日本は、TPP交渉に参加前からサンドバック状態となってKO負け寸前である。

日米事前協議で誰がどう見ても「米国の完全勝利、日本の完全敗北」の結果となった事実が、世界を駆け巡ったことにより状況は一変してしまったのである。

昨日は、日本とEPAの締結も交渉もない米国と同様のNZが事前協議で「チーズ」「バター」などの農産品の関税撤廃の要求で免れると想定していた。

参考記事:TPP前哨戦の第2ラウンドもNZに完全敗北か、米国の自動車と保険の次はNZの農業

つまり、日本の「例外品目」は80%以上の関税引き下げを余儀なくされて、TPP交渉に参加前から約8兆円前後の経済損失が確定することが想定できた。

しかし、事態はそれだけに止まらず日本が事前交渉で米国に全面譲歩を皮切りに、ここぞとばかりに農業大国が一斉に日本を狙い撃ちし始めたのである。

そして、TPP交渉参加国でニュージーランド、オーストラリア、カナダなどが徒党を組んで、日本に農産品で「例外品目なし」を要求してきたのである。

[4月18日 朝日新聞]TPP交渉、NZ・豪・カナダが条件 「例外なし」要求
「環太平洋経済連携協定」(TPP)の交渉に参加表明した日本に対し、米国以外の国々も交渉条件を示していることがわかった。農業国のニュージーランドやオーストラリア、カナダが「すべての品目を交渉の対象にする」「高い自由化を実現する」などと求め、カナダは米国のように日本車にかける税金(関税)を残すことも主張している。

複数の交渉関係者が明らかにした。日本はTPP交渉で農産物にかける関税を守りたいと訴える方針だが、日本に農産物を売りたい農業国の理解を得るのは難しくなるおそれがある。日本は交渉参加のために、すでに参加している11カ国から承認を受ける必要があり、米国のほか、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、ペルーの手続きが終わっていない。

そして、TPP交渉参加の農業大国が日本に関税撤廃を迫る農産品は下記となる。

●日本に関税撤廃を迫る各国の農産品と日本の関税率(上記の記事参照)
米国:コメ(778.0%)牛肉 ( 38.5%)豚肉 (136.0%)
豪州:小麦(252.0%)牛肉 ( 38.5%)チーズ( 29.8%)
加国:小麦(252.0%)牛肉 ( 38.5%)豚肉 (136.0%)
NZ:粉乳(218.0%)バター(360.0%)チーズ( 29.8%)

これは、安倍政権と自民党が特に聖域として国益として守るとする農産品の重要5品目「コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物」のほとんどである。

そして、日本のTPP交渉参加を承認することとと引き換えに、これら重要5品目を含め全農産品を例外なく関税を撤廃するよう要求してきたのである。

つまり、日本はTPP交渉参加前に全農産品の関税撤廃で、農産品の生産額で約3兆円、関連産業で10兆円近くの経済損失を被る可能性が出てきたのである。

なぜなら、日本の抵抗手段は「日本の国益が守れないから日本はTPP交渉に参加しない」と表明して、TPP交渉を離脱するしか残されていないからである。

しかも、安倍総理が3月15日に「TPP交渉に参加する」と表明したことにより、世界では日本がTPP交渉を強く望んでいると捉えられているのである。

これでもし、安倍総理が手のひらを返してTPP交渉参加する前に離脱したとなれば、日本の国際的な信用失墜は免れず外交で大きな汚点を残すことになる。

この結果、日本に残された手段はできる限り先延ばしすることしかないのである。
つまり、牛歩作戦により相手が根負けすることを期待することしかないのである。

しかし、この日本にとっての最後の希望さえ奪い、徹底的にTPPで日本の身包みを剥がして自国に最大限の恩恵をもたらそうとしているのが米国である。

日本に対して、「7月までにTPP交渉に参加すべき」と要求してきたのである。

[4月18日 朝日新聞]日本のTPP交渉参加「7月が望ましい」 米国務長官
ケリー米国務長官は17日、下院外交委員会での証言で、環太平洋経済連携協定(TPP)の日本の交渉参加について「7月が望ましい」との考えを示した。米閣僚が日本のTPPへの7月参加に言及したのは初めて。日米両政府は12日、日本のTPPの交渉参加に向けた事前協議を終えた。米オバマ政権は近く米議会に日本の交渉参加を通告する。それから90日後、日本の交渉参加が正式に決まるため、日本は7月中旬~下旬に交渉参加資格を得る見通しだ。

TPP交渉の日程で確定しているのは5月のペルー会合まで。ケリー氏の発言は、7月にも会合を開き、そこから日本を迎えるべきだとの考えを示したものだ。ただケリー氏は「カナダ、ニュージーランド、オーストラリアも(日本の交渉参加について)決定する必要がある」と発言。この3カ国との事前協議も日本の7月参加のハードルになっていることを指摘した。

これは、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアからTPP交渉参加の承認を早急に得られるよう、各国の交渉条件を呑めと言っているのである。

つまり、例外措置で7月にTPP交渉の会合を開くから、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアの全農産品の関税撤廃を呑めと言っているのである。

もっと言えば、「日本は農産品で例外品目など設けるな」と脅しているのである。

おそらく、これまでの経緯は米国が計画したシナリオ通りに進んでいるのだろう。

当初から米国は、日米事前協議では日本の合意と引き換えに自動車と保険で譲歩を引き出すこと、その他の国との事前協議では日本の承認と引き換えに農業で譲歩を引き出すことが目的だったとの考えだったのだろう。

これは、日本のTPP交渉参加のリミットを7月に設定したことで明らかである。

昨年からTPPについて永遠に継続されていることは、米国が日本に「早くしないとTPPのバスに乗り遅れる」という切迫感を持たせて脅すことである。

今回も7月を設定したことで、交渉条件に関係なく「乗り遅れる」「間に合わない」「参加できない」と日本は煽られ譲歩して完全敗北するのだろう。

そして、最終的な落とし処は、関税維持が決定の自動車関税と同じく、農産品の低課税で2.5%程度、高課税で25%程度に引き下げるところとなろう。

これは現在の農産品にかかる関税率から言えば、関税撤廃に等しいことになろう。
そしてTPP交渉参加を待たず自民党の公約違反が確定することになるのである。

その結果、日本の成長分野で関税を維持され、日本の保護分野で関税を撤廃され、日本が成長できず足枷にしかならない枠組みに参加することになるのである。

これでは、TPP交渉に参加する前にTPPが日本にとって何の国益にもならず、何の意味も持たず、国益を損ねるだけの枠組みに参加することと同意である。

もし、日本の国益を考えるなら唯一の手段は徹底的な持久戦を展開するしかない。

当面の目標は事前協議の交渉で日本は条件の譲歩を一切せずに、できる限り時間を要することで米国の想定する7月の交渉を開催させないことである。

そうすれば、TPP交渉の年内妥結も不可能となり交渉も有利に進むことだろう。

昨年末に日本が参加しなかったため、TPP交渉の妥結を先延ばして1年延長した結果を踏まえれば、日本がTPP交渉参加を引き延ばせば引き延ばすほどTPP交渉参加国から譲歩を引き出させることを実証している。

もはや、TPP交渉において日本の国益を守るには妥結させないことしかない。
これ以外の選択肢なら、安部政権が国益を守れなかったと崩壊することになる。



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