今回も、新元号に関する話題です。

 

1 新元号使った社名に変更する企業も

 

昨日のNHKニュースで聞きまして、ネットで調べました。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190401/k10011869431000.html

 

著作権もあるので、全文転載は控えますが、

一部引用しますと……。

 

「この会社は、中小企業や商工会議所向けの経営支援を行っていますが、改元の節目を迎えてさらに会社を成長させたいとして、先週、新元号を使った社名に変更することを決めたということです。」

「東京 渋谷区にあるこの会社の事務所では、社員たちが取引先に新しい社名を電話で連絡したりしていて、午後にはさいたま地方法務局に社名変更についての書類を提出し受理されたということです。」

 

司法書士的に気になるのは、

「先週……決めた」というところです。

 

会社名のことを、会社の登記では「商号」と言いますが。

これは定款(ていかん)という、

いわば会社の最高規則で決めなければなりません。

 

そして、その定款を変更するには、株主総会を開いて、

そこで承認をもらわないといけないわけです。

(招集手続とか決議要件とか色々ありますが、

そこはややこしくなるので省略します。)

 

そうなると、先週に、株主総会を開いて、

変更後の会社名を「令和コンサルティング」にすると、

決議すればよいわけですが、ただ、問題は、

先週の段階では、「令和」になることは分からないですよね。

(超能力で知ったとか、スパイを使って知ったというのは、

ここでは考えないことにします。)

 

そうすると、例えば、

 

(1)「『○○コンサルティング』と変更し、

○○の部分には、今年4月1日に発表される新元号を入れる」

(2)「商号変更の効力は新元号が公布された時に生ずる」

 

みたいな決議をするのかなと思いますが、

(2)のような条件または期限付き決議は問題ありませんが、

(1)の方が司法書士としては若干気になります。

もし、私が受けていたとしたら、ちょっと怖い気がします。

 

なお、ニュースでは「受理された」とありますが、

これは、申請書を受け取ったという趣旨と思うので、

これから、議事録の記載方法を含めて、審査され、

この登記申請を受理する(=登記される)か、

申請を却下するか、が判断されることになろうかと思います。

(おそらく数日~2週間程度かかると思います。)

 

ただ、小さな会社の場合、お父さんが社長、

家族が取締役で、株主も同様

(または社長が全株式を持っている)

ということも多いです。

 

そうであれば、株主全員が集まれば、

招集手続不要で、株主総会を開けるので、

11時40分頃のニュースの直後に、

株主総会を開いて、あらかじめ書類も新元号以外のところは

作っておけば、午後の申請に十分間に合います。

このケースでは、受理されないことはないでしょう。

 

ですが、ニュースでは、「先週」と言っていたので、

家族経営であれば、下打ち合わせ的に先週合意しておいて、

新元号発表後に再度総会を開いたのかもしれませんが、

そうでなければ、議事録の記載方法をどうするかとか、

登記が間違いなく受理されるのか、

ちょっと悩ましい気がします。

 

なお、議事録の決議が有効と考えれば

(私は無効とは言えないと思いますが…

 こういう決議をしてはいけないという法律はないので)、

議事録の○○のところはどうするかですが、

それは、登記委任状に(本人申請なら申請書にでも)、

「平成31年4月1日に新元号が『令和』と公布されたので、

商号を令和コンサルティングとする商号変更が

平成31年4月1日発効した」

みたいに書いて、上記のような議事録を添付すれば、

問題はないと思います。

(あるいは、議事録の余白に、代表取締役が

そういう記載(奥書き)をするでも、多分大丈夫か?)

 

もう1つの問題は、登記は基本、「早い者勝ち」なんです。

ただ、昔は、市区町村内に同一または類似の商号があると、

受理されませんでしたが、

(会社の目的(会社のやる事業が列挙されている)が
 全く別の場合は事業が被らないので受理されました…)、

現在は条件が緩和されて、商号と本店(=会社の住所地)が、

全く同一でなければ、後の登記も受理されます。

(例えば、同じマンションでも、

 マンションの部屋番号が違えば大丈夫)

 

ただ、登記は受理されても、「不正競争防止法」という

別の法律があって、もしも、

紛らわしい商号を使って、もとから営業している会社の

営業妨害したということになると、

内容証明が来たり裁判を起こされたりで、

商号の変更を求められる場合があります。

 

その場合、登記の先後で100%決まるとも言えませんが、

重要な要素になることは間違いありません。

そういう意味では、やはり早く登記を申請することも

重要となります。

 

 

2 新元号使った学校名に変更も?

 

https://twitter.com/thu_nyushi/status/1112559191426658305

「「帝京令和大学」に改名??

このたび、帝京平成大学は 帝京令和大学へとなりました👀❗️

 

詳しくはこちら↓

https://www.j-cast.com/2019/04/01354122.html?utm_source=mail

 

すみません、エープリルフールは昨日で終わっていましたね。

 

ただ、まじめな話をしますと、学校法人や○○法人の場合、

多くは定款(または寄附行為・規則と呼ぶ場合も)は、

法人だけで決められず、所轄官庁の許認可を

受けなければいけないことも多いです。

そうなると、結構時間もかかるので、

4月1日に変更するのは無理ということになります。

 

(なお、分かりやすさを優先したので、

多少不正確な表現もあります。)

 

以上、まじめな話と、どうでもよい話でした。

 

【追記】

新元号と同じ社名、初確認 本店は長崎市、1日設立

https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E6%96%B0%E5%85%83%E5%8F%B7%E3%81%A8%E5%90%8C%E3%81%98%E7%A4%BE%E5%90%8D%E3%80%81%E5%88%9D%E7%A2%BA%E8%AA%8D-%E6%9C%AC%E5%BA%97%E3%81%AF%E9%95%B7%E5%B4%8E%E5%B8%82%E3%80%811%E6%97%A5%E8%A8%AD%E7%AB%8B/ar-BBVzhZu

 

(一部引用)

「東京商工リサーチは3日、新元号「令和」と同じ漢字表記の会社名を、法人登記が完了し登記簿が閲覧可能となったもので初めて確認したと発表した。商号は「令和株式会社」。」

 

株式会社の設立の場合は、もう1つハードルが上がります。

それは、定款を当事者(発起人)で作るだけではだめで、

公証人の認証をもらう手続きが必要だからです。

 

公証人の認証をもらう手続きは、結構厳格で、

事前に会社名空欄のまま認証をもらって、

4月1日の公布を待って空欄を補充する

ようなことはできません。

 

そうなると、公証人さんと事前打ち合わせしておいて、

かつ定款受領の予約もしておいて、

新元号の発表と同時に、作成した定款を

公証役場に送信(あるいは持ち込み)して、認証をもらい、

そしてその日のうちに法務局に登記申請する、

ということで、結構慌ただしい作業になります。

お疲れ様でした。。。

 

 


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