こんにちは、みなさんお元気ですか?
少し古い話で恐縮ですが・・・
ここ茨城県筑西市にある板谷波山記念館で、今年(令和5年)3月まで開催されていた所蔵品展の紹介記事「夫婦窯 波山さんとまるさん①」からの続きです。
以下、解説文は板谷波山記念館によるものです。
前途洋々の乙女たちへ
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230516/10/shimodatecity/ba/f0/j/o1080076815285070979.jpg?caw=800)
女子教育推進に尽力した経験を持つまるは「自立した女性」を生み出すため、自身が女学生時代的に身に付けた技術で、少女たちに刺繍教室を開きました。夫・波山も帯の意匠や文様に関心があったため、帯の下絵から配色まで関わっています。
教室に通っていた生徒宅には現在でも帯が大切に残され、下館で過ごした波山夫婦の足跡を残しています。
帯下絵(百合蝶図)
昭和20~30年代 個人蔵↓
帯下絵と作品がどちらも現存しているのは極めて貴重。本展初公開。
刺繍帯(教室生徒作)
昭和20~30年代 個人蔵↓
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田端窯採取陶片(青磁香炉 昭和10~20年代、文琳茶入 昭和時代前期、天目茶碗 昭和時代前期)↓
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まるは収集家でもあり、大正~昭和期にかけて「簪(かんざし)・笄(こうがい)・櫛(くし)」を大量にコレクションしています。1920(大正9)年に私立日本女子美髪学校で結髪科や美顔術、化粧法の講習を受講し免許を取得しました。現在では当館と、母校・共立女子大学、東京都北区立滝野川第一小学校、文化服装学院服飾資料館に寄贈されています。
「スクラップブック」には当時の新聞記事や全国の神社仏閣の御朱印がまとめられ、その内容はいずれもまるの興味関心を示し、マメな性格だと想像させられます。またスクラップ作業には愛孫と一緒におこなったという愛おしいエピソードも残されています。
簪・笄(板谷まる私蔵)
江戸時代後期↓
家族と芸術を愛するまる
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230518/11/shimodatecity/14/c6/j/o0769108015285926707.jpg?caw=800)
共立女子職業学校(現・共立女子大学)で刺繍や裁縫を習うほか、日本画家・跡見玉枝に師事し日本画を習得すると自らを「玉蘭(ぎょくらん)」と号すなど、芸術を深く愛しました。
1916(大正5)年、単独で行った御前制作では「櫻形菓子器(さくらがたかしき)」を制作します。また、夫を支えるばかりでなく、自分の進むべき目標を常に心に抱き歩んだ女性でした。
昭和30年頃には下館会館で自作の刺繍や絵画の個展を開き、創作活動も積極的に行うなど、何事にも熱心で、真っ直ぐな性格のまる。天真爛漫なまるのまわりは笑いが絶えず、下館でも大変な人気者ぶりでした。
まるは共立女子職業学校(現・共立女子大学)の第一期生で、本作は記念すべき卒業制作である。精緻な刺繍技術で花鳥図を見事に完成させ、昭和30年頃に下館会館で行われた個展にも出品するほど納得の出来だったようだ。
椿図(板谷まる)
1951(昭和26)年↓
これまでの玉蘭印(朱文円印)から、本作では新たな印が使用されており、まるの制作活動の意欲を感じる。
戦後間もない1947(昭和22)年、下館で疎開していた二人は、東京から宝生流宗家 宝生重英(ほうしょうしげふさ)を迎え第1回「観音会(ブログ管理者注:観能会か)」を下館高等女学校(現・下館第二高等学校)で開催します。第3回まで開催されるほどの好評だったため、能楽界で名人として著名な大坪十喜雄(おおつぼときお)を招き、地元住民らと稽古をつけるなど、文化の種を蒔きました。
その後、波山の喜寿祝賀会や、まるの傘寿祝賀会の折にも下館で観音会(注:前掲)が開催されるようになり、晩年まで波山夫妻は、郷里・下館の人々との深い交わりを何よりも楽しみにしていたのでした。
以上が展示室の展示内容(一部省略)です。
なお、展示室にはモニターが設置されていて、昨年(令和4年)に筑西ケーブルテレビで放送された「生誕150年記念特別番組 板谷波山―地元を愛し、地元に愛された陶芸家」が流れていました。せっかくなので、そのごく一部(たまたま怪獣で写真を撮った場面)を、ご紹介させていただきます。
まずは、波山研究の第一人者・学習院大学の荒川正明教授へのインタビュー↓
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波山プロジェクト代表の水柿貴之さんも登場↓
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20230523/08/shimodatecity/8a/96/j/o1080073415288150278.jpg?caw=800)
展示室を鑑賞した後は、作業棟へ。ここには、田端にあった波山先生邸にあった工房(作業場)が移築・復元されていますが、こちらの展示は前回ご紹介時から大きな変更は無かったようです。
波山先生の作業机(写真奥)と、主に轆轤師・現田市松さんが使用した轆轤(写真中央)↓
焼き物の窯は「昇炎式」と「倒炎式」に大別されます。炎が下から上昇して煙突から出ていくのが「昇炎式」、対して煙突が無いため天井に当たって下に戻り、床下の煙道を通って出ていくのが「倒炎式」です。
という事は、復元された夫婦窯の底にある穴は、炎と煙を煙突へと導く煙道への穴でしょう。また天井にも穴が開いていますが、こちらは本来は塞がっていたのかもしれません。
というわけで、板谷波山記念館 所蔵品展「夫婦窯 波山さんとまるさん」のご紹介でした。実は美術と才能もあり、女性のみ自立にための学校作りにも寄与してきたまるさん。当時としては進んだ考えの持ち主だった事がわかります。
■板谷波山記念館 所蔵品展「夫婦窯 波山さんとまるさん」
会期 令和4年11月1日(火)~令和5年3月19日(日) 【前期展示11月1日(火)~1月19日(木)、後期展示1月21日(土)~3月19(日)】
*月曜休館、12月28日~1月4日まで休館、1月20日休館
時間 午前10時~午後6時(最終入場は5時30分)
料金 一般210円
*高校生以下無料
*障がい者手帳等をお持ちの方と同伴者1名まで無料
問合せ 板谷波山記念館TEL0296-25-3830