調停合意が成立する条件と釈迦のお話・・・いきなり裁判所提出書面で釈迦の説法,釈迦に説法!? | 金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

石川県金沢市在住・ごくごく普通のマチ弁(街の弁護士)が,日々の仕事の中で離婚,女と男と子どもにまつわるいろんなことを書き綴っていきます。お役立ちの法律情報はもちろんのこと,私自身の趣味に思いっきり入り込んだ記事もつらつらと書いていきます。

1.
前回記事
調停合意が成立する諸条件についての雑感,「素敵」な調停の姿!?
の続きです。
この記事では,調停合意を望んでいるのにそれが得られない苦しみについて雑感風に書きます。

2.
 求めて得られない苦しみ。
 仏教では,四苦八苦の中に,「求不得苦(ぐふとっく)」というものがあります。
 求めて得られないことによる苦しみ。
 また,四苦八苦の中に,「五蘊盛苦(ごうんじょうく)」という言葉もあります。
 身体と心と精神がさまざまに働いて自分自身に襲いかかってくる苦しみ。

 求不得苦を感じ,五蘊盛苦を感じる。
 まあ,「生」の苦しみは,まさに求不得苦・五蘊盛苦の苦しみと言えるような気がします。

3.
 そうすると,求不得苦に対処するには,求めて得られない理由を落ち着いて考えてみるところから出発します。
 努力して得られるならば,その努力をすればいい。
 努力して得られる見込みがないなら,それを願い続ける心こそが,求不得苦の縁りて起こるところ(縁起)となります。

(1)
 調停が難航する理由の多くが相手方や相手方代理人弁護士の理不尽さにあるのなら,理不尽な相手との合意解決を望むこと自体が求不得苦と言えるでしょう。
 もしかしたら,離婚問題の最中においても,相手の人間性を信じたい心があって,相手から期待できない誠意を期待している自分自身の心が求不得苦となっているのかもしれません。
 そういう場合は,調停での合意は,そもそも期待できないのだ,それを期待するから苦しむのだと,「ありのまま」を見て訴訟に進むという選択も必要です。

(2)
 調停が難航する理由の多くが調停委員の資質にあるのなら,うーん悲しいですね。調停委員の交替というのはないでしょうから,「ハズれ」を引いたという「ありのまま」を見る必要があるのでしょう。「ハズれ」なのに「当たり」になってほしいと叶わぬ願いを持ち津づけるから苦しむのです。調停を諦めて訴訟に進むという選択になるのでしょう。

(3)
 調停が難航する理由の多くが自分が依頼した弁護士の資質にあるのなら,うーん,悲しいですね。途中解任というのはとても難しいです。正面からその弁護士と話し合うといっても,思いっきり弁護士の権威でもって押さえつけられるかもしれない。「専門職支配」の問題が出てきてしまうかもしれない。離婚問題で悩んでいる最中に,弁護士との「離婚」問題を抱え込むという泣くに泣けない状態になってしまいます。依頼した弁護士は自分にって良き存在であってほしいという願いが叶わなかった求不得苦。これは辛いなぁ・・・。

(4)
 調停が難航する理由を相手方に求め,調停委員に求め,自分が依頼した弁護士に求める自分自身の心のありよう自体に,実は,無明(根本的無知)が潜んでいないか?
 仏陀でない人間は,誰もが至らぬ人であり,「ありのまま」を見ることがかなない無明(根本的無知)の中で,サンスカーラを働かせて独自世界を構築し,その独自世界の中で生きております。
 ですから,求不得苦(ぐふとっく)の理由を他者に求めている自分自身のあり方自体が,実は違っているのではないかという自己省察はしっかりとしておくべきだと思います。

 無明,サンスカーラ,独自世界はこちら。「諸行無常」でございます。
諸行無常その1~原始仏教における「サンスカーラ」というキーワード 8/19追記訂正
諸行無常その2~「無常」(アニティヤーハ)の二面性(生と滅),動的(ダイナミック)であること追記 

4.
 雑感がなぜいきなり仏教~

 私ね,調停で裁判所に提出する書面にいきなりこんなことを書いちゃいます。
 複数事件で書いちゃいます。
 本当ですよ(爆笑)

☆☆☆
 相手方は,申立人の言い分について,不本意,申立人の誤解,無理解を感じる部分もあろう。他方で,釈迦は,正覚を得ぬ人は誰しも至らぬ人間としての無明(根本的無知)を持っており,「その人の目から見た世界」でもって物事を眺め,「ありのままの世界」と「その人の目から見た世界」との間の食い違いから一切の苦しみが生じると説く。
 もちろん,申立人もまた,そういう至らぬ人間の一人として,申立人の目から見た世界でこの離婚という事態を見ている。
 そのような妻・母とそのような夫・父が,離婚という悲しい現実の中で,双方が「ありのままの現実」に近づこうと努力することが大切なことと思う。 
 そして,調停委員に対しては,仏陀ではない至らぬ人として一面性を免れることができない申立人,相手方双方に対し,調停委員の豊かな社会経験と人生経験でもって,双方にそれぞれの気づきをもたらす問いかけ,語りかけを期待したい。

☆☆☆
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