今日は踵骨痛(かかと)の症例を紹介します。
今年の1月前半に来院された男性の患者さんで年は47歳。
「主訴」は左踵骨痛(2か月前から痛み出し悪化している)。
痛む部位は左踵骨からアキレス腱の付け根にかけて。
左踵骨に圧がかかると痛みが増し常に違和感がある。
なので仕事ができない状態との事。
仕事は長時間立ちっぱなしで安全靴を着用されている。
お風呂上りは左踵骨の痛みは少し緩和するらしい。
「診断」
虚労の腎虚。
下腿が冷たくて前腕を含め上半身は温かい。
所謂、冷えのぼせである(おそらく体質)。
そして、この冷えのぼせにプラスして年末年始の寒冷が左踵骨痛を起こさせた原因だと思われます。
それと、もう1つ考えられるのが老化です。
個人差はありますが人は40、50歳を境にして老化現象が顕著に出てきます。(先天の気の衰えは防げません。腎虚)。
この患者さんの年齢も50前です。
「治療」
腎虚で全身調整(経穴、合穴)を行い左踵骨から左アキレス腱に圧を加えて痛む部位の周りに知熱灸を施しました。
圧痛部位には置鍼を10分。
術後、患者さんに立ってもらい歩いてもらうと左踵骨の痛みが6割方取れていた。
最後に冷えのぼせの症状によく使用する奇経(陰蹻脈)を行った。
結果、左踵骨痛がさらに軽減され喜ばれていました。
「3日後来院」。
左踵骨痛の痛みは前回術後のままで仕事中に痛みが悪化する事はなかったとの事。
治療はほぼ前回同様に行い左踵骨の痛みや違和感も無くなったのでとりあえず治癒としました。
「考察」
踵骨痛(かかと)の多くは持続的に踵骨に負担がかかる生活をされている人に多く見られます。
特に工場や現場仕事などで硬い安全靴を履かれている人などに見られます。
しかし、安全靴を履いて仕事をされている人全てが踵骨痛になるわけではありません。
私の考えですが、その人が持って生まれた体質に起因しているのではないでしょうか。
例えば、今回の患者さんの体質は虚労の腎虚でした。
つまり、外傷でもしない限り虚労の腎虚(体質)以外の人は踵骨痛にはなりにくいと言えます。
私はこれまでの臨床経験で虚労の腎虚以外の踵骨痛の患者さんを診たことはありません。
長くなりますが踵骨痛より多く見かける腱鞘炎やバネ指もその人の体質に起因している事が多いです。
腱鞘炎やバネ指は手をよく使い過ぎて血行障害が起こり痛みを引き起こします。
言い換えれば体質的に体内の血液の循環がよろしくない人が腱鞘炎やバネ指になりやすいと言えるでしょう。
(肝の血虚など)。
それ以外の体質の人は腱鞘炎やバネ指にはならないと思います。
最後になりますが今回のテーマの踵骨痛に罹る原因をまとめたいと思います。
1, 持続的な踵骨への負担。
2, 体質(腎虚)。
3, 患部の冷え。
4, 老化(年齢を重ねるごとに人は腎虚になって星になる)。
「予防策」
上記2の体質以外は各自で予防できると思います。
1と3の予防は踵骨への負担を和らげる努力を行う。
(スポンジなど。お風呂で温めて踵骨の周りの筋肉をほぐす)。
4の予防はなるべく旬の食材を中心に摂り偏食をやめる事。
五味(酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味塩)のバランスが大事です。適度の運動の持続。
バランスのとれた食事や運動を持続させる事で免疫力が上がり老化を遅らせることができます。
おしまい。
島川はり灸院 http://www.shimakawa-harikyu.com/