1986年以降、ルアータックルはごく短期間に、劇的な進化を遂げたという話を

しました。ではそれで何が可能になったのでしょうか。

その最たるものが、

「軽くて小さなルアーをロングキャストできるようになったこと」だと思います。

それができればいっぱい釣れる!なんてことは皆わかっていました。でも、物理的に

不可能だと思われていたのです。

例を挙げます。

今から55年以上前!にはすでにマイクロスプーンが存在していました。

「ディックナイト」と呼ばれるそのスプーンは、20mm、0.6gという、

当時としてはすさまじい小ささでした

そもそもスプーンそのものが「重くて遠くに飛ばせるルアー」と考えられていた

時代にあって、世界にマイクロスプーンはこのひとつだけでした。

そして、ディックナイトはレイクトローリングや、フライキャスティング!で

使うものだと思われていたのです。

 

ところがタックルは進歩しました。そして当時出たばかりの浅溝ロングスプールの

リールに、「銀鱗」の(エサ釣り用ライン。ルアー用の細いラインは

6ポンドからでした)0.8号や0.6号巻いて、管理釣り場でこの

ディックナイトをキャストする人が現れたのです。

 

このころ、ルアーフライ専門の止水の管理釣り場というのは、日本に数か所しか

ありませんでした。埼玉の「朝霞ガーデン」栃木の「加賀フィッシングエリア」が

有名で、当時から混みあっていました。

 

その中で、この「デックナイト使い」の人たちはもう圧倒的に釣っていたのです。

大きなスプーンを投げて速巻きする人が大多数の中で、細いラインで、極小の

スプーンをスローに引くことができたわけですから、それはもう釣れるわけです。

この時の「朝霞」「加賀」で起きたディックナイトを使った小さなムーブメントが、現在のエリアトラウトのマイクロスプーンの釣りの歴史の始まりでした。

 

そしてほぼ同時期に始まった釣りがありました。当時、「トラウトをプラグで釣る」

というのは、芦ノ湖などの湖でのミノーイングでした。ラパラのF13や

高価なハンドメイドミノーを使って釣ることです。

しかし、「加賀」で、「レーベル ファストバックミノー」という4.5cmの

クランクで釣ることが始まったのです。

私はそれを聞いたときすぐには信じられませんでした。そして、実際に

ファストバックミノーを購入し、加賀で使ってみたときの驚きといったらありませんでした。

 

当時、クランクで釣る人なんてほぼいませんでしたし、サカナたちも見慣れぬルアー

に興味を引かれたのでしょう。ニジマスが群れをなして!チェイスしてきたのです。

このころは、「速く巻かないとサカナに見切られる」と一般に言われていました。

 

しかし、スローに引かれるクランクに殺到するニジマスを見て私は衝撃を

受けたのです。

 

進化したタックルがもたらしたもの。それはそれまでは考えられなかったことの

新しい発見でした。