週刊誌記事のネット紹介のようです。
父の遺言書には「長女に任せます」、
弁護士が無効と判断したワケ
※週刊ポスト2020年3月13日号
https://www.moneypost.jp/637317
全文は引用できないので、
例によって、一部だけ引用して、
コメントしていきます。
せっかく書いてもらった
遺言書が「無効」になるケースがある。
⇒はい、自筆証書遺言で
よく起きますが、少なくとも、
日付・押印は必須です。
1年前に父が亡くなり、
遺言書を開けてみると
『長女に任せます』とだけしか
書かれていなかった。
⇒こういう「内容の不備」も
一般の方が書くと結構あります。
大事なのは、法務局(不動産)、
預貯金等(金融機関等)、
相続の手続をする機関で、
問題なく手続ができるような
内容にする必要があります。
よくあるのは、
「自宅は○○に……」だと、
法務局はどの不動産が
自宅かどうかわかりません。
弁護士には、遺産分割協議を
長女に任せたのか、
全財産を託したという意味なのか
判断がつかないので、
遺言書は無効だと言われた。
「遺言書では『〇〇に託します』
『〇〇に任せます』といった
曖昧な文言は無効になります。」
よく遺言の書籍やパンフレットに、
これらは「悪い例」として出ています。
ただ、「悪い例」が直ちに
無効となるかというと、
実はそうでもありません。
法律実務家には有名な
最高裁の判例があります。
(昭和58年3月18日
最高裁判所第二小法廷)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=66874
「遺言の解釈にあたつては、
遺言書の文言を形式的に
判断するだけでなく、遺言者の
真意を探究すべきものであり、
遺言書の特定の条項を
解釈するにあたつても、当該条項と
遺言書の全記載との関連、
遺言書作成当時の事情及び
遺言者の置かれていた状況
などを考慮して当該条項の趣旨を
確定すべきである。」
なお、全文も読めます(PDFです)。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/874/066874_hanrei.pdf
前述の「自宅」の例では、
相続人全員が、自宅について
認識が一致している場合なら、
その旨の上申書を作成すれば、
登記することができます。
(全員の印鑑証明書添付要)
ただ、相続人間で解釈の違い
があれば、結局、裁判を
やる必要があるわけで、
裁判の多大の費用と時間、
がかかり、それに、そもそも、
裁判で勝てる保証もないわけです。
それなら、「遺言にお金を
かけておいた方が得だった」
となることは多いのです。
(だから私に仕事をくれという
趣旨ではありませんよ。)
「他にも『〇月吉日』と日付を
書かない人は意外と多いですが、
『令和〇年〇月〇日』まで
書かなければ有効とみなされません」
⇒一発アウトの典型です。
「吉日」って響きは良いのですが、
日付を特定できないので無効です。
ただ、日付を特定できれば
良いので、西暦でも良いし、
「令和2年3月第2火曜日」、
「西暦2020年春分の日」
「皇紀2680年の誕生日」
などは、特定可能なので有効です。
(ただし、特定可能でも、
あまり奇をてらったことは
しない方が良いです。
「お彼岸」は春と秋がありますよ。
「満月」は2回ある月や、
1回も無い月もあります。)
なぜ日付を重要視しているか、
といえば、1つには、抵触する
遺言(や死因贈与)が
複数ある時は、後の日付のものが
有効とされるからです。
ただ、たとえ遺言が1通でも、
法律条文に明文規定があるので、
日付がないものは無効扱いです。
それは、認知症等で、遺言能力が
問題となることもあり、
その場合も、日付は手掛かりに
なるからだと思います。
ミスを防ぎたいが、遺言書の書き方を
一から勉強するのはハードルが高い。
そこで、専門家に確認して
もらう方法がある。
⇒どうしてもお金を節約したい方は、
遺言の本を買いましょう。
それもケチりたい人は、
図書館で借りましょう。
(いやこれ、本当に、電話相談で
言ったことがありまして。。。)
「遺言書には、大きく分けて
本人が自ら記す『自筆証書遺言』と、
公証役場で作成する
『公正証書遺言』がある。
後者は弁護士などの公証人に
頼むためミスを防ぎやすいが、
数万~10万円程度の費用がかかる。
⇒ の部分は誤りです。
弁護士≠公証人です。
ただ、公証人試験を受けて、
公証人になった弁護士は
いるのかもしれません。
(司法書士からなった人
なら知っています。)
ですが、最も多いのは、
試験組ではなく、
裁判官・検察官のOBです。
(これと混同しているのではないか?)
しかも、地位が高かった方ほど、
一等地にある利用者が多い(=儲かる)
公証役場に行けたりして……。
これ、読売新聞が以前、
記事にしていました。
ざっと検索したらこの辺……。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20190525-OYT1T50085/
https://www.yomiuri.co.jp/national/20190527-OYT1T50082/
http://polestar.0510.main.jp/?eid=876976
自筆証書遺言は、今年7月から
法務局で保管してもらえる
制度が始まります。
これにより、法務局の窓口で
内容の不備を確認してもらえます。
⇒これもまだ始まっていない
制度であることと、
不備と言っても明白なものと
そうではないものがあるわけで、
おそらく明白なもの以外は、
遺言者自らが、相談しない限り、
指摘されないのではないかと思います。
(うかつに直させると、法務局自身が
相続紛争に巻き込まれかねませんし。)
費用は自治体によって異なるが、
数千円の手数料で済む見込みです。
⇒預かるのは法務局
(国(法務省)の機関)で、
自治体ではありません。
また、費用についても、
噂は色々ありますが、
まだ公表されておりません。
企画は良いとは思いますが、
特に後半、ミスが多いのは、
ちょっと気になりました。
残念です。