気管支鏡入院から抗がん剤入院までの数日間、仕事の引き継ぎで職場に戻って感じたのは、


あらっ、私、前よりいろんなことに腹立たないよ?!


ということだった。

ちょっと考えて理由が分かった。

自分の中の仕事の達成度が変わったのだ。


現在の達成目標は、


クビにならずに働き続けること。


思えば肺ガン発覚前の私は、いろんなことを考えていた。いま私がやっている仕事は、正社員ではない、まあ、契約社員のようなものを2箇所でやっている。メインでやっているほうは、毎年仕事の契約更新があり、このとき、仕事が増えると、認められたなぁという気持ちになり、反対に減ると、なにかマイナス査定のことやっちゃったかなと落ち込む。

そんなわけで、同じ契約の人の仕事ぶりが気になり、あの人は、手を抜いてるとか、ルール違反してるとか、間違った方向に頑張っちゃってるとか、なのになんで、仕事ふえてるの?と考えてイライラしたり、私はこんなに頑張ってるのに、どうして仕事増えないんだろうとか考えて落ち込んだりしていた。

他人の間違えに厳しく、自分の評価を上げたい、正義感と承認欲求によるストレスがすごかったのだ。


これが癌発覚以降なくなった。今クビにならないように、また働きすぎて、体調崩さないように、波風たてずに仕事して、無事うちに帰れればOK。

これ以上仕事ふえても、体力的に厳しいし。


正義感や承認欲求がなくなったわけではないけど、自分のライフを削ってやるほどのことではない。


今の一番の欲求は、普通の生活を続けることで、以前の私はあって当たり前でありがたいとも思ってなかったことだが、今はそれがいかに貴重なものかが分かるようになった。


こんな風に、いきなり心が穏やかになってしまい、逆に私の生命力大丈夫か、と心配になってたけど、抗がん剤入院を終えた後働いてみて、適度に怒りの感情もまだあることが分かった。


生理的に不愉快なこと、例えばみんなの休憩時間中、人気アーティストのチケット取りで大声を上げている人たちとか、正義感ぬきで脳が不愉快になる。


もう一つは、仕事上の約束が履行されなかったときで、休みの間、できる限り、負担にならないように準備して引き継いだ仕事が、履行され切らずに返ってきたりすると、時給分以上にライフを使わなきゃいけないので、怒りというよりは悲しみが湧く。


ともあれ、癌発覚後の脳内が大分単純化された。

怒りのエネルギーもそこそこあるし、まだまだ大丈夫だぞ、私!