さすが、「聖域なき構造改革」の旗振り役の竹中慶応大学教授の政策提言である。

「アベノミクス戦略特区」との言葉は、国民に非常に聞こえが良く、国民に非常に期待感を抱かせて、国民を扇動するには最高のネーミングと言えるだろう。

しかし、中身を見れば日本の社会秩序を無視して、規制緩和、税制優遇、外資参入、民営化促進、輸出促進など新自由主義制度のオンパレードなのである。

また、6月にまとめる成長戦略に反映するという時期を考えれば、TPP交渉で農業や医療など日本が国益を守ったように見せかける例外措置なのである。

やはり、TPPによる米国の日本植民地化計画の一環として、まず「アベノミクス戦略特区」という名で日本領の一部を米国領に譲り渡すことなのである。

そして、米韓FTAで米国が韓国に強要した「特区」の内容と同じであり、治外法権を認めてTPPで市場アクセス、サービスなど何でもアリなのである。

アベノミクス戦略特区は韓国FTAの特区と同様にTPPのための特区であろう。

その結果、小泉政権で「聖域なき構造改革」と同様、安倍政権のTPP参加による「聖域なき制度撤廃」でもたらされるのは格差拡大と弱者切捨てなのだろう。

おそらく、安倍政権は自民党の政権公約を守ったことを偽装するため、TPP反対勢力を封じ込めるため、TPP交渉から離脱しないため必死なのであろう。

正に、米国に物申せず、政府で情報操作して、国民に偽装するという流れである。
全ての分野で市場原理を導入して、弱肉強食社会を実現したいという流れである。

国民のためでなく大企業の利益追求のためのTPP交渉は先送りか離脱しかない。

[4月4日 NHK]「アベノミクス戦略特区」検討へ
政府の産業競争力会議の分科会が開かれ、有識者議員が経済特区を推進するため、法人税率の大幅な引き下げなどを行う「アベノミクス戦略特区」の創設などを提言し、政府側は、財源の問題も考慮しながら前向きに検討する考えを示しました。

政府の産業競争力会議は、国内で企業が活動しやすくする「立地競争力の強化」をテーマにした分科会を開き、甘利経済再生担当大臣や新藤総務大臣のほか、竹中平蔵慶応大学教授ら6人の有識者議員が出席しました。この中で、有識者議員は、経済特区を推進するため、安倍総理大臣を議長とした諮問会議を新たに設置することや海外の企業や人材を呼び込むため、「アベノミクス戦略特区」を創設し、法人税率の大幅な引き下げや、輸出を拡大する農家に対し税制面などで支援を行うよう提言しました。

また、インフラ分野への民間投資を拡大するため、国や自治体が管理している空港や有料道路を民間企業が運営できるようにする規制緩和なども求めました。これについて、政府側は「財源をどう確保するか検討が必要だ」としながらも、提言の内容を前向きに検討する考えを示しました。

これまで「特区」においては、幾度も失敗例を積み重ねているのだが、未だに懲りず、地方自治体に変わり政府が主導して創設することになるようである。

おそらく発想の転換で、外国に「日本特区」を増殖させるほうが成功するだろう。
米国の戦略がそれであり、「アベノミクス戦略特区」こそ「米国特区」と言える。

報道ベースで産業競争力会議で提言した内容をまとめてみると下記のようになる。

●「アベノミクス戦略特区」の提言内容まとめ(本日の報道ベース)
・医療機関での診断や治療で観光客を呼び込む「医療ツーリズム」
・輸出を拡大する農家を税制面などで支援する「輸出農業特区」
・小学校の教育を全て英語で行う「国際拠点特区」
・外国企業の拠点誘致で法人税の優遇措置や規制の見直し
・政府と個人資産でファンドの創設
・土地建物が国有のまま運営権を開放する「コンセッション方式」

おそらく「アベノミクス戦略特区」は、政府が税制、金融、規制など特例措置を適用する地域を設けることにより1国2制度を実現することになるのだろう。

そして、「米国特区」で米国制度を適用することで、TPP交渉で「聖域なき制度撤廃」の例外措置として非関税障壁をクリアできることになるのだろう。

ある意味、自民党の政権公約である「TPP交渉参加の判断基準」と、TPP交渉参加の「TPP対策に関する決議」を守るための例外措置とも言えよう。

●「TPP対策に関する決議」と「TPP交渉参加の判断基準」のまとめ
(1)「コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物」の重要5品目等を守る
(2)自動車の税制制度と安全基準と環境基準を守る、工業製品の数値目標を阻止
(3)公的医療給付範囲を維持、医療機関の企業参入と混合診療の全面解禁を阻止
(4)農薬と添加物、遺伝子組み換え食品、原産地表示、BSEなどの基準を守る
(5)ISD条項(投資家による国家訴訟制度)を阻止
(6)公共事業の参入自由化を阻止、郵貯とかんぽと共済等の金融サービスを守る

特に、「国民皆保険制度を守る」という3項目については、「米国特区」で例外を認めるという米韓FTAと全く同じ手法で部分開放に踏み切るのである。

そして、「米国特区」では、公的医療給付範囲が維持されず、医療機関に企業参入が容認され、混合診療が全面解禁される米国制度が適用されるのである。

また、農業制度も現行政策の適用外として企業参入が容認することになるだろう。

そして、「重要5品目等を守る」という1項目については、関税の大幅引き下げがあっても、農業補助金と特区創設で聖域を守れたことになるのである。

それにしても、残念であるのは成長戦略が全て国内向けの制度破壊となることだ。

これは、小泉政権で経験したが日本の構造改革とは、「日本の制度」を悪と決め付け破壊して「米国の制度」を正と決め付け真似る改革だったのである。

おそらく郵政民営化も道路公団民営化も先入観だけで必要が無かった改革である。

このことを踏まえれば、TPP交渉で問題となる医療制度も農業制度も「米国が正しい」という先入観だけで自由化する必要が無かった改革となるだろう。

そして、そもそも論として日本がTPPに参加するため、多くの日本の制度を破壊して米国の制度に真似る改革をする必要があるのかという疑問が出てくる。

逆にいえば、日本が成功体験した固有の制度を諸外国に普及させることができないのか、世界標準の制度とすることができないのかという疑問が出てくる。

これを「アベノミクス戦略特区」で言えば、国内向けの「米国特区」とせず、海外向けの「日本特区」として諸外国に創設を提案しないのかということである。

このことは、「首切り法案」も同じことである。「首切り」という破壊が先決ではなく労働力の移転先となる「雇用」という創造が先決であるべきなのである。

これらより、現状で安倍政権の政策から最も国民が認識しなければならないことは、日本が国民優先でなく企業優先の国に傾倒しつつあるということである。

つまり、国民がサブプライムローンで疲弊して、大企業が税制優遇で謳歌して、国家が巨額債務で衰退している米国に追従しつつあるということである。

おそらく竹中慶応大学教授が私利私欲のため企業優先となることは止むを得ない。

しかし、安倍総理を筆頭とする閣僚並びに国会議員は、国民から選ばれており、企業優先より国民優先の政策としなければならないことを忘れてはならない。

国民のためでなく大企業の利益追求のためのTPP交渉は先送りか離脱しかない。



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