法テラスの弁護士費用具体例~離婚・婚姻費用,さらに面会交流 | 金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

石川県金沢市在住・ごくごく普通のマチ弁(街の弁護士)が,日々の仕事の中で離婚,女と男と子どもにまつわるいろんなことを書き綴っていきます。お役立ちの法律情報はもちろんのこと,私自身の趣味に思いっきり入り込んだ記事もつらつらと書いていきます。

 先の記事当選者発表~緊急募集!あなたのケースでの法テラス弁護士費用見積もります!で発表しました1名応募1名当選のケース。
 ご本人に補足確認をし,さらに事案を私なりにアレンジしました。
 なお,最初は,ブログ上模擬法律相談でもしようかと思いましたが,長くなるので止めました。Qは具体的ですが,Aは極めて簡単に書いて行きます。といっても…長~
 制度について分かりにくいと思われた方,離婚弁護士さんたちが綺麗なHPで詳しく解説してますので,そちらをご参照下さい。


 私は石川県金沢市在住です。私と夫との間には1歳の子どもが一人います。これまで夫婦仲が順調でしたが,夫が不貞をし,もう家庭はボロボロです。私は,子どもを連れて家を出て,夫に対し,離婚を求めていきたいと思います。不貞相手の女性に対して慰謝料請求するという考えはありません。夫と早く離婚したいと思います。離婚までの生活費が心配です。また,親権者は私になると思いますが,夫は子への愛着が強く,面会交流も気になりますし,親権を争うかもしれません。まあ,夫の性格から,私と一緒に家を出た子どもを連れ戻すとかいうことはないと思いますし,子どもを戻して夫に養育させろという要求も出てこないと思います。なお,夫による暴力(精神的暴力を含む。)はありません。
 こんな場合,その手続と法テラスを利用した場合の費用はどうなるのでしょうか?なお私の手取りは月17万円で,別居の際は月50,000円程度の家賃のアパートに移ります。また預貯金は50万円くらいあります。夫は大学を出てからずっと公務員で,夫の税引き前年収は約500万円私の年収は約250万円です(手取り月17万円と税引き前年収との関係はいいかげんです。税法知識を駆使したツッコミはやめてね)。



1 予想される「事件」の確認
 ① 妻が申し立てる離婚の調停,不成立の場合の離婚の訴訟
 ② 妻が申し立てる婚姻費用分担請求の調停・審判
 ③ 夫が申し立てる離婚前の面会交流の調停・審判
 ④ (予想外に夫が申し立てる監護者指定・子の引渡しの審判・審判前保全事件)

2 各「事件」の手続の流れの確認
※分からない方,すみませんが離婚弁護士さんたちの綺麗なHPで調べて下さい。

(1)離婚の手続の流れ

 離婚の調停と 「離婚の調停事件」の代理援助申込み
   |        
 
   |
   | →成立・・・離婚の法律問題は一応解決・・・成功報酬
   | 
  不成立
   ↓
 離婚訴訟と 「離婚の訴訟事件」の代理援助申込み  
   |        
   |
   |→裁判上の和解又は第1審判決(確定)…一応解決・・・成功報酬
   ↓
 判決に対し当方or相手方が控訴する場合,
    |        「離婚の控訴事件」の代理援助申込 
   |
    |→裁判上の和解又は控訴審判決(確定)…一応解決・・・成功報酬
    ↓
 最高裁上告は省略(ないとはいえないが余りないから)

(2)婚姻費用分担及び面会交流(又は監護者指定・子の引渡し審判)の手続の流れ(家事調停・審判事件)

  各調停と「各」調停事件の代理援助の申込み
   |
   | →調整成立…①離婚の事件がかかっている間は法テラスは成功報酬決定せず。
   ↓           離婚事件終了時に全事件一括で成功報酬決定
 調停不成立
   ↓
 審判という手続に自動意向
   |   法テラスに中間報告,審判事件追加実費・着手金発生 
   |
   |→審判確定または調停に戻されて調停成立で解決…成功報酬は①と同じ
   ↓
 審判に対し当方or相手方が即時抗告,
   |    即時抗告事件の法テラス申込み 
   |
   ↓
 即時抗告決定・確定―――――→成功報酬は①と同じ
 (特別抗告とかはあまりないので省略)

3 手続進行と法テラス順次申込みの具体例

(1)法テラスの代理援助の要件は問題なくクリア
   この方に適用される収入基準
    2人家族251,000円+家賃50,000円=301,500円
    手取り月170,000円
    全く問題なし(というか女性の収入が低いことが社会的に問題だが)。

   収入基準の設定と手取り額の計算はこの二つ参照
     私,法テラス利用できる?~資力基準の詳しい解説
     法テラスHPより

(2)事件進行中の償還猶予の検討
   生活保護受給中じゃなくても償還猶予OK~法テラス償還猶予基準参照
   前記(1)の収入基準301,500円×70%=211,050円
   この方の手取り17万円。よってOK
   
   預貯金50万円は,基準の4の④により全く問題なし。

   よって償還猶予を充たす。
   申込みの際は,償還猶予されるべきだという弁護士の意見を必ずつけてもらいましょう。

(3)まず申し込む「事件」とその事件の実費・着手金
    法テラスの実費・着手金の基準
       法テラスの実費・着手金の一覧表~法テラス弁護士費用
    法テラスの成功報酬の基準
       法テラスの報酬金(成功報酬)の計算方法~法テラス弁護士費用
   
    ①離婚の調停
        実費20,000円
        着手金84,000円
         (石川はまず84,000円で決定)
         (基準では84,000円~126,00円)
    
    ②婚姻費用分担請求の調停
        実費20,000円
        着手金42,000円
          ※①の事件と「関連事件扱い」になり減額される。
          石川での私の経験上
          84,000円×1/2=42,000円
  
よって,上記2事件の実費・着手金総額 164,000円
  ※法テラスが弁護士に立替払い
  ※事件進行中の償還猶予により事件終結まで返済(償還)は不要
  ※法テラスを利用しない場合は,2事件で30万円~50万円くらいか?

*調停でその両方が成立すると,後は成功報酬だけの問題になる。

*離婚の調停と婚姻費用分担の調停は同じ日に一緒に行われることが通常(二つの事件について同時に調停での話し合いをする。)。そして,家庭裁判所は,調停での離婚が成立しそうな場合,婚姻費用の調停を不成立にせず,そのまま係属させ,離婚の条件の中に未払の婚姻費用分を織り込んで一緒に合意して終了させようとする。
   例 婚姻費用の請求時 平静24年4月1日
     算定表による月額婚姻費用  月約7万円
                          夫年収500万円,妻年収250万円として

※ちなみに同様の条件で算定表による離婚後の養育費は月4万円程度。

※離婚までの婚姻費用分担金の方が離婚後の養育費よりも高額になることから,
離婚の調停と婚姻費用分担請求の同時申立てをするのが良い。
その後長期化しても,妻は軍資金を確保でき,他方,夫は,養育費より割高な婚姻費用を支払い続けなければならなくなる。この状況が,離婚における夫の譲歩を引き出して解決を早くする効果がある。

 仮に調停合意成立日 平静24年8月31日
   調停で夫が不貞を認めて合意した慰謝料分 150万円
   請求後の未払婚姻費用合計 7万円×5月=35万円
   合意内容 慰謝料分に未払婚姻費用を加算した額を解決金として支払う
   解決金の金額 185万円(150万円+35万円)

*調停委員の見込みどおり合意できればいい。しかし,合意できずにずるずる期日を重ね,その間に婚姻費用の支払いがなく,結局調停不成立だと,未払婚姻費用が蓄積し,その間,妻は苦しい生活を余儀なくさせられる。
*これを回避するには,調停の係属中,算定表の算定額より下回ろうとも,夫が支払いを認める金額を仮払いさせておき,不足分を未払婚姻費用として持ち越すのがよい。

(4)夫が子の親権を主張し続けたため,平成24年9月30日に離婚の調停・婚姻費用分担請求の調停が同時不成立となった場合

③離婚の訴訟の代理援助申込み
    実費35,000円
    同一弁護士が調停から離婚の訴訟を担当する場合の着手金157,500円

④婚姻費用分担請求が審判手続に自動移行して発生する追加着手金・費用
    実費10,000円~20,000円
    追加着手金42,000円を上限とする妥当な額
    ※これは私が経験した法テラス石川の運用です。

 よって,この時点で加算される額合計254,000円 立替金総額418,000円
 (婚姻費用審判事件につき,実費20,000円,追加着手金42,000円で計算)
 これを法テラスが弁護士に立替払い。償還猶予継続中のため,利用者は月額返済は離婚の事件の最終解決まで不要。
※法テラスを利用しない場合ですと,おそらくこの時点で20万円~30万円の着手金が追加請求されると思います。20万円だと法テラス利用の方が高いように思えますが,法テラス利用でない場合は調停段階で2事件の着手金30万円~40万円の支払いがなされていることをお忘れ無きよう。

(5)平成24年10月19日,夫が面会交流の調停を申し立て。その事件について法テラス利用

⑤面会交流調停事件 
    実費20,000円
    着手金42,000円
          ※①の事件と「関連事件扱い」になり減額される。
          石川での私の経験上
          84,000円×1/2=42,000円
 よって,この時点で加算される額合計62,000円 立替金総額480,000円
 法テラスを利用しない場合は,おそらくこれよりも高額の追加着手金の請求がなされると思います。

*面会交流は子がかかわるだけに悩ましい問題
*面会交流は子の福祉のためのものであり,家庭裁判所は,基本的に,面会交流を肯定する。ただし,同居親と別居親との関係が険悪などの事情で,面会交流を実施することが子の福祉に反するおそれがあるときは,面会交流を否定する。
*面会交流の回数や方法などで折り合えないこともあり,こういう場合は,面会交流の調停で調整していくことも致し方ない面がある。
*面会交流の調停で判断が難しいケースでは調査官の調査が入る。これは,父,母ともにとても参考になり有益なものが多い。面会交流の事件が係属すると実費・着手金の負担が増すが,その調停手続の中で得られるもの(父・母双方の気づき)も多い。
*DVのケースでは,父の面会交流が子どもを道具として利用するDVとして用いられることがそれなりに多い。こういうケースでは子のために,面会交流を拒絶して闘うスタンスになると思われる。調停で解決せず審判移行するため,審判移行の時点で,追加実費10,000円~20,000円,追加着手金42,000円を上限とする妥当な額の立替金追加がくる(法テラス石川運用)。

(6)面会交流については,とりあえず調停で条件合意ができて調停成立

  面会交流調停事件の成功報酬は,①の離婚の事件の関連事件扱いで①の離婚の事件終結時に一括決定になるため,成功報酬の決定先送り。

(7)平成24年11月1日 婚姻費用分担請求審判事件について以下の決定
   婚姻費用月額7万円(算定表どおり)
   未払婚姻費用の支払い 7万円×7月(4月~10月)=49万円
   平成24年11月以降離婚成立までの婚姻費用 毎月末日7万円の支払い。

  婚姻費用分担調停・審判事件の成功報酬は①の離婚の事件終結後に一括決定

*本ケースでは,相手方は一応,未払婚姻費用と毎月の婚姻費用を任意に支払ったとして話を進めることとする。公務員だから強制執行されたくないため,普通は任意に払う。

*もし,相手方がこの支払いをしない場合,強制執行が必要になる。この強制執行事件について法テラス申込みをすると実費・着手金は以下のとおり。
   実費20,000円
   着手金42,000円~63,000円(法テラス石川は42,000円)
   仮に着手金42,000円として,立替金加算額62,000円

(8)平成25年4月1日に,夫は,親権の主張を引っ込め,慰謝料額も折り合いがついて,離婚の訴訟事件について以下の条件での裁判上の和解成立

①離婚
②子の親権者母
③解決金 400万円
   慰謝料相当分 250万円
   財産分与分  150万円
④子の養育費 平成25年4月分から月4万円(算定表どおり)
⑤離婚後の面会交流の条件
⑥年金分割 2分の1

 この離婚成立まで,手にした婚姻費用分担金
  月70,000円×12月(H24.4月~H25.3月)=840,000円


4 お伝えしたいこと

(1)
 げんなりされたと思います。離婚は,離婚とともにさまざまな「事件」が数珠つなぎになっていく可能性があります。これはケースバイケースで,人によっては離婚の調停と婚姻費用の調停で終了という場合もありますし,夫が強硬に争ったりして面会交流とか子の引渡しとかやってくると,長期化と立替金累積は避けられません。
 このケースでは,実費・着手金総額(立替金総額)は48万円まで累積しました。
 仮に,これを法テラス利用しなかった場合,どうなるか?
 考えただけでも怖いですね。
 一般に,各弁護士の事務所ごとの基準でも,「事件」ごとに実費・着手金を計算していきます。事務所ごとの減額措置はあると思いますが,法テラス利用よりも高額になるのがほとんどだと思います。

(2)
 上記(1)が現実である以上,弁護士は,最初の法律相談の時点で,そのケースで生じうる「事件」を予測し,その「事件」が実際に発生した場合の実費・着手金や成功報酬について,依頼者に説明しておく必要があると思います。なぜなら,これを怠ると,その後,依頼者は,「え~,そんなの聞いてねぇ~」となってしまうからです。

(3)
 皆さんは,このようにして累積した立替金について,どうなるのか心配でしょう。このケースでは法テラス利用でも実費・立替金総額は48万円までいきました。さらに成功報酬もかかってきます。
 しかし,法テラスには,立替金の償還免除の制度があります。
 具体的に言いますと,相手方から現実にお金が入ってきた場合,その入ってきた額の25%までは立替金の償還に当てる必要があります。その25%を超える部分は償還免除の要件を充たせば免除されます。
 このケースでは,離婚の法律問題の一応の解決としては,まぁまぁの結果を想定しました。

 もしですよ…困ったことにですね,相手方婚姻費用任意に支払わず,しかもトチ狂って公務員を辞めて強制執行もやりようがなかった,そして,離婚の訴訟では,未払婚姻費用分も含めて,解決金150万円和解成立時一括払いで泣く泣く妥結したとしましょう。養育費は一応月4万円。

 この場合,養育費は履行見込み不確実ですので,取りあえず成功報酬算定の基礎に入れないとしましょう。
 そうすると,本人の得た経済的利益は150万円になります。

 次の記事で詳しく書きますが,まず150万円から成功報酬が差引されます。
 このケースの成功報酬は,192,000円~234,000円くらいで決定されるように思います(審査の中で裁量的に決められますので,これより下回ることも上回ることもあり得ます。)。

 各弁護士の事務所ごとの基準ですと,離婚事件だけで,以下のように定められているところが多いです。

  成功報酬 30万円~50万円(離婚・親権)+経済的利益の10%~16%

 仮に,30万円+経済的利益の10%としますと,経済的利益150万円だと成功報酬は45万円になります。さらに面会交流の事件の成功報酬がかかるでしょう。場合によっては婚姻費用分担審判事件で決定を得たことによる成功報酬(未回収でも)が請求される場合もあります。
 やはり法テラス,格安です。

 そして,法テラス利用の場合,累積した立替金合計48万円については,375,000円の範囲で支払いをする必要があります(1,500,000円×25%。もちろん,立替金総額が375,000円を下回るならその実際の立替金総額が支払額になる)。
 そして,超える分の105,000円(375,000円-480,000円)については,償還免除の申請をすることになります。この方のケースでは,収入が激増しているとか,この間にお金を貯めて預金残高が激増しているというような特殊事情がない限り,償還免除が認められると思います。

 したがって,仮に成功報酬が192,000円で決定されるとすると,ご本人の手元に残る金額は以下になります。

150万円-192,000円(成功報酬)-375,000円(立替金償還必要額)
 =933,000円


(4)
 みなさんの離婚に関する事件が,「事件」の数珠つなぎにならずにすめばいいと思います。本当にそう思います。だってさ……弁護士だって,つらいもん。法テラス格安だから(T_T)……

(5)
 それでも痩せ我慢して全力投球してよりよい解決を目指すのが弁護士というものです。金沢弁護士会の素敵な素敵なH先生,N先生,新潟へいかれなM先生,別のN先生,U先生…みなさん,そうされていると思います。
 それは,思い悩む女性と次世代の担う子どもたちが誇りと自尊心をもって生きていくことこそが,この社会を良くすることだと信じているからです。



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