もう1週間ほど前の記事になりますが。

こんな記事を見つけました。

 

「紀州のドン・ファンの遺言」

を親族が認めないワケ、

“自筆遺言書”に潜むリスクとは?

(ダイヤモンドオンライン

 2024.5.14 12:00)

↑は5ページで結構長いです。

 

ヤフーニュースでも出ていました。

こちらは3ページでコメント付きです。

 

※ コメントの中に、「事実誤認が多い記事で

呆れてしまいました。」というのがありましたが、

(ove********5/15(水) 15:22)

すみませんがこの辺の精査は

しておりませんのであしからず。

 

一時期と違い、この事件も取り上げられなく

なっていましたが、最近、別件事件で、

裁判が始まったようで、

多少取り上げられるようになったようです。

 

そういえば、私も昔、何か書いた記憶が……。

検索したらこれが出てきました↓

 

これは、遺言の話というより、

会社法の方面から主に書いたものですが。

 

さて、今回の記事、概ねごもっともですが、

少々気になったこともあります。

 

1つはこの辺。

 

>寄付先とされた田辺市は、

裁判所で遺言書の「検認」という

手続きを進め、この遺言書は

「有効である」との判断を得ている。


>しかし、野崎氏の兄弟ら親族は、

この遺言書は無効であるとし、

訴訟を提起した。

「遺言無効確認訴訟」である。


>では、なぜ検認によって認められた

遺言書を巡り、親族は訴訟に……

 

まあ、税理士さんは相続税を含む

税務の専門家ではあるものの、

相続の民事部分の専門家ではないので、

仕方ない部分もありますが、

「検認=遺言有効」とはなりません。

 

というか、それで有効となるのなら、

「遺言無効確認訴訟」も即刻敗訴でしょう。

 

検認というのは、簡単に言えば、

「遺言は家庭裁判所で開封します」

という制度です。

 

ですので、勝手に開封してはダメです。

もっとも、そういう決まりを知らずに

開封してしまった場合や、

もともと封がされていなかった

あるいは封筒に入っていなかった

という場合もありますが、

その場合でも、その状態で検認を受けます。

 

検認の時には相続人全員に

期日の通知が行きます。

 

ですので、相続人全員が

確定できるだけの戸籍が必要で、

結局遺言がない場合と同じだけの

戸籍を集める必要があります。

(検認に参加義務はありませんが。)

 

なお、公正証書遺言は、

検認不要とされていますので、

その点でも有利です。

 

なお、自筆証書遺言でも法務局保管型は、

やはり検認不要とされていますが、

遺言者が亡くなって遺言書原本に代わる

法務局の証明書をもらう際には、法務局が

やはり相続人全員に通知を出すそうで、

そのための「戸籍」が必要なので厄介です。

 

で、検認期日には基本的に開封して、

その状態等を調書に記して、

検認したことを証する書類を

家裁が添付してくれます。

(発見時の状態や、筆跡・押印について

質問されることはありますが。)

 

一応、検認をしないと、

以後の各種手続ができません。

(私が受験時代は検認無しでも

登記ができていましたが、

その後変更されました。)

 

ということで、中身は見ないので、

仮に他人が書いた偽造であったり、

日付や押印が抜けていて無効な遺言でも

実は検認はされます。

 

まあこの程度の制度なので、

「検認された=有効」ではないわけで、

どうしても怪しい場合は、

訴訟で争うことは可能なのです。

 

さて、検認の話が長くなりましたが、

もう1つ指摘しておきます。

 

>仮に田辺市への財産の全額遺贈が

決定しても、配偶者の立場であれば

遺留分を請求できる。

だが、兄弟姉妹には遺留分はなく、

財産を相続することができないのだ。

>しかし、遺言書が無効ならば、

法定相続分に沿って相続手続きが

行われるため、配偶者は4分の3、

そして兄弟姉妹は4分の1を受け取れる。

 

この辺は、前記の私の過去ブログでも

書いたことで一応その通りです。

 

ただし、兄弟姉妹の思惑は、実は

それだけではないでしょう……。

 

もし、この妻が、本当にドンファンの

殺害犯人であったとしたら……。

 

実は「相続欠格」という規定があります。

これは民法第891条に規定されていますので、

詳しく知りたい方はこの辺をご覧ください。

 

簡単に申せば、

・遺言者や相続人を殺した/殺そうとした

(刑事裁判で有罪が確定することが必要)

遺言に対して不正をした

などがあると、さすがにこういう人に

相続させるのはまずい、ということで、

相続人でなくなってしまいます。

 

で、逮捕されている妻が、

本当に犯人で、(そして、

有罪判決が確定するかどうかは

私には分かりませんが、)

もしもそうなった場合には、

妻は相続できなくなるので、

(もちろん、遺言が無効と言う前提ですが)

兄弟姉妹は、4分の1ではなくて、

全てを相続できる、ということになります。

 

報道で知る限りですが、

「遺言は無効で、妻は有罪」

となる可能性はそれなりにある

ようには思えるので、

そうであればなおさら、

無効確認訴訟を起こすことは

ごもっともだと思います。

 

なお、紹介記事の最後に、

遺言は簡単に書いてしまうのではなく、

専門家に相談した方が良い

(税理士・弁護士とあって

司法書士が抜けている気もしますが)

というのは、仕事を増やそうとかの

下心ではなくて、私もまったく同感です。

 

もし遺言を作るなら、しっかり作って、

あいまいな記載を避け、関係者間での紛争が

起きないようにすべきです。

 

テキトーに遺言を作ると、少なくしか

もらえない人が不満に思いますから、

不備を突いてきます。

 

また、表現があいまいだと、

手続先の法務局や銀行などが

「相続人全員の上申書を

印鑑証明書付で出してください」

という大変なことになります。

(そうすると戸籍も必要で)

 

それなら遺言がない方がむしろ

円滑に進んだかもしれません。

 

遺言がある相続手続は1割とも

言われていますが、私のような

街の司法書士としては

もっと少ない気もします……。

それでも大抵は話し合いでまとまるものです。

(もっともまとまらない場合は

 弁護士に行ってしまいますが。)

 

遺言があった方が絶対に良いケースは、

1 相続人間が険悪

2 財産が多い

3 相続人の中にこういう人がいる……

 認知症・行方不明・海外在住・

 外国籍(日本国籍離脱)……

 ……協議ができない/困難です。

4 一人っ子で子供がいない

(配偶者がいない/先に死別となると、

 相続人不存在で国庫帰属に。)

などで、こういう場合は、

しっかり遺言を作った方が良いです。

 

 

おまけ。

先日、洗足学園に行った際、

こんな自動芝刈り機が、動いていました。

子供が喜んで、追っかけていました。

(可愛いお顔だったのですが、

 やはり一応ぼかしておきます。)

 

 

 

 


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