ルアーショップでトラウト担当は私一人でした。というのも、私しかトラウトを

釣るスタッフがいなかったからです。

 

そのため、シーズンに入ると、当時一番人気があった、芦ノ湖に行く予定のお客様

がショップに多く来店しました。一般のニュースでも、芦ノ湖の解禁は取り扱われ、

美しい箱根で釣りをしてみたいという方が多かったのです。

そこで受けた最も多い相談が、

初心者(お子さん連れ)ですが、芦ノ湖でマスを釣りたいんです」

でした。

 

それに対する私の答えは、

「スプーンの後ろにフライを付けたトレーラー、それでも釣れなかったら、

パワーエッグ(バークレー社のトラウト用ソフトベイト)の置き竿で」

 

でした。「正統派」のトラウトマンからすれば発狂しそうな邪道すぎる

釣り方ですが、この釣り方だとボウズはまずなかったのです。

初心者、お子さんが寒い寒い芦ノ湖で釣るわけですから、何匹か釣って欲しい。

私はそう考えていました。パワーエッグは一瓶580円ぐらいでしたし、

たいへん良く釣れたので、初心者の方に「ボウズ回避」としておすすめして

いました。

 

今から考えると、初心者に時間をかけて説明し、このようなトレーラー用の

スプーン、フライ、パワーエッグ、フックの「極悪邪道セット」を販売しても、

せいぜい2500円ぐらいでした。(おまけにこれでほぼ確実に釣れるので、もう

これしか買わなくなる)ですから利益は大変少なかったのです。

 

また、このころ膨大な数の「ルアーフライ誌」が発行されました。車関係や

麻雀関係!の出版社ですらルアーフライ関係の雑誌やムックを出版したのです。

(今じゃちょっと信じられないですよね…)

その出版物の後ろの方には、ショップの紹介と、「スタッフ〇〇さんのオススメ!」

のコーナーがありました。2月から5月までは、トラウトシーズンということで私が

担当し、商品紹介と釣り方を書いていたのです。

私が好んで書いていたのは、エントリークラスのロッドの紹介記事でした。

以前にも書きましたが、このころエントリークラスのロッドの性能が大幅に向上し、

以前には手が届かなかった高性能なロッドが手軽に手に入るようになりました。

初心者の方や、実際に釣りに行くことにお金を掛けたい方に、ぜひ使っていただき

たいと思っていたのです。そしてその記事を見て、実際に来店してそのロッドを

購入してくださったお客様も数多くいました。

 

本当に楽しかったですし、働きがいがあると思っていました。

 

続きます。