The Unknown Soldier/アンノウン・ソルジャー | 不健康ランドの小乱闘

不健康ランドの小乱闘

かなり無理。でも負けない。

フィンランドの現代史は、なかなかに複雑。

第1次大戦後、民族自決の波とロシア帝国崩壊を機に

独立戦争を経て念願の独立。

 

しかしヒトラーが台頭する頃にはスターリンの攻撃目標とされ、

「冬戦争」(1939年11月~40年3月)を戦い、

さらには「継続戦争」(1941年6月~44年9月)を戦う羽目になる。

 

そうなるには地理的条件があって、

ピョートル大帝以来ロシアの帝都であったサンクトペテルブルグは

外洋への出入り口を

フィンランドの首都ヘルシンキと

エストニアの首都タリンに抑えられていて、

(しかもフィンランドとエストニアは民族・言語がほぼ同じ)

その2つの都市を制することがロシア=ソ連にとって

非常に重要だったんである。

 

 

また、

フィンランドとほぼ兄弟といっていいカレリア

(ヴィボルグから東:1917年の独立後はフィンランド領)は、

帝都サンクトペテルブルグの至近であって、

軍事的に非常に重要。

だからスターリンは、

難癖つけてこのカレリアをねらい、奪ったんである。

(現在もロシア領)

 

「冬戦争」で、負けはしなかったもののカレリアを奪われたフィンランドは、

その後急速に軍事化を進め、

ソ連侵攻をねらっていた(そしてノルウェーを侵略していた)ナチス・ドイツの援助を得て

(冬戦争ではどこの国も援助してくれなかったため、苦戦したんである)

370万の人口に対し50万という国民総動員的軍隊を組織し、

ソ連の侵略に備えた。

 

そして実際戦争が起こると、

自らの被害の4倍の被害をソ連軍に与えた。

だが結局は、物量に勝るソ連軍に最後は圧倒され、

不利な条件で講和条約を結ばざるを得なかった。

そしてその条項を守って今度は

自国内のドイツ軍を攻撃。

 

そのため終戦後は、

敗戦国でありながら占領は免れた。

 

そういう中の、

「継続戦争」の始めから終わりまでを、

この映画は描いている。


 

ただし、背景描写とかはほとんどなく、

あくまで現場の「無名戦士(unknown soldiers)」(と、その家族・愛する人)の視点のみ。

BGMも少なく、徹底的にドキュメンタリー路線。

(フィンランディアは、最後の方で切なげに流れた)

 

母国への思い、
家族への思い、
ロシア人との葛藤、
上官との葛藤、
そして戦闘、戦闘、戦闘、、、
 
映画とはいえ、2時間以上戦闘を体感して
具合が悪くなったワタクシ的結論はーー
 
戦争の現場は、いつでもどこでも同じ。
第2次大戦だろうが
ベトナム戦争だろうが、
イラク戦争だろうが、
少なくとも歩兵に関しては、いつも同じ。
(一般市民を巻き込む大量殺戮兵器は、さらに別問題)

民族主義か、
正義か、
秩序維持か、
国際政治か、
そんなことは現場には関係ない。
 
現場にあるのは、悲惨さのみ。
 
「国」を振り回すお方は、せめて
このリアルな映画を
体感してからおっしゃるがよい。