信貴山、奈良県 | 日本の歴史と日本人のルーツ

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信貴山朝護孫子寺

信貴山

信貴山下駅からケーブカー跡を望む

左: 信貴山朝護孫子寺、右手: 近鉄信貴山下駅


参考

【関西の坂】(3)ケーブルカーの廃線跡は「心臓破り」の通学路

産経ニュース(2019.9.25、参考)

信貴山に向かって延びる一直線の坂。かつて運行していたケーブルカーの廃線跡だ=奈良県三郷町

大阪との府県境にほど近い近鉄信貴山下駅(しぎさんしたえき、奈良県三郷町=さんごうちょう)。改札口を出るとすぐ、驚くほど長い急坂が目に飛び込んでくる。信貴山に向かって一直線に延びる坂は、かつて山の斜面を走っていたケーブルカーの名残らしい。実際に歩いてその歴史をたどってみた。(前原彩希)

最大12%の急勾配

車がうなり声のようなエンジン音を上げ、苦しそうに上っていく。平均10・8%、最大12%の急勾配を誇る約870メートル(高低差約94メートル)の坂は、町道「勢野中(せやなか)環状線」の一部だ。いざ歩こうと決意したものの、そびえ立つような上り坂を見るとおじけづきそうになった。

テンポ良く歩くことができたのはものの数分だけ。徐々に息が切れ、足取りが重くなってくる。真夏の日差しが容赦なく照りつける日中。他に歩いている人はほとんど見当たらない。坂の中腹辺りでおもむろに後ろを振り返ると、眼下に広がったのは奈良盆地と、そこを蛇行しながら流れる大和川。駅からの高低差を実感した瞬間だった。

坂の頂上付近には奈良県立西和清陵高校がある。生徒らが信貴山下駅から列をなし、坂を上ってくるのが毎朝の光景だ。昇降口には大型扇風機が設置され、しばらく涼んでから教室に向かうのが定番とか。

坂で心身を鍛えているのが野球部だ。冬場の走り込みでは、最後に“心臓破りの坂”が待ち構えているのだからたまらない。

2年の北川陸斗主将(17)は「ゴールが見えないので本当にしんどい。でも、上りきると達成感が得られるし、精神的にも鍛えられる」と話す。毎日上り下りして登下校しているだけに「『3年間、ここを上って通ったんだ』と自慢できるような坂です」と胸を張った。

先はさらに険しく

町教委によると、この坂はかつて運行していた近鉄東信貴鋼索線の廃線跡という。信貴山下駅-信貴山駅間の約1・7キロを結ぶケーブルカーは大正11年に開業。主に信貴山朝護孫子寺(ちょうごそんしじ、奈良県平群町)に向かう参拝者らを乗せた。だが、乗降客数の減少や施設の老朽化が進み、昭和58年に廃止となった。

三郷町教委生涯学習課の大塚慎也さん(38)は「三郷町は信貴山の参詣道としてにぎわった町。最も大きな交通手段だった東信貴鋼索線は、町の歴史そのものといえる」と話す。近くに住む自営業の坂田弘子さん(82)は「信貴山のお参りやお花見でよく乗っていました」と懐かしむ。

坂は西和清陵高校の南側で行き止まりに。この先はハイキング道になっており、旧信貴山駅に通じているらしい。案内板があった入り口から、草木が生い茂るハイキング道に入ると、はるか向こうに出口が見えた。これも一直線のケーブル線跡ならではだろう。

ハイキング道は約690メートル(高低差約136メートル)。平均勾配は19・7%と一層険しくなる。所々に等間隔に並ぶ木の板はケーブルカーの枕木で、ハイキング道にはレールの一部も残されている。上りきった先にあったのは奈良交通のバス待合所だが、もともとは旧信貴山駅の駅舎だった。

小学校に車両保存

東信貴鋼索線が廃止されて36年。今でも町のあちこちでその名残を垣間見ることができる。信貴山下駅では巻き上げ機のリモコンと車輪を展示。駅から約1キロ北にある町立三郷北小学校には、車両が保存されている。

町教委は、この車両を運行当時の色に塗り直して信貴山下駅に設置し、車両内部を見学できるようにしようと検討している。大塚さんは「町の過去を知って当時をしのび、これからの三郷町について考えてほしい」と話している。

この秋は多くの参拝客らを運んだケーブル線に思いをはせながら、一直線の坂とハイキング道に挑戦してみてはいかがだろうか。

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【プロフィル】前原彩希(まえはら・さき) 平成30年に入社し、奈良支局2年目。6年続けた剣道のおかげで体力には自信があったが、今回の取材では息も絶え絶えに。20代半ばにして体力の低下を痛感した。記者生活は“急坂”の連続だが、奈良公園のシカに癒やされながら日々奮闘している。

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