今だから明かす驚愕の事実!

人類滅亡の危機を救ったのは、NATOでも、米軍でも、自衛隊でもウルトラマンでもない!


この俺だ!




16世紀、フランスの医師で占星術師でもあるノストラダムスはこのように予言した。


『1999年7月に恐怖の大王がやってきて、人類滅亡へと追いやるだろう』 




これを知った時の衝撃は、今でも鮮明に覚えている。 

俺は、人並みの幸せを味わうこともなく、この世から消え去る運命(さだめ)だと言うのか!?と失意に打ちひしがれていた。 



1999年1月 


ついに年が明けた。
とうとうこの1999年、運命の年を迎えてしまったのである。 

テレビの特番などでは、来るべき7月の恐怖の大王について五島勉氏が熱弁を振るう!



 1999年2月 


国連はおろか、日本国政府もまだ何の手立てをしようとしない。この対応の鈍さに俺は苛立ちを隠しきれない。


このままでは、すべてが手遅れになってしまう…


この青く輝いた美しい星『地球』を、そして人類の尊い未来を守るために俺は、運命に逆らい立ち上がることを決意した!


まず、夜寝る前に、歯磨きが終わった頃を見計らい、この大予言が外れてくれるよう神に祈ることとしたのだ!



1999年3月 


ふと、頭をよぎったことがある。

そーいや、神様に祈りを捧げる時って、ちゃんとどっかの方向を向かないといけないのだろうか? 

とりあえず東西南北に手を合わせてみた。

すると今度は『果たして、本当に東西南北だけで良いものか?』という、強い疑念と不安が湧いてきた。 

ここは一応、念には念を入れて祈りの方角を4方位から8方位、8方位から16方位に広げていった。



 1999年4月 


ある時、確かに神様の声が聞こえたような気がした。 


『俺にはこんなに重大なお願い事をしておいて、おまえは何もしないっておかしいよね?』と。


その天の声、誠にごもっともな話しだと素直に深く反省した。

まったく俺ってヤツは、何て気遣いの出来ない大人なのだろう… 

それからは一切のギャンブルをやめ、キャバクラにも行かず、家で酒を飲むことさえも断ち切り、毎週楽しみにしていたヤングジャンプの購入すら控えた。 



 1999年5月 


 Xデーが近づくにつれ、いろいろと不安が拭いきれない。 

この重大過ぎる案件を、果たして、神様ひとりだけに任せておいて良いのだろうか? いくら神様とはいえ、それはさすがに少々荷が重過ぎるのではないか? 


決して神様を信じていなかったわけではないが、この時から、お祈りの相手にイエス・キリストとマリア様、ブッダにアラーの神様までも仲間に加わってもらった!



地球全体のピンチである!

宗教がどーのこーのと言ってる場合ではない!

今こそ垣根を飛び超えて、皆で力を合わせる時!!

何となく、アベンジャーズみたいで少し心強くなった。 


そして、いろんな神々が増えた分、この頃になると既に、夜寝る前のお祈りタイムが、余裕で1時間を超えていた。



1999年6月 


 神様たちの生活リズムがわからなかったもので、ひょっとしたら、夜だけのお祈りでは早寝早起きの神様には通じてないのではないか?と思い、朝にもお祈りタイムを設け、ここまで来たら、どーせついでだからとランチタイムにもお祈りタイムを設けた。 


 また、ちょうどこの頃、ただ拝んでいるだけでは神様たちのウケがよろしくないのではなかろうか?と思い、自分でもよくわかってない、どっかのアフリカ原住民の踊りのテイストを取り入れたようなオリジナリティー溢れるけったいな踊りを付け加え、部屋中をねり歩きながら行う祈りのスタイルに変えてみた。





 その様子を見ていた母親が、息子のエキセントリックな奇行をひどく心配していたようだが、その頃は既に周囲を構ってる余裕などは1mmすらない!

 愛犬のポチにさえ、吠えられた。 



1999年7月


 そして…  とうとう
運命の1999年7月がやって来た!



毎日を怯えながらの生活、生きた心地はしなかったが、何とか無事に7月のカレンダー最終日をめくることが出来た!


この俺の、一心不乱で全身全霊を込めた必死の祈りを天の神様たちがお聞き入れ下さり、恐怖の大王との激闘を繰り広げ、完膚なきまでに叩きのめしてくれたおかげで、大王の地球征服の目論見は見事に阻止されたのである!






 ざまぁー見やがれっ!ノストラダムス! 



お前の予言、この磯野シャケオが覆してやったぜ! 




 ただ、俺の素敵なところは、慎ましく奥ゆかしい性格なので、わざわざ “ 人類滅亡の危機を救ってやったぜ ”アピールは封印し、これまで公言は一切してこなかった。


そのため、ノストラダムスはインチキ占い野郎に成り下ってしまったのだが、俺の知ったこっちゃない! 


街ゆく人たちが皆、幸せそうな笑顔に溢れているのなら、それが俺の一番の望みだから。