などはあくまでも製作される方の責任に帰し、当方(Shin)ではその一切を負いかねます。


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                                   管理人(Shin)


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