東京ボレロ千秋楽。
町田樹の生きる姿がただひたすら眩しかった。
眩しかったことしか覚えていない。
ピカピカというのではない、ギラギラでもない、
しかし燃える命の輝き。
魂がむき出しになった眩しさなんだろうか。
気迫がそうさせたのか、もの凄い集中力だった。
彼からは生きる歓び、滑る歓びが溢れ出ていた。
今までの、どのプログラムとも違う、どの公演とも違う。
スケーティングがとかスケートの軌跡がとか、
バレエ?コンテンポラリー?ジャンプ?
どうでも良かった。
どうでもいいなんて…では私は一体何を見ているのだろう。
滑る男を見つめる私の口は、あんぐり開いていたと思う。
美しいのか?感動しているのか?
わからない。
でも驚いていたことだけは確か。
光る発光体を眺め続けた。
演技なのかわからない。でも滑る歓びに満ちている彼。
いや満ちている、では足りない。
歓びが体から溢れて発散されていたのだから。
生きるってなんて尊いものなんだろう!
輝きを放つ町田樹から目が離せない。
光を発して踊る姿は美しかった。
所作が美しいのではない。見目かたちが美しいのではない。
生きる姿がただ美しかった。
演技を見てこんなにも他のことが考えられないことは初めてだった。
他のことに思いを馳せることができない。
ただただ、まっちー、眩しいな…生命力が凄いな…と見つめることしかできない。そして呆気にとられていた。
ラストの世界が開眼するシーン、ライトが増幅されていく演出すら邪魔に思えた。
だから…
直後に暗転して男の姿が見えなくなったとき、
もうすぐいなくなる彼の不在を急に感じてもの凄く寂しくなった。
from now onが流れてくると寂しさは一層募った。
さっきまであんなに輝いて滑っていた彼。
しかし今はもう氷上にいない。
先ほどの光が強い分、私はションボリした。
さっきの男みたいに私たちの前から忽然といなくなってしまうんだ。
誰が彼の代わりになるっていうんだ。
あんな独特な人そうそういないじゃないか。
でも目の前で踊っているfrom now onは美しい。
町田樹の演技が見たい。光に惑わされたい。
それがもうすぐ叶わなくなる…
わかっている、きっと町田樹は帰ってくる。
直接の身体表現ではなくとも必ずスケート界に恩恵をもたらす。
後に「プロスケーターを引退してもこんなに幸せな彼の成果の果実を受け取ることができんだ」っていう喜びに浸る日がくる。
いなくなってしまうわけじゃない。
帰ってくるんだ。
今日泣いたことが笑い話になるんだ。
そう思っているのに やっぱり寂しい。
from now onが心に沁みてしょうがなかった。