今回も(?)、リブログ記事ですが、
今回は、法律問題です。
しかも、最近、自民総裁選などでも
話題になっている「選択的夫婦別姓」
についてです。
元記事↓
別ウィンドウでは↓
上記の記事にコメントしたものに
若干補筆したものが本稿となります。
これについては、様々なご意見が
あることは承知しておりますが、
私としては否定的です。
実は、リブログ元記事の筆者さん
(作曲家の先生です)も、
元記事を書かれた段階では、
「選択的なら良いのでは」
というお考えで、実はそのように
考えていらっしゃる方、とても多いです。
ただ、私のコメントを読んで頂いて、
「なるほど」とおっしゃって頂けました。
つまり、派生する多くの問題が
存在することには気付いていらっしゃらずに
感覚的に「選択したい人だけ選択すれば」
と思っていらっしゃる方が多いと思います。
さて、前置きはこのくらいにして、
以下本論となります。
1 選択肢が2択から3択になるが、
一層揉めることは無いだろうか?
まず、「選択的」の場合、
「(別姓を)選択するかどうか」を
決めなければなりません。
現行では「夫の姓」「妻の姓」の2択ですが、
さらに「別姓」が加わり3択となります。
選択肢が増えることは一見良いようですが、
これまでより両当事者の意見が
食い違うことも多くなるのでは
ないでしょうか?
2 別姓を選択すると、さらに子の姓も
選択しないといけないし、
親と子の姓が不一致になる
1で「別姓」を選択した場合、
子は親のどちらかと、必ず別姓と
なるがこれは良いのでしょうか?
そして、子の姓はどちらの親の姓に
するのか、揉めないでしょうか?
また、子が2人以上の場合は、
1)子はすべて同一姓とする制度とするのか、
2)子ごとに姓を決定できるようにするのか?
も考えないといけません。
そして、1)の場合は、子と姓の違う親だけ、
家族内で唯一別の姓となってしまいます。
次に、2)子ごとに姓を決定する場合、
兄弟間で別姓となるわけですが
それで良いのでしょうか?
また、親としてはそれで良いとしても、
一旦親が決めた姓を、子が嫌う場合
(「別親/兄弟と同一性にしたい」場合)、
子は姓を変えられることとするのか?
(親の同意は必要?、成人になってから?
いつから?いつまで?)
で、選択的夫婦別姓の推進論者は
「自分の姓が嫌なら成人になって変えればよい」
という意見の方が多いようです。
ただ、そもそも、「選択籍夫婦別姓」は
「姓を変えると不具合が多い」から
そうして欲しいと言っているわけで、
そうなると、「姓を変える不具合」を
子に押し付けてよいのですか?
という話も出てきます。
そして、子は「姓を変えたい」
と思っても、親が反対するかもしれません。
また、子であっても、当然、同級生や
先輩後輩等の子の社会の
付き合いがあるわけですし、
さらに、卒業証書や卒業証明書、
成績証明書等も、当時の姓で
記載されるでしょうから、
「子の姓の変更は大抵社会進出前だから」
と簡単には割り切れません。
今までは、「姓が変わりました」
というのは、親が離婚して、
当初名乗っていた姓を
別の親の姓に変える場合に
起きていました。
ただ、これについても、
卒業~進学のタイミングなどで、
相当慎重に考えた上なされることが
多いわけで、多感な時期でもあり、
それほど簡単なことではありません。
3 戸籍制度をどうするか?
現行の戸籍は、筆頭者と同姓を
前提に構成されています。
ですので、別姓を導入しようとすると……
1)現行のように同姓者のみの戸籍とし、
別姓者は夫婦や親子であっても別戸籍とする
2)夫婦や未婚の子は
現行どおり同一の戸籍として、
別姓者はその旨の注記をする
3)欧米や韓国のように戸籍が無い
国にならい廃止をする
(実は、別姓推進者はここに持って
いきたい方が多いとも聞きます。)
まずは、今の戸籍は電子化されているので、
この改変により莫大な費用が
かかることが予想されます。
次に、戸籍のない国では、
「出生/婚姻/死亡」の届出による
「出生/婚姻/死亡証明書」
で手続することになります。
(外国人の相続手続では、とりあえず
これらを集めてもらいます。)
ただ、これらを集めても
「相続人全員を確定」
させることはできません。
被相続人(亡くなった方)の
証明書を見ても、自分の子の
記載はないからです。
また、子の証明書には、
親の記載はあっても、
他に親を共通とする子がいるかどうかは
確認できません。
ですので、欧米では相続手続は、
遺言が無い場合は、
裁判所の管理下に置かれ、
時間もかかりますし、
弁護士費用等も多額になります。
したがってこれを避けるために、
遺言等*が必須となり、
したがって遺言も普及しているわけですが、
遺言はあいまいな表現をすると
無効になったり、解釈をめぐって
紛争になったりしますから、
紛争防止のため法律家を介入させると、
これにも費用がかかります。
(*国によっては遺言だけでも足りず、
他の準備をすることが
必要な場合もあります。)
日本では戸籍を集めることで
(これはこれで大変ですが)、
相続人全員を確定できるので、
争いが無ければ、裁判所や弁護士を
関与させる必要はありません。
4 自民総裁選での議論について
これは、今総裁選に立候補している
高市さんが、総務大臣時代に
実現化していったことですが、
要は戸籍上は同姓でも、
特に働く女性について、
旧姓を使用できるようにすれば、
不具合はないわけで、例えば、
登記制度でも旧姓の表記が
できるようになりましたし、
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00608.html
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00085.html
士業者登録も旧姓でできます。
https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/jyuuten_houshin/sidai/pdf/jyu09-1-1.pdf
銀行口座やクレカなども、
まだ小規模業者は認めていない
ところもありますが、
金融庁も通達など出しています。
https://www.fsa.go.jp/common/ronten/202202/08.pdf
https://www.fsa.go.jp/news/r4/ginkou/20220906/01.pdf
学術論文も旧姓で出せるようになっています。
この辺、なぜか突然「別姓」を
言い出した小泉レジ袋氏は、
古い資料を基に発言したようで、
「いや、それ、今は違いますよ」
と批判を受けています。
(なお、私は自民党員ではないので、
総裁選の選挙権はありません。念のため。)
5 結論:立法事実があるのか?
以上のように、立法事実
(法改正を必要とする事実)が
乏しい上に、「選択的」とした
場合に生じる様々な問題について、
ほとんど知られていないし
また議論もされておりません。
もちろん、旧姓を使える制度に
ついては、まだ不十分な点もあります。
ただ、昔に比べると、
格段に改善されておりますし、
今後も一層改善されるものと思います。
また、「別姓」を選択しないと
これらの不具合から解放されない、
というのも困るわけで、
同姓を選択した方も困らないように
する必要があります。
この観点からも、旧姓利用ができるよう
今後も進んでいくべきですし、
そのはずです。
以上私が「選択的夫婦別姓」には
弊害が多いと考える理由でした。