今回は患者力のお話です。

5年くらい前、しまりすの準毒母が突然歩けなくなった。元々足腰が悪く、長時間の歩行が大変で、整形外科に通ってたんだけど、こんなにも歩けなくなったのは初めてだった。民政委員さんや、民政委員さんが呼んでくれた地域包括の人も交えて、どうしたらいいか、話しあった。介護保険で要支援がとれると、週一回デイサービスに通えるようになる。そこでお風呂が入れるようになる。食事はお弁当の宅配を頼んで、あとは私が定期的に通って補助すればいいんじゃないかということになった。

それで、要支援認定のためには医師に診断書をかいてもらわなきゃいけないわけだけど、そもそもなんの病気で整形外科に通っているのか、

準毒母にきいたところ、


 わかんね。


特に、病気の説明はなかったという。そんなことあるのか、老人を食い物にする悪徳医師なんじゃないか、診断書をもらいに行くとき、私もついて行って、場合によっては病院変えたほうがいい、と言うことになった。


整形外科で、診断書を書いて欲しいのと、私も病状を把握したいので、説明して欲しいと告げると、先生はレントゲンを出してきて、


前にも説明したけどね、あなたの背骨はこう、湾曲しちゃってるの、それで神経が圧迫されて、痛みがでるの。脚の神経にも影響がでるから、歩きにくくなっています。休んだらまた歩けるけど、また痛くなる。脊柱間狭窄症って言います。前にも説明したよね。


毒母は、昨日までなんの説明もなかったなんて言ってたのが嘘のように、うんうん頷いて聞いている。先生はちょっと早口だったけど、特に分かりにくい説明ではない。


診察のあとで、毒母に、先生前に説明したって言ってたけど、そうなの?と聞いてみる。


母:どうだっかな。そんな気もする。


私:分かんないのに、うんうん、聞いてたんじゃないの?あの先生早口だし。


母:そうなんだよ。ゆっくり言ってくんないからよくわかんないんだよ。


でも、ゆっくり言って下さいとは、お願いしてないんだろう。


なぜなら、それが一般的な昭和の患者だったから。


薬の今昔物語のときに、情報秘匿派の医師は、

君たちは、勉強しても、難しいこと分かんないだから、医者の言うことを素直に聞いていればよろしい。と、思っていると書いた。医師がそんなだから、何か聞くと先生のご機嫌をそこねてしまうと恐れ、患者の方もどんどん物分かりがよくなってくる。なんにも分からなくても、はいはい答える人になる。

準毒母の脳内ルールは超シンプルだ。


病気になったら、病院へ行く。

医者の言うことをよく聞く。


実際はよく聞けてなくて病気のことが分からなくてもよい。毒母のよく聞くは、薬の飲み方と次の受診日がわかれば100点だ。病気のことなんか、頭が悪いあたしが聞いてもどうせ分かんないから、先生が全部分かってればいいのだ。


以前はこんな患者がいっぱいいた。秘匿派医者と無関心患者。先生だけ進歩しても患者が進歩してなかったらどうしようもない。


今回入院してみて、どの患者さんも自分の病状や病歴をきちんと話せるんだけど、これって実はすごいことだよなと思う。


医師や、看護師や、薬剤師が変わっても、受け皿の患者がかわらなければ何もかわらない。病院だけじゃなく患者さんもいっしょに進歩してきて、いい時代になったんだなと思ったのだった。