不貞相手と結婚したいから夫と離婚したい,離婚できるでしょうか?って相談を受けたとき | 金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

石川県金沢市在住・ごくごく普通のマチ弁(街の弁護士)が,日々の仕事の中で離婚,女と男と子どもにまつわるいろんなことを書き綴っていきます。お役立ちの法律情報はもちろんのこと,私自身の趣味に思いっきり入り込んだ記事もつらつらと書いていきます。

1.
前記事
調停合意が成立する条件と釈迦のお話・・・いきなり裁判所提出書面で釈迦の説法,釈迦に説法!?
離婚に関係する家事調停申立ての前に考えておきたいこと
妻(母)が夫(父)に対し離婚のみを求めていて,子どもが関係せず,離婚自体で熾烈な争いになる場合?
アブノーマルな性生活から逃げたい妻(母)とこれを続けたい夫(父)の離婚調停ってどーなるの?
の続きです。

この記事では,
妻(母)が夫(父)に対し離婚のみを求めていて,子どもが関係せず,離婚自体で熾烈な争いになる場合? 
の記事で例にあげた妻が不貞相手と結婚したくて離婚したいってケースを取り上げましょう。

妻(母)には,夫(父)と別れて一緒になりたい不貞相手がいるという場合。
 
夫(父)はまさに良人(おっと)なんだけれど,刺激がないの。私は,イケナイ恋する女。私の身も心もメロメロにして女の喜びを教えてくれたこのオスと一緒になりた~い! 

ってケースです。
とりあえず子どもはいないか養育監護が必要な状態じゃなくなっているという前提で話します。

2.
 この場合の妻は,有責配偶者です。
 そして,夫が,妻への愛情とか「寝取られる」ことへの屈辱感とかその他もろもろがあって,離婚に応じない姿勢でいるとしましょう。

 法律的な話をしますと,有責配偶者からの離婚請求が認められるのかどうかという議論になります。
 よく法律相談などでも,「離婚できますか?」という形で質問されます。

 こういう場合,私は,こう答えることが多いです。

 仮に裁判所が離婚を認めないとして,あなた自身には,その夫との関係を修復しようという意思がありますか?

 いろいろなケースがありますので,妻の方が,その不貞相手との関係を解消し,自身の非を非として認めつつ,夫の深く傷ついた気持ちに思いを馳せ,さらに自分が不貞に走ったことについての背景事情について夫にも改善を期待してみようと決意して関係修復を試みるというのでもいいわけです。

 他方で,裁判所が離婚を認めようが認めまいが,私は,もうこの男性を夫として一生添い遂げていくということはあり得ないのだということであれば,そういうあなたの人生の選択を出発点にして物事を考えていくべきです。

 制度上,まずは調停で離婚について話し合うことになります。
 その話し合いの中では,①関係の修復はあり得ないということと,②自分が不貞を行った有責性の責任とをしっかり区別して話をすることが大切でしょう。
 この②の責任としては,慰謝料の支払いを誠意をもって夫に提案することです。
 違法な行為をして相手に甚大な苦痛を与えることの責任はしっかり引き受ける必要があるでしょう。
 「不貞した,離婚したい,不貞の責任は取りたくない」というのは通用しません。
 あなたが②不貞の責任を謝罪と慰謝料支払いという形で引き受けつつ,その上で,修復はあり得ないと言い続けることです。
 不貞の責任が,意思に反する婚姻関係の継続を強いられるという形で背負わされるとしたら,それは,私はおかしなことだと思います。
 不貞の責任は慰謝料の支払いという形で償い,さらに,離婚を拒否し続ける夫の感情に耳を傾け,それを解きほぐし,夫の方に,破綻という現実を受け入れてもらう努力をすることになるでしょう。

 調停で話し合っても離婚の合意できない場合,離婚の訴訟に進むという選択が考えられます。
 有責配偶者であることから,夫が最後まで離婚に反対し続けた場合,離婚の請求が判決で棄却される可能性が高いです。
 それを引き受けてでも,夫とは婚姻関係を続けることはできないというあなたの意思を形にし続けることに意味があるように思います。
 もしかしたら,離婚の訴訟に進み,その審理が進んでいく経過の中で,夫の方で破綻の事実を受け入れて,裁判上の和解で離婚が成立するかもしれません。
 裁判上の和解が成立しない場合も当然あり得ます。
 判決で離婚に関するあなたの言い分が認められればよいのですが,認められないこともあります。
 しかし,離婚の請求を棄却されたとしても,そのことで関係の修復が強制されるというものではありません。
 そんなもの強制しようがないものですもの。
 「夫婦としては破綻しているのだけれど裁判所は離婚を認めなかった」という関係が続くことになります。
 あなた自身の意思が,修復はあり得ないというものである以上,そういう関係を一旦は受け入れるしかありません。
 夫が夫婦関係の破綻という現実を受け入れるようになる時の流れを待つことになります。
 数年しても夫が離婚拒否のままなら,そこで再び調停を申し立てましょう。
 気の長くなる話です。
 でも,その気の長くなる話は,あなたが有責配偶者であることから,現在の日本の裁判実務を前提とする限り,自分自身が招いたこととして受け入れる必要があります。
 もちろん,現在の日本の裁判実務がおかしいと言うことはできます。
 それは,離婚の訴訟の中で,有責配偶者からの離婚請求についてはこういう考え方で判決を出すべきだというあなたの考えを全力で主張することです。
 しかし,そのように主張したことが受け入れられるかどうかは全くの別問題です。
 そのように主張しても受け入れられず,離婚が認められなかったなら,そういう現実の中で自分の人生をどうデザインしていくかを考えることです。
 夫との関係修復があり得ないというところから出発するのであれば,「破綻しているが離婚は認められなかった関係」の中で,交際相手の男性と結婚できないこととか法律婚が継続することに伴う様々な問題を背負って生きるしかないじゃないですか。

3.
 上手く書けませんでした。
 私の発想の根底には,修復の努力ができるのかできないのかが最初にあります。

 「別に交際相手がいてその人と結婚したいから良人である夫と離婚したい」

 この部分を取り出すと,なんともはや,溜息をつきたくなるような言い分です。

 でも,「その夫との婚姻関係は破綻していてもはや修復はあり得ない」というのは,その人の人生の選択ですから,その人が,いろいろと思い悩んだ上で,最終的に,修復はあり得ないと決断しているなら,私は,その決断自体にあれこれいう考えはありません。

 その決断が実現できるかもしれな手続選択,実現できないリスク,実現できない場合のその後の現実対処を法律家として助言することになります。
 そして,離婚を拒否している夫には夫の複雑な感情があるのでしょうが,それを夫自身が解きほぐして別の人生の在り方に目を向けた方がその夫自身の幸せなのではないか,人の幸不幸はその人自身が決めることだけれども,調停や訴訟といった手続が進行していく中で,夫の方も,幸せの在り方についていろいろな考えが出てくるようになってほしい・・・・と,そんなことを密かに願います。
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