本日よりテーマを「TPP交渉問題」と改めてTPP交渉の早期離脱を主張する。

自民党は、政権公約である「TPP交渉参加の6つの判断基準」を守らなかったとは毛頭考えておらず、国民を上手く騙せたと考えているようである。

昨年3月9日に国民へ発表以降、政権公約となった下記は何だったのであろうか。

自民党HP:【FAXニュース】No.153 TPP交渉参加判断基準

●自民党の政権公約であるTPP交渉参加の6つの判断基準
(1)政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
(2)自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
(3)国民皆保険制度を守る。
(4)食の安全安心の基準を守る。
(5)国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
(6)政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。

結局、安倍総理は「聖域なき関税撤廃が前提ではない」ことをオバマ大統領に確認したとしているが、オバマ大統領が交渉の当事者では無かったのである。

そして、米国との事前交渉が完了せずに、日本がTPP交渉に参加を表明したことは、どんな条件でも受け入れることを表明したことに等しいのである。

安倍総理は、交渉内容もわからず、決定事項に口を挟めず、事前交渉で守った聖域も無く、米国に脅され意気込みだけで交渉参加を決定したのである。

つまり、6つの判断基準の全てを守らずにTPP交渉に参加を表明したのである。

そして、一度破った政権公約であるTPP交渉参加の6つの判断基準を、今度はTPP交渉の6つの判断基準として、参院選で再び国民を騙そうとしている筆頭となるのが自民党の石破幹事長となったのである。

[3月16日 毎日新聞]TPP交渉:「農産品関税下げも」石破氏、一定程度なら
自民党の石破茂幹事長は16日、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉で、コメ、麦など重要5品目の関税について「最初から1%も下げないという議論をしても仕方ない」と述べ、一定の関税引き下げはあり得るとの認識を示した。東京都内で記者団に語った。同時に、「国内の産品を守れる水準は死守しなければならない」と強調した。

自民党は同日、全国幹事長会議を党本部で開いた。安倍晋三首相は「同盟国の米国とともにルールを作り、世界の繁栄の中で主役になるべきだ」と説明。17日の党大会で決定する運動方針案に新たに「特に農林水産分野をはじめとして国益がしっかりと守られるよう、政府と一体となって強い姿勢で交渉に臨む」との文言を盛り込むことが報告された。

質疑では「反対の立場を取らざるをえない」(北海道連)との反発もあり、石破氏は「(聖域維持の)公約は絶対に守る」と理解を求めた。

これに関連し、高市早苗政調会長は16日の読売テレビの番組で「(協定締結を決める)閣議決定直前に厳しい審査がある。国益が最大化できず不利な交渉をしてきたらどうしようもない」と述べ、大幅な譲歩は容認しない意向を示した。

まず、石破幹事長が「公約は絶対に守る」とする公約とは、TPP交渉参加前に守る公約であって、TPP交渉参加後に守る公約では無かったはずである。

石破幹事長は、自民党の政権公約であったTPP交渉参加の6つの判断基準がなぜ守られなかったのかという理由を、はっきりと国民に示すべきである。

この部分に白黒付けずしてTPP交渉で日本が交渉力など発揮できるはずがない。

政権公約の全てを蔑ろにTPP交渉に参加を表明した結果を見れば、TPP交渉においても政権公約の全てを蔑ろに交渉妥結することは明らかであろう。

つまり、TPP交渉で政権公約を守らないという最悪の結果を招かないため、安倍総理のTPP交渉参加を表明した結果に対して総括が必要なのである。

そして、その総括とは日本がTPP交渉に参加してどのような結果になれば、TPP交渉を離脱するのかという具体的な基準を明確化することに他ならない。

先日、安倍総理が自民党の外交・経済連携本部で採択された「TPP対策に関する決議」がそれに該当するのだろうが、もっと具体化が必要であろう。

自民党HP:TPP対策に関する決議

●自民党の「TPP対策に関する決議」にTPP交渉の6つの判断基準まとめ
(1)「コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物」の重要5品目等を守る
(2)自動車の税制制度と安全基準と環境基準を守る、工業製品の数値目標を阻止
(3)公的医療給付範囲を維持、医療機関の企業参入と混合診療の全面解禁を阻止
(4)農薬と添加物、遺伝子組み換え食品、原産地表示、BSEなどの基準を守る
(5)ISD条項(投資家による国家訴訟制度)を阻止
(6)公共事業の参入自由化を阻止、郵貯とかんぽと共済等の金融サービスを守る

今回のTPP交渉参加で守られなかった政権公約の「TPP交渉参加の6つの判断基準」よりも、具体的になったがまだまだ抜け道がいっぱいである。

そして、早速抜け道をさらに拡大するため第一声を挙げたのが石破幹事長である。

日本の守るべき「聖域」に定めた「コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物」の重要5品目等に対して、税率の引き下げ止む無しとしたのである。

16日のテレビ東京の番組で、「重要5品目等」の発言をまとめると下記の通り。

「絶対に関税を下げないことを前提にしては、多国間交渉は成り立たない。コメ、麦、牛肉、豚肉など大切な品目をどう守るかが交渉の主眼である。関税を1%たりとも下げては駄目だという議論に直結しない」

これは、始めから関税を引き下げる前提で交渉に挑もうとしていることに等しい。
つまり、交渉前から「重要5品目等」の聖域を守ることを放棄しているのである。

このような態度で強い交渉力を発揮できるだろうか。このような態度で国益を守ることができるだろうか。このような態度で多国間交渉に勝てるだろうか。

米国は日本との事前交渉でさえ、米国で日本車の輸入関税を当面維持することを全く譲歩することなく断固として主張して大筋合意まで果たしたのである。

それに対して日本は米国に断固として主張せず何の成果も挙げていないのである。

この結果を踏まえて、多国間交渉での意気込みで「絶対に関税を下げないことを前提にしては多国間交渉は成り立たない」などと発言されては敗戦濃厚だろう。

しかも、最悪のシナリオとして「重要5品目等」で1%でも関税が守られれば、石破幹事長が「聖域」が守られたと主張しかねない言い振りなのである。

これでは、安倍総理がTPP交渉参加を表明したのと全く同じ結果が予想される。

TPP交渉の参加においては、1項目の「聖域なき関税撤廃」が前提にならないと確認したことになり、安倍総理がTPP交渉の参加を表明したのである。

今回のTPP交渉においては、1項目の「重要5品目等」が1%でも関税を残せれば「聖域」を守ったことになり、TPP交渉が妥結できるのである。

しかし、安倍総理のTPP交渉へ参加表明の翌日にこのようなハードル引き下げを行うとは、TPP交渉で日本が敗色濃厚であることが明らかなのだろう。

そして、TPP交渉で国益を守ることもできず、TPP交渉を脱退することもできず、政権公約を守ることもできず、TPP交渉を妥結しかないのである。

つまり、残された唯一の手段は政権公約を守ったと装って国民を騙すことである。
その結果、衆院選はインチキ公約だったが参院選もインチキ公約となるのである。

このことは、自民党は民主党を反面教師にしたことが、党内が一致結束することと、首相の足を引っ張らないことであり、公約違反は引き継いだのである。

必要なことは、自民党の一度目の公約違反を見過ごさず徹底追及することである。

そして、日本の将来を守るためには、自民党にTPP交渉で二度目の公約違反をさせないこと、TPP交渉を早期に脱退させることが不可欠である。

自民党の政権公約がインチキ公約にならぬよう交渉での妥協を許してはいけない。



最後までお読みいただきありがとうございます。
お帰りの際にポチっと押していただければ励みになります。

   

感謝します。今後ともよろしくお願いいたします。