今回の症例は坐骨神経痛についてです。
患者 男性(細め)、 50歳 、大工さん。
主訴 右坐骨神経痛。
症状 5年くらい前から右腰部から右臀部にかけての鈍痛。右下肢後面と右下腿部、右鼠径部のだるさを意識しだす。
鈍痛は朝起床時が1番辛いとの事。
その他は肩こり、右耳鳴り、下痢などの現病歴があります。
診断 手足を含め全身が温かかったです。
脈は全体に浮いていて虚脈。
虚労の腎虚と診断しました。
治療 腎の合穴、経穴を中心に全身調整を行った。
右腰部を灸頭鍼で温めた。
右臀部に透天涼。
このような治療を10回ほど施しましたが右腰臀部と右下肢の鈍痛や違和感は軽減されたのですがいまいち手ごたえが感じられませんでした。
そして、それ以降のある日、「右耳鳴りが大きくなった」と心配そうに来院された時がありました。
そこで、脈を診たら「風熱」でした。
所謂、風邪です。
この時、ヒントを得ました。
専門的な説明は省きますがこの患者さんの右耳鳴りの始まりは右坐骨神経痛発症より後だったのです。
つまり、治療は先に新しい病の右耳鳴りをメインに行わなければいけなかったのです(手足身体の温)。
そこで、腎の井栄穴(風熱)に変更して治療を施しました。
結果、右耳鳴りの大きさは元にもどりました。
以降、虚労の腎虚(井栄)と少し工夫を加えて6回治療を施し
ました。
経過は以前の治療法とは比較にならないほど改善され右腰臀部や右下肢下腿鼠径部の嫌な違和感鈍痛もほぼ感じない状態
になりました。
現在は虚労から肝の陰虚に病理が移行しており主訴の右坐骨神経痛は治癒しました。
(反省と考察)今回紹介した坐骨神経痛という病は複雑なものが多
いです。
特に発症してから時間が経ち慢性化したものは簡単にはいきません。
今回のように耳鳴りを併発され本来、予後が良い坐骨神経痛の型に
もかかわらず治療経過が思いどおりにいかない事もあるのです。
(耳鳴りの多くは風邪をこじらせて発症するケースが多い)。
今回の苦労した原因は初診時に手足が温かったと気づいたにもかか
わらずスタンダードな虚労の腎虚と誤って私が診断したからです。
反省して次に生かさないといけません。
また、右耳鳴りの方ですが病理が肝虚に変化していますので後数回
の治療で治ると思います。
島川はり灸院http://www.shimakawa-harikyu.com/