日曜日の相談会も、結構寒かったですが、無事終わり、

その後、残務に追われ、更新できないでおりました。

 

さて、一般の方には御存知ない話ですが、

司法書士会員専用の電子会議室(掲示板)というのがあって、

私は、司法書士会連合会(全国の司法書士が対象)のものと、

神奈川会のものの、2つの掲示板を利用しております。

業務のこと、その他のことなど、様々の投稿があります。

 

ただし、これは司法書士会員限定ということなので、

個々の情報を司法書士以外の方に公開することはできません。

 

ですが、私自身の投稿であれば、

それは私の著作物ですから、私が良いと思えば、

こちらなどにも書くことができます。

 

私が分からないことをそれらに質問して、

詳しい方や諸先輩から御教示を仰ぐ場合もありますし、

不肖私が、他の同職の質問に回答する場合もあります。

 

決して私は、それほど経験豊富というわけではありませんが、

ただ、同業者の中でも割と理屈っぽい方らしくて、

私見を申し上げるだけながら、回答側に回ることも多いのです。

(必ずしも、的確な答えを常に書いているわけでもありませんが……。)

 

それらについても、ブログネタとして、

内容がブログにふさわしいものであれば、

紹介してみようかなと思います。

なお、他の方の「質問投稿」については、

上記の理由で転載できませんので、

話が通じるように、若干の補筆や修正を施しています。

(なんでそんな論点にも触れるの?とお考えの場合は、

そこに触れた御意見があったとお考えください。)

 

と、前置きが長くなりましたが、今回こんなことを書いてきました。

 

 

相続の登記原因日付(死亡日)を誤った場合

(更正登記は?)

 

はじめに

相続登記申請において、もし、申請書に相続の原因日付

(=前所有者の死亡日)を誤記してしまい、

しかも、法務局も見落として、

そのまま登記されてしまった場合どうなるか?という設例です。

(もちろん、司法書士も、法務局も、

ミスをしてはいけないのはもちろんなのですが、

やはり人間のやることなのです

……時に色んなミスが出てしまうわけです。)

これは、あまり議論されていない気がするので、

取り上げてみました。

 

まず、前登記名義人B、現登記名義人をAとします。
そして、他に、C・DというBの相続人がいるという仮定で進めます。
(また、条文は末尾に紹介しました。)


1 単独申請登記の更正登記は常に単独申請か?
まず、63条2項という、相続登記の単独申請を認めた条文が、
相続登記の更正登記にも当然適用されるか、ですが、
これについては私も、否定的です。

なぜなら、例えば、A単有を、AC共有にする更正登記は、
権利者C,義務者Aの共同申請となるからです。

なお、AC共有と登記されたものを、A単有にするには、
権利者A、義務者Cの共同申請です。

つまり、更正すべき登記が単独申請であっても、
その更正登記が共同申請となる余地は、十分あり得るわけです。

2 相続登記の共同申請更正登記で、

前登記名義人の全相続人の関与はあるか?
しかし、この1で注目すべきは、

遺産分割協議等で取得しないとされたDは、
自身は登記名義人になったことはないので、
登記名義人であることが前提である登記義務者とは

なり得ません(2条13号・11号)。
もし、義務者である、というなら「識別情報はどうなるの?」

という話になります。

また、前登記名義人Bを義務者と考え、その相続人として、
全相続人が「B相続人義務者D」のような形になると考えて、
義務者(の1人)になるとも、やはり扱われてはおりません。

ここは重要と考えます。

3 共同申請登記の更正登記の場合は?
この点、売買や贈与のような共同申請で

BからAが取得した場合を考えると、
AC共有→A単有、あるいは、A単有→AC共有、とも、
Bも義務者になるわけです。
この点、所(共)有者の変動を伴う相続登記の更正登記とは、
明らかに扱いを異にしています。

それは、売買等では、前登記名義人Bは、
完全に登記義務を履行していない、と考えるからです。

一方、2で考えたように、相続登記の場合であれば、
亡Bはもちろん、亡B相続人も義務者として関与しませんから、
登記義務の履行が完全か否かは問題とならないはずです。

つまり、相続登記では、対立観念たる義務者が不存在なので、
申請書では権利者とは呼ばず、相続人と記しますが、
しかし、63条2項にも「登記権利者が単独で申請」

と明記されていますし、実質的にも、

申請人たる相続人は、2条12号に完全に該当するわけで、
登記権利者の単独申請と考えられるべきものです。

4 共同申請登記の原因日付の更正の扱いは?
さて、売買等での登記に原因日付に誤りがあり、更正する場合は、
BもAも、権利に利益も不利益も生じませんが、
更正すべき対象の登記において、申請行為が不完全ということで、
この場合でも、更正すべき登記と同様、
権利者A、義務者Bという扱いがなされています。

(余談ですが、本件に関して検索してみたところ、
抵当権の金銭消費貸借(=お金の貸し借り)契約等の

日付更正につき、興味深い指摘があったので、

御了解頂いていませんが、公開情報なので、

リンクだけ御紹介します。)
https://ameblo.jp/kikuringworld/entry-11857145030.html

5 結論
以上のように考えると、相続登記は、2や3後段で述べた通り、
いわば登記権利者のみの単独申請であり、
義務者が不在であることは明らかです。

そして、相続登記に関して、

所有者等の持分に変動がある更正登記でも、
2で論じたとおり、Bやその相続人が

義務者として関与する扱いはありません。

したがって、原因日付の更正という本件更正登記でも、
義務者は不在であり、権利者たるAの単独申請によるべきで、
CDと言った、登記名義人でない相続人はもちろん、
Aも、亡Bの承継者として義務者となることも無いと考えます。
4の扱いから考えて、更正すべき相続登記の申請人が、
権利者的に単独申請すれば、十分のはずです。

また、ACDが、66条の利害関係人でないことも明らかで、
印鑑証明書付の承諾書の添付という議論も出て来ないはずです。


(なお、以上はあくまでも私見です!)

 

 

(参考)不動産登記法関係条文
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、
それぞれ当該各号に定めるところによる。
十一 登記名義人 登記記録の権利部に、次条各号に掲げる権利について
 権利者として記録されている者をいう。
十二 登記権利者 権利に関する登記をすることにより、登記上、
 直接に利益を受ける者をいい、間接に利益を受ける者を除く。
十三 登記義務者 権利に関する登記をすることにより、登記上、
 直接に不利益を受ける登記名義人をいい、間接に不利益を受ける登記名義人を除く。

(共同申請)
第六十条 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、
登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。

第六十三条
2 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、
登記権利者が単独で申請することができる。

第六十六条 権利の変更の登記又は更正の登記は、
登記上の利害関係を有する第三者
(権利の変更の登記又は更正の登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。
以下この条において同じ。)の承諾がある場合
及び当該第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる。

 

 

 


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