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調停合意が成立する条件と釈迦のお話・・・いきなり裁判所提出書面で釈迦の説法,釈迦に説法!?
離婚に関係する家事調停申立ての前に考えておきたいこと
妻(母)が夫(父)に対し離婚のみを求めていて,子どもが関係せず,離婚自体で熾烈な争いになる場合?
の続きです。
前回記事で,離婚自体のみが争いになっているケースを取り上げました。
例としてあげたのは,次の二つ。
(1)夫(父)有責の場合として,夫(父)のアブノーマル性生活のケース。
(2)妻(母)有責の場合として,妻(母)が不貞してて,離婚して不貞相手と一緒になりたいと考えているケース。
2.
まず,(1)のケースから見ていきましょうか。
これは,まあ溜まったものじゃないですね。
いきなり夫(父)が調停の席で,「修復可能だ」,「アブノーマルじゃない」,「妻も積極的に応じてた」,「夫婦の性生活のことは第3者には分からない」とか言いまくったりすると,ぞっとすることでしょう。
この場合,夫の言う「修復」ってのは,
妻(母)が嫌悪する夫の性的嗜癖について,妻たるものは夫の性の要求に応じてしかるべきだ
って関係枠組に妻(母)を閉じ込めようってものですからね。
妻(母)としては,そこから逃げたくて仕方ないのに,夫(父)の勘違い発言で,そこに連れ戻されようとする。
このままだと並行線です。
そして,妻(母)が,夫(父)に妥協して合意なんてのはあり得ないでしょう。
それは,性という人格の根源的な部分で夫(父)に合わせて忍従と屈辱の人生を送るってことですからね。
以上,アブノーマル性生活で説明しましたけどね,DVだって同じことです。
その夫との関係全般が,「暴力」を背景とした「支配・被支配」が基調になってるなら,そういう関係性の中で生きることは,妻(母)にとっては,人格破壊を受け入れて,「死んだもの」として生きていくしかないわけです。
ですから,妻(母)が婚姻関係は自分の人格を破壊しつくすものなのだと言っている場合において,妻(母)が夫(父)に妥協して修復合意なんてのはあり得ない話になってきます。
それにも関わらず,夫(父)がですね,「修復可能だ~」,「二人の関係は破綻していない」,「そんな風に考える妻(母)の方がおかしい」,「妻(母)は第3者の入れ智恵によって自分との関係をねじ曲げて理解しているんだ」とか調停で言いまくってるとするでしょう・・・。
3.
ここでちょいと当事者から離れた目で見てみましょうか。
妻(母)が主張する夫の「アブノーマル性生活」なるものが,男性女性の調停委員から見て,
A 別に「アブノーマル性生活」とは思えない場合。
B 確かに「アブノーマル」だわなぁと思える場合。
AとBとで問題状況が変わるかってことが問題です。
説例では,妻(母)は夫(父)と別れることのみを求めており,その「アブノーマル性生活」なるもので離婚になる離婚慰謝料とかは一切求めていないとするでしょう。
そうするとね,仮にAの場合であったとして,男性女性の調停委員が,妻(母)に対し,「そんなの普通よ。アブノーマルでもなんでもない。それをアブノーマルと言うこと自体がおかしい。」と言ったとするじゃないですか。
言われた方は,たまりません。
女性の調停委員に,「じゃああんたが変わりに相手してくれ」と言いたくなるかもしれない(笑)。
アブノーマルかどうかというのは実は問題の本質ではなくて,妻(母)が夫との性生活に応じること自体が苦痛で仕方なくてそれを続けることができないというのが問題です。
「結婚して妻という立場にあるのだから,たとえあなたが嫌であっても応じなさい」なんてことを正面から言うのかどうかなんですね。
実は,「夫婦間で強姦罪が成立するのか?」なんていう議論もありまして。
そういう事件での弁護人は,弁護人としての立場から,「妻は夫の性の要求に応じる義務があるのだから,性的自由の侵害を本質とする強姦罪はいかなる意味でも成立しない。」なんて言ったりするわけです。
私的には,とてもついていけない議論なんですけど。
4.
妻(母)は,もうこの人とはやっていけないと考えている。
夫(父)は,妻(母)との法律婚を続けたいと思っている。
恋愛関係なら,関係の継続についての両者の考えが不一致の時点で別れが来ます。
双方OKで関係は継続するものですから。
夫(父)は,関係が壊れた現実をなんとか受け入れるしかない。
受け入れられなければストーカーになるんでしょう。
法律婚だと離婚するには裁判離婚を除いて「別れることの合意」が必要になる。
妻(母)が「別れたい」といい夫(父)が「別れたくない」と言っている状況下ですと,妻(母)の別れたいという理由がよっぽど疑問だらけという場合は,落ち着いて考える期間を置いたりとか,夫婦の有り様について「経験豊富な」調停委員の有り難いお言葉でもって考えてもらうとかもありなのでしょうが,それでも妻(母)の「別れたい」気持ちが強ければ,その二人の関係は終わってるんじゃないですかね。
5.
夫(父)が,自分自身の求不得苦に気づいて関係の終わりを受け入れられればいいのですが,それができないという場合も多いわけです。
そうすると,破綻という事実を夫(父)が受け入れるというプロセスを調停で実現できるかどうかという問題になってきます。
ケースバイケースでしょうね。
長い時間をかけて調停委員が夫(父)の気持ちをよく聞いてあげて,有り難いお言葉を沢山語ってくれて,夫がそれに聞く耳を持ってくれれば,調停手続のどこかの時点で夫(父)の考えは変わるかもしれない。
何回の期日を重ねるか分からないけれど。
調停不成立で訴訟化するというプレッシャーがかかることで,夫(父)が,なんとか調停での合意を受け入れるかもしれない。
そこは本当にケースバイケースです。
妻(母)の側から言いますと,「別れたくない」という夫(父)の気持ちを変えることはそれなりに大変なことだと認識することが大事です。
もしかしたら,調停という手続に進んでも,夫(父)への変化は限界があるかもしれない。もし,そうなら,そういう状況下であるのに,なんとか調停合意で離婚を成立させたいと思うとすると,それ自体が,妻(母)の求不得苦です。
調停では無理なのだと割り切って,調停不成立にして訴訟に進むのが現実的な選択肢です。
もちろん,訴訟化させても,自体は好転しないかもしれない。
しかし,訴訟化させることで,さらに一歩前に進むわけですから,夫(父)の現実認識が進むかもしれない。
調停段階で夫(父)が弁護士に委任していないとしたら,訴訟化させることで,夫(父)が弁護士委任することが期待できます。
裁判上の和解という手続で,最終的に判決を書く権限のある裁判官が,和解勧告をすることもあります。
判決を書く権限のある裁判官と夫(父)が委任した弁護士の絶妙な働きかけで,夫(父)の現実認識が進むということも大いに期待できます。
訴訟に進んだことで,修復可能という夫(父)の幻想は少しずつ現実を受け入れるようになっていくかもしれない。
まあ,そうならずに判決まで行っちゃうというケースもあるのですが。
いずれにせよ,現状が降着していて,しかも,その降着の原因が,自分にあるのではなくて相手方にあるというような場合は,手続を前に進めていくというのが現実的な選択肢であるように思います。
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