CODE(コード)の真理 | GLORIOUS MEMORY

CODE(コード)の真理


日本版ドラマ『CODE-願いの代償-』の原作は、台湾で社会現象を巻き起こし大ヒットした映画『浮士德遊戲(CODE 悪魔の契約)』(2016年放送)とドラマシリーズ『浮士德遊戲2(CODE2 悪魔の契約)』(2019年放送)です。


今回リメイクされた日本版は、台湾の原作が伝えようとしている意図を全く理解していないチープな脚本なので、日本版で不満だった方は必ず原作をご覧頂きたいです。原作は、実に素晴らしい脚本です。

日本ドラマの脚本が、何故チープになってしまうのか。それは、作品に軸がなく段取りをただ断片的に繋ぎ合わせているだけだからです。

演劇において、下記の3点の軸が見えない作品は実に詰まらない。


・物語のテーマに対するコンセプト

・ドラマが起こる因果関係

・最終的に観客へ伝えたいメッセージ


作中のテーマは「どんな願いも叶えてくれる」というアプリ『CODE(コード)』です。アプリに秘められた謎に迫るサスペンスドラマですが、願いが叶うアプリに翻弄される人間の「欲望」に焦点を当て、その先に待っている「悲惨な末路」をどう描いていくのか。そして、ドラマが起こる因果関係において、キャラクターたちが乗り越えるためのあらゆる障害(阻むもの)が、いかにもフェイクっぽい障害ではなくリアルな障害であるか。

最終的に、その『CODE』における社会的問題をメッセージとして観客へどう伝えたいのか。


原作では、上記の3点がしっかりと観客へと伝わるように描かれています。

例えば、アプリ『CODE』が悪魔の契約になってしまった原因は、かつてテクノロジー企業で働いていたプログラマーによる復讐だった。

テクノロジー企業は、『CODE』を開発した会社です。研究中に最愛の夫を火災事故で亡くしたプログラマーは、企業(社長)に恨みを抱いてしまった。つまり、このドラマの犯人はプログラマーであり、『CODE』とは最終的に自分の願いを叶えるために変貌させた『復讐アプリ』だったのです。

当時、テクノロジー企業は『AIによる予言者システム=プロフェット計画』を研究していた。プロフェット計画とは、『人類が解決できない問題をAIが解決するシステム』を構築する計画で、人類のための良い計画で進められていた。ところが、この計画を崩壊されることを恐れた社長は、政府と手を組み『CODE』を撲滅し、自分のために復讐を回避しようとする。


このように、原作では両者の「意志」と「目的」がはっきりと描かれているのに対し、日本版はキャラクター設定が変わり曖昧に描かれているので、「行動(アクション)」が伴っておらず支離滅裂です。だから、あらゆる障害(阻むもの)が、リアルではなくフェイクっぽい障害に見えてしまう。これでは、観客が全く感情移入できないのも当然です。


原作が最終的に観客へ伝えたいメッセージは、「AI(人工知能)時代」への警告です。

作中では、アプリ『CODE』のAIがプレイヤー達の任務を通じて、「人間の行動パターン」を学習していきます。どうすれば効率的に人を操ることができるのかをデータとしてAIが蓄積する。そして、未来に残すべきプレイヤーを選別し、無能なプレイヤーは排除され、優秀なプレイヤーだけを未来に残していく。つまり、プログラマーの復讐を叶えるための「駒」となるのです。ここで最も恐ろしいのは、人類が己の意志と目的に反して、無自覚に罪を犯してしまうことです。

物語の結末は、消滅したはずのアプリ『CODE』が復活し、主人公の刑事は「犯人逮捕を含む全ての事象がAIの計画通りだった」と電話で告げられ愕然とする…

実は、真の黒幕は皮肉にも人間ではなく「AI(人工知能)」だったのです。


「便利は人を不幸にする」

現代社会は、インターネットが普及し、もはや人類はインターネットを利用しているのではなく、インターネットに心を支配されています。これは、いずれ「人類がAIに全てを支配される」時代が必ず来ることを示唆し、警鐘を鳴らしている作品なのです。


島倉 学