前回簡単な外科処置を院内で自分でやっていることを書きました。
内科医は外科的な処置は基本的にはできません。私の場合はむしろ特殊なケースと思います。
その根本にあるのは私が循環器内科医であることがあげられるでしょう。
なぜかと言うと、循環器内科医は心臓カテーテル検査を本業としているからです(今となっては怖くてできませんが・・・)。カテーテルという細い管を血管の中に通して心臓の血管に造影剤を注入して検査をするのです。
主流となっているのはジャドキンス法というバカちょんカテーテルを使うやり方が一般なのですが、私が心臓カテーテル検査を習った北野病院ではソーンズ法という心臓カテーテル検査の原典ともいう方法をやっていました。古典的なやり方なのですが、右肘部を横切開して血管を露出させて、その血管に小さな穴を開けた上でカテーテルを挿入するやり方です。今なら野蛮なやり方と言われるかもしれませんが、カテーテルを換えずに全ての検査ができるので時間短縮ができます。
ところが、これが職人技が必要なんです。上級医の先生方が難なくやってのけるのを見ていると簡単に思えるのですが、実際にやってみるとちょっとした力の入れ具合やちょっとした回し具合で検査の出来具合が変わってくるんです。一生懸命やってやり遂げてほっとしていると、カテーテルのトップの副部長に“何やってるかわからない”と言われてしましたが、決して副部長から操作方法を教えてもらえることはありませんでした。他の先生がやっている手技を一生懸命見て、それと同じようになるように実践するという毎日でした。
それでも来る日は来るのです。ある日、だいたい2年ぐらい経った頃なのですが、検査を終わって副部長から“やっと任せられるな”と言われました。
うれしかった。
その後大学に戻ることになったのですが、自分はカテーテルで生きていくことを選びませんでした。副部長からもったいないと言われましたが、それも自分の人生のチョイスだったので。
北野病院に在籍中に学んだことに心臓ペースメーカー植え込み手術があります。心臓が止まりそうになる患者さんに対してペースメーカーという人工的な脈発生装置を植え込む手術です。上胸部をだいたい3cmぐらい切開してペースメーカー(親指と中指で円をつくったぐらいの大きさ)を植え込むスペースを作り、その近辺から静脈を通して刺激を行う電線を心臓に留置した上で、ペースメーカー本体を皮下に植え込んで感染のないように留置する手術です。そんなに難しい手術ではないです。以前に在籍していた病院でもやっていましたが、だいたい1時間程度の手術です。
このような経過で人体を切ることに異和感はなくなっていた自分なのですが、切らなくても良いのでしたら切らないのに越したことはありません。当然です。
もう一つ非常事態に備えて見ていたことがあります。気管切開です。
呼吸状態が悪い患者様の場合にのどまで管を入れる気管挿管をした上で人工呼吸器を装着するのですが、長期にわたる場合に気管切開が必要となります。元々循環器医でしたので、心不全患者の場合に挿管が長期になることも多く気管切開が必要となるケースも結構ありました。その時は耳鼻科の同級生に電話をして気管切開を直接頼みました。実際に自分ですることはなかったのですが、何かあったら役に立つように食い入るように見ていました。これが役に立つ時がやってくるのです。
以前バイトで行っていた病院の当直中のことです。同級生が常勤循環器医でいたので、その申し送りで言われたことが、“○○さんなんだけど、呼吸状態が安定したので今日抜管したから”でした。その深夜零時頃、集中治療室の看護師から電話が・・・。“先生、○○さんの呼吸状態がおかしいです。”
挿管するねと言いながら喉頭鏡(挿管に必要な器具)でのどを見たところ前面が真っ赤。挿管されていたのでのどが腫れてしまって気道が塞がれてしまっていたのです。“先生!どうするんですか!”
“気切するしかないやろ。アンビュ(人工呼吸の器具)もんどいて”
さすがに耳鼻科の同級生と同じことはできませんでしたが、この患者さんの命は助けられました。
患者を助ける(自分自身は異和感があります。医師は単に助力者と自分は思っているので・・・)ことができた逸話を提示しましたが、最後に強調したいことがあります。
!!私は手先も器用ですし、患者様に対応することも器用です!!
すみません。ちょっと自慢してしまいました。
(実は絵を描いたり、ものつくったりは幼少の頃から大得意なんです。)